第31話 あくまで、かっこよくいたい主人公

-side エリク-




「父上。お、落ち着いてください。大丈夫です。エンシェントドラゴンは、いい竜ばかりです。きっと、丁重に扱っていただけますよ」

「そ、そうは言ってもだな」

「エリク。ここまで渋る父上を、これだけ説得するという事は、この屋敷にいると、何か事情があるという事か?」

「流石、兄上。察しが良いですね。……そうです。隠していても意味がないので、言いますが、実はですね、この屋敷。動くのです」

「動く?屋敷がか?」

「ええ。しかも結構な戦闘能力を保持しています。この屋敷だけでも、マスク王国の王国軍隊以上の実力でしょう」

「まじかよ……エリクが言うんだったら、本当だろうな」



「(このジル様の、エリク様への、謎の信頼はどこから来るものなのでしょうか?)」--そう、セバスチャンは思っていたが、執事なので、顔には出さない。



「そうです。そこで、この屋敷を使って、1番近くの銅鉱山にいる魔物を全滅させるという事になったのです。その際、少々、家族に見せられない絵面が続いてしまうので」

「ああ……、なるほど。だったら、仕方がないな。父上、我々は大人しくエリクの指示に従いましょう」

「ジ、ジル。お、お前は怖くないのか?エンシェントドラゴンだぞ?伝説にも出てくる」

「分かりません。ですが、まだ、見た事もないのに、食わず嫌いで、怖がるのは違うでしょう。それに、そこまで、危険な事だったら、エリクは進めないはず。あのエリクが言うんですよ」

「うーん。そうなんだがな」



「(おお、さすがジル兄。父上よりよっぽど、当主っぽい。きっと、ここ--デゾートアイランドに来たのも兄上が説得に、説得を重ねたのだろうな。少々、説得の仕方が、ごり押し気味だが)」--っと、今の一連の流れから、領民が全員で、ここに来た経緯の大まかな流れを予測したエリクは、ジルにトムの事を任せる事にした。



「さて、話は変わるが、セバスチャン。インフラ計画についてはジル兄に一任したいと思っている。しっかり、サポートを頼む」

「かしこまりました。お任せください。エリク様。その手のことに関しては得意分野ですから。必ず、役に立ってみせます」

「頼りにしている。そこの、お金を作る技術者達も、銅を無事に、採掘出来た際には、よろしく頼む」

「「「はっ!!」」」



 こうして、とりあえずの会議は終わりを告げたのだった。




 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢




 さて、ざっくりとした方向性が決まり、トムの説得も無事完了したので、エリク達は、銅鉱山のいる、魔物狩りをする事に決めたのだった。



「バイバーイ。にーに」

「ゲ……。ああ。ソフィア。行って来る」



「(ゲヘヘヘヘ……。今日も、妹が最高すぎる)」--と、言いそうな事を住んでのところで堪えて、エリクは、かっこいい兄を演じようと努めている。



「行ってらっしゃいませ。エリク様。トール様を頼みます」

「ああ。ルカ。こちらこそ、家族をよろしく頼む」

「かしこまりました。お任せください」

「エリク。くれぐれも、くれぐれも無理はしないでくれよ」

「分かっています。父上」

「エリク。別にお前が帰って来なくても、俺は大丈夫なんだからな。あっ……!」

「ジル兄。分かっています。必ず無事で帰ってきますよ。ゲ……。お元気で」

「気をつけるのよ」

「はい。母上。それでは行ってきます」



 屋敷の前まで、見送りに来てくれた家族やエンシェントドラゴン達と別れ、エリクは、屋敷の中に入り操縦席に着く。



「オートパイロットモードで、銅鉱山まで行くセット完了--っと。あとは、もう寝るだけだな」

『エリク。終わったようだね。お腹すいた〜。早くご飯食べたい』

「我は、この前狩った、レッサードラゴンのステーキが良いぞ」

“なぬ!?そんなのを狩っていたのか。我も行きたかった”

「あはは。あれは、ほとんどトールが狩って、終わったから、見てるだけだったよ。それはともかく、確かに、俺もお腹がすいたな。早く食べるか」

「うむ。それにしても、久しぶりに感じるな。お前達と、魔物がいるところに遊びに行くのは」

「そうだな」



 こうして、ご飯を食べ、ぐっすり小1時間くらい眠ると、銅鉱山についたと言う、アラームが鳴ったのだった。



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