第9話

#Mary story 1


心地良い、クラリネットが響く中、

ヴァンが静かに、劇場の席に着いた。


「…おかえりなさい。ルーチェは

これからよ」


「ああ…助かったよ。余裕が出来たンで」


「それで、早めに来てくれたのね。」


「晴れ舞台だからな、そりゃあ」



「…ふふ」



「…この曲、ほら、覚えてる?」


「ルーチェが話してた曲だな」


「もう、ルーチェだけなの?」


「ン?」



「あの子、将来、何になると思う?」



「絵書きの仕事?か、、

最近は歌手…だったよな」



「それも言ってたけど、それだけじゃないの。

わたしも、最近まで、知らなかった。」


「…ほう?…俺も、何も知らないが… ま、

いま決めなくても、良いことは、分かるな」


「どうして?」


「なんでも、やってみないと、な。

考えてるなら、意味があるんだろうと

思うから」



「…それを聞いて、私も、安心した。

ルーチェのパパが、あなたで、良かったわ」



「…そりゃ、どーも。」



「あの子から、あなたに、相談すると

思うから、

その時は、聞いてあげてね。ありがとう…」



「ああ…」



コッペリアのワルツが始まり、

舞台をライトが照らす。



「ルーチェの出番だわ。…綺麗」



ライトの輝きの中、楽しそうに舞い踊る

ルーチェ。

メアリの心の中で、懐かしい記憶の映像が

蘇り…


ルーチェの幼い姿にファインダーを

合わせ、優しく見つめる自身と、

満面の笑顔のルーチェに、

シャッターを、押す音が聞こえた。 


(flap-!!!)


- それと同時に、メアリは、


母の笑顔や、兄の笑顔、

自身の幼い頃の笑顔を思い出し、


メアリの笑顔の映像が、


ルーチェと重なり…


長い間、自身が、見つけたいと

思っていたこと、分かりたかったこと、


そこに、存在していたことを、


はっきりと、理解できた瞬間-


メアリは、湧き上がる気持ちが抑えられず、

感動し、涙がいつまでも溢れ、止まらなかった。


ヴァンは何も言わず、隣で肩を寄せ、舞台を

優しく、見つめている。


メアリは、満たされたような、

幸せな気持ちで、胸がいっぱいになった。

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chigura☆Rūcheの小さな日記 chigura☆Rūche @chigura01

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