スキル「時間遡行」でPTを救ってきましたが、記憶に残らないので無能扱いされて追い出されました。しょうがないのでスローライフ始めました。誰も知らないチート日記!
第107話「ギルドは教会の下働きなのか?」
第107話「ギルドは教会の下働きなのか?」
「クロノさん! こんな依頼が来てるんですよ! 酷いと思いませんか?」
そう言ってジェニーさんが叩きつけた紙に書いてある内容は……
『下級悪魔の発生に伴い討伐を依頼する。ギルドの者は全員参加すること!』
「なんですかこれ?」
「依頼者を見てください、こんな依頼を出すのは決まっているでしょう?」
依頼書の隅の方に『セレーネ町教会本部』と書かれていた。この町の力関係を的確に表している文面だった。正直に言えばこんなもの教会で何とかしろというのが感想だ。自分たちの方が立場が上だと恫喝している連中を助ける気は微塵も起きなかった。
「この依頼、受ける義理があるんですか? 教会の方が力があるんでしょう? だったらそちらで勝手にやって欲しいんすけど」
「お気持ちはごもっともなんですがね……ギルドが先頭に立って教会の部隊は後方支援をするそうです。前衛がいないと困るそうですよ」
勝手に困っていろと言いたいところだが、それで死人が出るのも後味がよくない。少なくとも実力がなかろうがそいつらにだって家族がいるんだ。俺が参加しなければ多くの人が悲しむ。当然の結果だとしても俺がどうにかできるならどうにかしてみたいと思う。甘いのかもしれない。
「ちなみに魔物の数は何体くらいですか?」
ジェニーさんは困惑しながら答える。
「下級悪魔ですから数百体といったところですね……あれは定期的にわくことで有名な悪霊ですから」
「ちょろ……」
「クロノさん? なにか?」
俺は言葉で取り繕う。真実など伝える必要は無いだろう。
「受けますよ、そのくらいなチョロいものです。旅をしているといろいろなやつに会いますからね。その程度に負けてたら命がいくつあっても足りませんよ」
「大丈夫なんですか? ギルドの人材は一人でも貴重なんですよ? クロノさんに抜けられると……」
「大丈夫です、俺、負けませんから」
その言葉を信じてくれたのだろう。ジェニーさんは疑わしげだが参加を申請して通信端末で送信した。
「では明日、北部の山脈で決戦が起きるのでクロノさんにはそれを手伝って欲しいとのことです」
ジェニーさんは思いきって発言をした。
「クロノさん、ヤバくなったら即逃げてくださいね? お願いしますよ!」
「ええ、何も問題はありませんよ。ところでジェニーさん……下級悪魔の発生する地域は北部山脈で問題無いんですね?」
「はい、あそこに地獄の門という遺跡があってそこからわいているそうです」
なるほど。
「分かりました、今日中にちゃちゃっと片付けてしまいますよ」
「え!? 今日!? 部隊が動くのは明日ですよ?」
俺はシンプルな答えを教えてあげた。
「
ギルドの全員がポカンとしている中、俺は北部山脈に通じる出入り口をギルドが発行してくれた通行証を使って通り抜ける。
周囲を見渡すと確かに向こうの方に禍々しい山があった。いかにも魔物が出てきますといった雰囲気を出しており、所詮賢くない連中だけ合って自分の存在を隠すという発想もないようだ。
「マヌケな魔物だ……」
俺は体内でマナを練って、目標へ向けて微調整をする。今回は温いやり方ではなく、空間を粉々に引き裂き爆破する魔法を使うことにしよう。
北はあちら。目的地を綺麗さっぱり消せる程度の魔力を用意して、長距離の相手に効率よく破壊できる距離のために魔法を調整して……
『ディメンション・ブレイク』
俺はこの前練習した新技を試してみた。空間の圧縮ができるなら膨張もできるだろうという発想で、対象区域の空間を一気に膨張させ、生物の欠片も平等に粉々にすることが出来る魔法だ。
爆轟が流れたあとには削れた山が残っていた。禍々しい雰囲気など欠片もない平地がそこに広がっている。
俺は
教会に入ろうとすると、門前を守っている連中が俺に『何の用だ』と横柄に聞いてきたので、俺は正直に『ギルドへの依頼が終わったので報告に来ました、と答えた。本来は教団騎士が出向くような話なのだが、それを全て解決してしまったので先ほどの爆発と関係あるのかと訝しんでいた。
そこへ観測にいっていた実働部隊が帰ってきた。
『司祭様! 下級悪魔を生み出していた地獄の門が無くなっています!」
「そんな馬鹿げたことがあるはずないだろう! あそこを潰すのに我々が何年かけたと思っている!」
「お話、聞いて頂けますかね?」
「分かった、話を聞こう。貴様、名はなんという?」
「クロノですよ。人に名前を聞く前に自分の名前を答えては……いえ、三歩歩くと忘れそうなくらいどうでもいい情報ですね」
俺の挑発に司祭は顔を真っ赤にしていたが、一応聖職者であって殴りかかるようなことはしないらしい。
「それで……貴様、何の用だ? 報酬はギルドにもらえるだろう?」
「ええまあ、そうなんですがね。一つ言っておこうと思いまして」
「なんだ!」
「ギルドと教会の地位を平等にして頂きたいなと思いまして」
部屋の空気が凍り付いた。
「貴様、何を言っているか分かっているのか? 実力差を分かっているんだろうな?」
「へー……あの有象無象を生み出すだけの扉一つ塞げなかったくせに随分な自信をしていらっしゃる」
「我々だって全力を出せば悪魔の群れくらい……」
「跡形もなく消し飛ばせるんですか?」
「ぐ……」
俺は言外にその魔法の対象が
「分かった……ギルドに無茶な依頼は出さない」
「司祭様!」
「それはあんまりです!」
複数の声が上がったが、司祭がひとにらみしたら納得はしたようだ。
「では、本当にお困りでしたらギルドへの依頼お待ちしております。もちろん
教会を出たところで叫び声が上がったが力を見せるのは気持ちいい。ましてやそれが自分の方が圧倒的に上だと思っている相手ならば尚更だ。
足取りも軽く歩いて俺はギルドへ向かった。
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