第44話 イレギュラーかも
-side エリク-
「ワイバーンの群れか。流石にあんな多いのは初めてだな」
オークキングを無心で倒し終わったエリク達がさらに前に進むとワイバーンが群れでいた。遠くにダンジョンボスの扉も見えている。
一体で一つの町を壊すとも噂されるAランクモンスターワイバーン。それがざっと20体だろうか?これだけの数が出てくるところにこのダンジョンの難易度の高さが伺える。
「おそらく、これが終わったらいよいよボス戦だろう、このワイバーンの群れもエリクならなんとかなるて」
『うんうん、大丈夫。エリクならできるよ!』
「……チッ!」
--ヒューーーン、ヒューーーン
--スパスパスパスパ
できるというか、お前らがせざるを得ない状況にしたのだろうと思いながらもエリクはナイフを投げてワイバーンの首を落としていく。
命中率は8割。なかなかのものだ。このナイフは竜の杖を変形させたものなので自動で戻るように設定してある。
「ほほう中々やるな」
「まあね、段々竜の杖も手に馴染んできた」
『うんうん、いい感じいい感じ!この調子ならボス戦まではとっとと着きそうだね』
「ボス戦まで……“は”?」
エリクは違和感を感じ、レオンの方をみる。レオンは--サッと目を逸らした。
『だだだ、大丈夫だよ、ボスはルークが倒してる可能性もあるし、エリクならなんとかなるって!!』
「……」
『それより!目の前の敵にまずは集中しよ!ワイバーンも油断ならない敵だよ!』
「まあ、それもそうか」
エリクは軽々倒しているがワイバーンもAランクの魔物である。一瞬でも隙あれば大変なことになる可能性が高い。
トールと出会ってからステータスもかなり上がっているだろう今のエリクであっても油断できる相手ではないのである。
……。
………。
「……これで最後の1匹か」
--スパ!
--ギャアアアアアアア!
というわけで、しばし戦いに集中したエリクは無事ワイバーンの群れを倒しきれたのであった。
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「いよいよボスか」
ここにくるまで、ミノタウロス、オークキング、ワイバーンの群れを倒してきた。
となると、ボスに何がきてもおかしくはない、まあ、ルークも先に到達しているだろうから既に倒している可能性も高いか。そうエリクは思う。
--ギギギギギ……
--ドーーン!!
--ドーーン!!
--ドーーン!!
ドアを開けると至る所から騒音が聞こえる。
--GRAAAAAAA!!!!
--WAOOOOOON!!
「まじか」
先に着いたルークがいまだに戦っているつまり、自然界の王の一角であるフェンリルと今の時間まで互角に戦っていたということだ。
「--え?なにこれ?」
薄々“なんか怪しいな”と察しがついていたエリクだったが、戦場のあまりの激しさに、疑問符が沢山思い浮かんでくる。
エリクは後ろの2人の方を振り向くと--サッと目をそらせる。
「おいこら」
『こ、これは流石に予想外だよ!まさかこんな強い魔物がボスなんて』
「わ、我もだ。流石に予想外だ……!!相手がギガントゴーレムとは!!イレギュラーかもしれん!」
イレギュラー。ダンジョン内に魔物の死骸が溜まりすぎたことにより、ダンジョンで起こる魔物が普段に比べとてつもなく強くなってしまう現象だ。
それは、この鬼畜難易度のダンジョンであっても起こり得ること。
イレギュラーが起こってしまい表れてしまったボスであるギガントゴーレムはマイナーではあるがSランクモンスターである。攻撃力よりも防御力がとても強く持久戦になれば不利な相手と言われている。
「ちょっと、待て。イレギュラーが起こったのって……」
--ドゴオオオオオオン!
エリク達のすぐそばを、とてつもない威力の光の玉がとおる。
『話は後だ!なんかやばいから参戦するよ!ルークを助けなきゃ!』
「うむ。おそらくだが、ギガントゴーレムは全身が硬い金属でできているから、フェンリルとは相性が悪いのだろう、我らが助けてやらねばな」
「それはそうだけど、しかしイレギュラーとは」
『まさかここで起こるとはねー。まあでも、イレギュラーが来たのがたまたま私たちの時で良かったよ』
「いや、そもそも、こんなところくる奴お前らくらいだろう」
『それはそう』
「少々我らがここに潜りすぎたか、時間がない時にここクリアするのは一番コスパいいからもう」
「やっぱり待て。もしかして、まさかこのイレギュラーって……!」
「おっと……!我らの事を狙っているな、我が龍の息吹で相殺してやろう」
お前らのせいかーー!というエリクの声はトールとギガントゴーレムの爆発音で消えていった。
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