第3話 何で婿殿は何も着ていないのじゃ?



 エリス聖教狂信派と呼ばれる組織があった。


 エリス神聖国の国教であるエリス聖教から分派した組織であり、エリスロード様を崇めているのは、エリス聖教と同じであるが、亜神を認めず、また他の神に準ずる者たちさえも排除する狂った者達の組織であった。


 言わばエリスロード様のみを崇拝する。エリスロード様親衛隊のような者達であった。ただ、その行き過ぎた悪虐非道な行いは目に余るものがあったのも事実。


 さらに最近は人族至上主義で亜人種の迫害まで起こしていたのだ。


 亜神は亜人種からしか生まれぬ。と言う偏見から生まれた敗訴運動。実際、現在確認されている亜神だけでも亜人種しかいないのも事実であった。


 そして、エリス聖教狂信派は、世界中に暗殺や諜報を行う組織があり、その下部組織も含めると100万人を超える巨大な組織であったのだ。


 その巨大な組織は……女神様の怒りギルティによる神罰によって、一夜にして壊滅する事となった。


 自分の親衛隊を壊滅させるとは、とんだとばっちりである。


 組織構成員は一人の漏れもなく、全世界から消滅したのだ。これを神罰と言わずとして何とやらである。


 後の伝説では、この時の事を黄昏時に起きた神の怒りとして、黄昏の神罰と呼び、子々孫々まで伝えられ恐れられる事となる。



 閑話休題。



 ギルティーにより降臨したエリス様は、俺に手を差し出すと、俺の左手を取り精霊の森の中を歩き出した。


「ふむ、こっちじゃ」


「エリス様?えっと……どちらに向かうんでしょうか?」


「婿殿には試練を与えると言ったであろう?」


「えっと、確か、眷属を集めろって言ってましたよね?」


「そうじゃ。丁度この精霊の森にはわらわの眷属の一人が住んで居る」


「いや、試練ですよね?エリス様自ら案内しちゃっていいんですか?」


「…………良いのじゃ」


「え?」


 エリス様は、立ち止まると、俯いた顔を上げ、俺の顔を見つめながら言った。


「…………ちょっと、力を使い過ぎて帰れなくなったのじゃ……」


 エリス様は目をそらして、小さい声でぶつぶつと言っているけど、姿がロリ美少女なので可愛すぎる!


「あーー天罰は、確かにやり過ぎかも……」


「なんじゃ?何か文句でもあるのかの?」


「いえ」


「と、言う訳でじゃ。わらわは、暫く婿殿と行動を共にする事にする!いわば新婚旅行じゃ」


 エリス様は、にぱっと笑顔になると言い訳のようにつぶやいた。


「別に婿殿に会えず、寂しかった分けでは無いからの?」

「はいはい……」

「力を使いすぎて帰れなくなったから仕方なくじゃ」

「分かってますよ」


 俺とエリス様は再び精霊の森の中を歩きだす。


わらわの眷属は婿殿の他にあと、7人おるのじゃ」


「はぁ……」


「そこでじゃ。漠然と世界中を探せと言われても無理じゃろうから、アイテムを用意したのじゃ」


「アイテムですか?」


「じゃーん、これじゃ!」


 そう言うと、エリス様は見たことのあるレーダーらしき物を取り出した。これって何かに似ているような?ドラゴン〇ーダー?


「これを使って世界中に散らばる7人の眷属を集めるのじゃ!」


「え?やっぱりこれって、ドラゴン〇ール?」


「違うわ!ドラゴンなど集めてどうするのじゃ?」


「よいか?このレーダーには一番近くにいる眷属の方角を教えてくれるようになっておる」


「真ん中の点滅は?」


「婿殿も眷属じゃからの?」


「なるほど」


 という事は、自分も入れれば8個のドラゴン〇ールを集めればいいのか?


「あれ?近くにも点滅があるけど?」


「どうやら目的地についたようじゃな」



◇◇



 精霊の森と呼ばれる森。その森は聖都エルスハイムに近い事もあり、他の国よりは神気濃度が高く、森を満たしている。

 そんな精霊の森は魔力系の精霊と神に近い精霊の住処でもある。


 その精霊の森の一角に自然に出来た木のうろを利用した巨木の家があり、その家のドアが開くと、中から緑髪の美少年が出てきた。


 端正な顔立ちにエメラルドの瞳、肩で揃えた緑色でサラサラの髪を右側頭部でお下げにしている美少年。


 透き通るような白い肌に白いチュニック、少し尖った耳、矢じり型の2連髪留めがちょっと可愛い。年は15歳くらいだろうか?


「え?エリスロード様?」


「暫くじゃの?リリムよ。息災であったか?」


 俺は暫く、その美少年に見惚れてしまった。


「ははは、おかげ様で何もなく無事だよ。この精霊の森の結界もちゃんと動作してるしね?で、エリスロード様がここまで来たって事は、何か問題でもあったのかい?」


「むふふ、良くぞ聞いてくれた。紹介しよう!新しいわらわの眷属にして、わらわの旦那様じゃ!」


 エリス様は、エッヘンと無い胸を張ると俺の事を紹介してくれた。


「はぁ!?だ、旦那様だって?」


「どうも、初めまして俺の名前は、アリマ・エリスロードです」


「あぁ……取り乱して済まない。ボクの名前はリリム……リリム・シャリアンだ。リリムと呼んでくれ」


「アリマ……気になったのだが……その、追い剥ぎにでも会ったのか?それとも、服は着ないそっちの趣味か?」


「え?」


 いや、そう言われて自分の体を見て見ると、トランクスしか履いてなかった。


 そうだ、俺はミル姫に呪いの腕輪を付けられて……。


「そうじゃ、何で婿殿は何も着ていないのじゃ?」




 俺は自分が召喚されてから、呪われて服が破けてた事を二人に説明した。


「呪いを解くのは、いつもなら容易いんじゃが、わらわは今、力が使えんのじゃが……、まぁ絵面も悪かろう。服を着れるくらいにはしてやろう」


 まさか、絵面を気にしてくれるんですか?ありがとぅございます!エリス様!


「ありがとうございます。エリス様、でも着る服が破れてしまって……」


「ボクの服を着るかい?今出してくるよ?」


 リリムが用意してくれた服を着る。紺色のチュニックで腰で縛るタイプのものだ。


「おお、中々似合っておるぞ」


「ボクとお揃いだけど……アリマにも似合うね」


 追加で革靴とグレーのフード付きマントも着てみたがいい感じだ。


「これ、軽めのプレートアーマーだけど付けてみる?」


 ライトプレートアーマー、胸と腕を守るだけの鎧だな。着るのに手間取ったけど着ることは可能だった。


「大丈夫そうじゃな。まぁ着ることが出来るだけで、防御力は上がらんから気合で何とかするのじゃな」


「……えええ。マジですか?」


「これで絵面も良くなるじゃろ」


 やっぱり、絵面気にしてる!?



◇◇



「そうだ!お腹は空いてないかい?」


 そう言われてみると、召喚されてから何も口にしていないことに気が付いた。エリス様も降臨してからは、一緒に歩いていたのでお腹が空いているころかもしれない。


「うむ、そうじゃな」


「それじゃ、ご飯の用意するからそこに座って待っててくれ」


「ありがとう、恩に着るよ」


 そう言ってリリムは食事の支度をしてくれた。


「うまい!」


「これは、なかなか美味じゃな」


「これなら毎日でも食べたいくらいだよ!うん」


「そ、そうかな?実は料理の自信はあるんだ」


「リリムは可愛いし、料理も美味しいし、もし女の子だったら嫁に貰いたいくらいだよ」


「「ええ?」」


「あわわわ……かっ可愛い?ボクが?」


 リリムは、何故か顔を真っ赤に染めて慌てている。


「……婿殿よ、リリムは女の子じゃぞ?」


「え?だって、え?ボクって……えええ?」


 リリムって、ボクっ娘だったの!?


「……いや、あの天罰は?やめて欲しいなぁって……」


「何を言うとるんじゃ?わらわの眷属は、わらわの分身のようなものじゃ。めかけにしようが。第二婦人にしようが好きにすると良い」


「ボ……ボクが、め……めかけ?だ……第二婦人?」


「ご、ごめん!男の子だと勘違いしてて、いやでもリリムが可愛いって思ってるのは本当で……」


「ま……また可愛いって!」


 リリムは両手の平で真っ赤になった顔を隠してあわあわしている。


「眷属同士の恋愛は、わらわが許可しておるのじゃ、双方の合意さえあれば、たとえわらわの婿殿であっても嫁を増やしてもかまわんぞ」


「分かりました、エリス様。リリムさえ良ければ考えておいて欲しいかな?」


「うん……分かったよアリマ。……うん、アリマには言ってもいいかな?……ボク、アリマには知っていて欲しい事があるんだ」 


「リリム?」


「実は……ボクは、エルフ族なんだよ」


 そう言うリリムの長めの尖った耳はピクピクと動いていた。


「うん……だろうとは思ってたよ?」


「や……やっぱり分かってしまうのか?」


 その可愛い耳だよ、長いくて尖った耳……。


「そんな可愛い顔で綺麗な耳してたらね……」


 こんなファンタジーな世界でエルフって言ったら鉄板中の鉄板だよね?


「また、また、かっ可愛いって?可愛いのボクが?本当に?」


「ああ、超可愛いよ!俺的にはどストライクだね。もう、食べちゃいたいくらい?」


「あわわっ……食べちゃいたいって……えっえっ?」


わらわも食べて良いのじゃぞ?ん?」


 リリムは真っ赤な顔をして俯いてモジモジしていけど、エリス様もここで誘惑しないでください。


「ほれほれ、どうじゃ?わらわを食べたくなって来たじゃろぅ?」


 いやいや、リリムもエリス様も、可愛すぎです!


「……もう……エリス様のこんな姿見たのは初めてだよ……それに、ボクの事……可愛いなんて事言ってくれるのは、アリマだけだよ?」


「へ?何で?こんなに可愛いのに?」


「エルフ族は……本当はこの世界にいちゃいけない存在なんだ」


「……まぁ、そうじゃったのぅ」



 そう言うと、エルフ族のリリムは自らの事を語り始めたのだった。






あとがき


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