フランコ・マリス
――俺は近くのスーパーまで買い物に行くところなんだ。
あんたは?……ああ、わたしはこの近くに用事があるんだ、少し遠出をするつもりで、それで近くを通るならと思って立ち寄ったのだが、まさかこのような所で出会うことになるとはな。
……そんなにジロジロ見るんじゃない、まったく。
……それにしても変わった格好をしてるんだな……?お前の服のことなのか、それともこの服装の人間と会うのが初めてという意味なのか、どちらかよく分からなかったので御堂はとりあえず黙っていることにした。
しかし御堂と同じマンションに住むというこの金髪碧眼の少女は一体どんな用事でやってきたのだろう?……聞いてみたい気もしたが下手なことを聞いて地雷を踏みたくはなかった。
そのため無難に会話を続けようとした結果、つい最近イタリアで起きた出来事の話題になった。
すると、彼女は意外にもよく知っていたのである。
――ふむ、そういえば数日前のニュースではその話題がよく流れていたな……あの時わたしはミラノにいたのだ。
……実は、今年の一月にもイタリアのフィレンツェに行ったことがあるのだ。
まあ今回は、たまたま同じ街に滞在していたというだけの話なんだけどな。
それから一時間ほど、彼女とは色々なことを話した(御堂にとっては初めての経験だった)が結局分かったことは少なかった。
この少女の名前はフランコ・マリスといい、このあたりの住人ではないということ。
だが今は日本の魔術組織に身を寄せていて修行も兼ねて日本に滞在中だということ。
……そして御堂とはあまり親しくないということだった。
だが最後に。
――ところで御堂、あの連中と知り合いなのか?……そうか、あいつらはろくでもないヤツらばかりだ、特に
「あれ、草薙さん?」
不意に名前を呼ばれ御堂は振り返る。
そこには、
「お久しぶりです。
また会えて嬉しいですよ、先輩!」
黒ずくめの女がいた。
……黒い革製の上下と白いシャツ、黒のネクタイと、靴も黒、腰
「えーっ!?」
御堂は絶叫して飛び上がった。
その黒ずくめの美女に見覚えがあったからだ。
以前ナポリの路上で出会った女魔術師、アンジェ・スタインバーガーだった!……あのときもかなり刺激的な服装だったと思ったが……今はさらに際どい姿だった。
「……やっぱり貴方は面白いわ」
楽しげに声をかける女は妖しい魅力を振り撒いているようだ。
そして、どうやら御堂は彼女と出会った時と同様に取り乱しているようだ。
その様子を女は面白がるように観察していた……のだが御堂の叫び声で気づいたのだろう、女の正体に気付いたマリスもこちらへと近づいてくる。
そして女の姿を間近にして声をあげた。
驚いたことにこの少女と女は同じ学校の制服を身につけているのだった!――この女は何者だ、何故俺の名前を?――どうして俺の名前を知っているんですか?――何のためにここにいるの?――この人達は俺とどういう関係?次々と浮かぶ疑問の数々を問いかけようと口を開きかけたが、先に動いた人物がいたので出遅れてしまうこととなった。
それは言うまでもなく、……あの女の正体が何であろうと関係ない、俺には関係のないことだ。
あの人には近づきたくない、それだけを考えひたすらに逃げ出したい気持ちを押さえ込みその場に立ち続けるのだった。
……御堂たちのほうへ歩み寄ると二人の女学生のうちの一人が、
――あら?あの子ってひょっとしなくても……いえ、なんでもないけど。
ただちょっとね。
……ねえあなた。
私は貴方に聞きたいことが山ほどあるのだけど、その前にひとつだけ教えてほしいことがあるの。
貴方はあの人――草薙御堂について、どの程度知っているのかしら?……御堂のことは名前くらいしか知らない。
……まあ、いいわ。
貴方には色々と聞くことがありそうだから。
まずは私たちと一緒に来てもらうわよ。
「……おい待ってくれ」
御堂は思わず呼び止めてしまった。
「……何かしら」
「……あの人は……その、大丈夫なのか」
「……さあね、それは本人次第じゃないかしら。
でも安心なさい、あの子は強いから」
そして御堂は連れ去られていった。
「……それじゃ、俺たちも行こうか」
御堂と別れたあと、アンジェとフランコは一緒に買い物をすることになった。
そして御堂は、二人から離れてこっそりと後をつけることにした。
――これは尾行だ。
だが、御堂は二人の後を追うことはできなかった。
アンジェとフランコが向かったのは高級ブティックだった。
その店の前で立ち止まり、店内に入る二人を見て、御堂も意を決して後を追った。
御堂は入り口付近で待つことにする。
だが数分と経たないうちに二人が姿を現した。
――どうやら買い物を終えたらしい。
二人は店を出ようとしているところだったが御堂はすぐに追いついた。
だが、
「何してんの君?」
「…………」
――気づかれていたようである。
アンジェは何も言わずに笑みを浮かべているだけだが、一方のフランコは明らかに不審そうな顔をして話しかけてきた。
「いやぁ君は確か草薙御堂とかいったかな。
……ん~?僕の知ってる人だと誰かいたような……誰だっけ?……思い出せないからいいや!それより君はなんでこんなところにいるんだろうね?」
彼はずかずかとうしろに回り込んで背中を押してくる。
「まあいいじゃない。
ほら、行くよ。
僕もちょうど暇だったし」
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