第30話 先が思いやられるな

-side エリク-




 その後、エリクは、レオンの自室に行き、一通り事情を説明して、相談する事にした。



「レオン。お金に使われいる金属--銀鉱山か、銅鉱山とかこの辺りにないか?」

『都合よくそんな場所、あるわけないでしょ……と、言いたいところだけど、あるんだなあ、それが。両方ともある。ただ、周りには、結構、強い魔物がいるけど』

「そんなの倒せばいいだろう。この屋敷使ったら、一掃できるし」

『そうだったね。ほんっと。誰さ、こんなチート屋敷作ったのは。--って私だった』



 リビングルームでこれから行う会議の前に、レオンは家に行って、お金の原材料となる鉱山に出発した。



「しかし、その間、父上達はどうしようか?」

『一緒に乗せとけば大丈夫じゃない?」

「そんな事したら、あの人達、泣いてしまうだろう。特に父上は、小心者の極みだ。魔物の血なんて見た日には失神してしまう」

『自分の父親に対する、辛辣すぎる評価だけど、事実だろうね。彼は、魔族化するまでは、かなり温厚な性格だったらしいし』

「魔族化したら、温厚ではなくなるのか。あの父上がねえ……。--っと、それは、もう関係のない話だ。それより、父上達は、ルカ達、エンシェントドラゴン達に匿ってもらおう。おそらく、それが1番安全だ」

『相変わらず、過保護だね。でも、それがいいか。それに、足手まといはいない方が、鉱山にいる魔物を倒すのを、成功する確率が高いからね』

「そうだな。よし、話はこんなところにして、リビングに行こう。レオン。ついてきてくれないか?父上が話があるらしい」

『……?う、うん?今後の計画について話すんだよね?それにしても……、エリクのお父様が私に話?何か、したっけ?』

「いいから、いいから。悪いはないではないから、大丈夫だ」

『う、うん』




 ♢ ♢ ♢ ♢ ♢




「お待たせしました。父上」

「おう。そちらの方は?」

「この人が、この屋敷を作った人、レオンさんです」

「なんと……!この度は、うちの、息子を助けていただきありがとうございます。なんとお礼をしたら良いか」

『あ、その話のことか。いえいえ。エリク君なら、私の助けなんて無くても多分、1人でどうにかしてしまっただろうし……。私は何もしておりません。ええ、ええ……』



 レオンは、自分で言って、自分でダメージを受けた。自分がいなくても、エリクが、自己解決していく様子が、容易に想像できたためだろう。



「いえいえ。そんな事はございません。いくらエリクとはいえ、この過酷な土地。不安も沢山あった事でしょう。本当にありがとうございます」

『は、はあ?』



 『キミ、親に対して、猫被りすぎじゃない?そんなタマではないでしょ』--っとレオンは、エリクに目で訴える。

 すると「この人が、過保護で、勝手に勘違いしているだけだ。俺は何もしていない」--との返信が返ってきた。

 その事に、若干納得しつつも、レオンは話を進めようとした。



『さて、今日、エリクのお父様と、セバスチャンさん、それに、ジル君と、お話したいのは、もちろんお金を作るのに必要な鉱山の事もや、インフラの整備のこともあります』

「ええ。事も……という事は、それだけではないと?」

『そうです。突然ですが、エリク君が鉱山の魔物を倒している間、公爵家--いえ、王家の皆様には一時的に、エンシェントドラゴンの里に住んでいただきたいと思います』

「あ、あばばばばばばば……!」



 トムは、父親の威厳もなく、話を聞いた瞬間、泡を吹いて、倒れたのだった。

 「これは、先が思いやられるな」--と、エリクは頭を抱えたのだった。



--------------------------------------

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る