第32話 この創造神にして、この地上生物達あり

-side エリク-




「さて、可愛い妹と、兄上が待っている。さっさと終わらすか」

『妹さんはともかく、お兄さんが今の発言聞いたら、悲しむだろうなあ』

「まあ、聞いてもおらんし、良いではないか。それより……、これまた歯応えのありそうな魔物だのう。まさか、こんなところでグリフォンやコカトリスに出会えるとはなあ」



 今、エリク達は、銅鉱山から、2、3kmくらい離れた場所で、空から様子を伺っている。

 目の前には、グリフォンとコカトリスがざっと、数百匹はいるようだ。



 グリフォンとは、鷲の翼の上半身と、ライオンの下半身を持つ魔物、コカトリスとは、雄鶏とヘビとを合わせたような姿の魔物である。両者の共通点は、恐ろしく強く、数が多い事。デゾートアイランドが、恐ろしい島と語り継がれる所以の一角を占めている。



「これは、屋敷を持ってきて正解だったかもな。わざわざ、1匹ずつ戦っていたら、撤退を迫られていたかもしれない」

「我のドラゴンブレスで、ここらへん一帯ごと吹き飛ばせば、余裕なのだがのう」

『それだと、銅鉱山も使い物にならなくなるでしょう。あくまで、資源回収がメインだからね』

「ふん。不便だのう」

“お主、不機嫌そうにしておるが、グリフォンの焼き鳥は美味いぞ”

「ぬ?確かに。コカトリスの卵も美味しいのだ。やはり、丁寧に倒すべきだのう」

「へー。なんだか、そう考えると可愛く見えてきたなあ。俺も今晩は張り切っちゃうか」

『はー。結局食べ物なんだね。君たちは。エリク。油断しないでね。この屋敷は、頑丈だけど、何が起こるかわからないし』

「分かっている。操縦席から、自動追従型の魔法弾を撃てる準備は既にしてある。あとは、撃つだけだ」

『なら良いけど。さっさと、始末しようよ。私もお腹すいたし』

“お主も大分,エリク達に毒されておるのう”



 しかし、エリク達には、島が恐ろしいと伝えられていることなど、関係のない話である。

 最強のパーティメンバーに最強の住居、この前、ダンジョンから持ち帰った、最強の防具に、竜の杖と呼ばれる最強の武器も身につけている。

 そして、目の前には、最強の食料。

 最強の衣食住を揃えられる最後のピースとでも彼らは、おそらく思っているのだろう。



「さて。そろそろ始めるか。いくぞ。自動追従型魔法弾、発射」



 ウィーン。バタン。

 --ドババババババ……!!

 --バチン!バチン!バチン!



 屋敷の煙突が横に傾き、魔法弾を放つ。

 追尾型とあり、的確にグリフォンとコカトリスの頭だけを撃ち抜いていく。



「うぉーー!相変わらず、壮観だな。的確に撃ち抜く際に、バチン!っと、気持ちのいい音がするのも非常にいい」

「それにしても、屋敷の煙突から、こんなものが出る仕様を作るとは……この屋敷を建てた人物は相当バトルに飢えて、頭がおかしくなっていたのかのう」

『いや、この屋敷の使用建てたの私なんだけど……。確かに、この屋敷。夜中のテンションで、作ってしまったから変なギミック入ってるんだよね。意外と良かったから使い続けているだけだけど。

 この煙突もその一つ。新しく、魔法弾撃つ場所作る程不便でもないけど、使用者は敵から変態に思われるだろうなあ』

「おい、その理屈から言うと、今グリフォンやコカトリスから、変態に見られているのもしかして、俺なんだが?」

「細かいことを気にするでない。勝てば良かろうなのだ……!」

「それもそうだな。それに、俺のメンタルは強靭的に強いから、どんな事でも、乗り越えられるはずだし」

『ここに来てメンタル高スペックの無駄遣いか。--って、そういえば、ルークは?』

「寝てるな。そっとしといてやれ。疲れているんだろう」

「ああ。昨日も、また、子供が産まれたらしいのう。長というにも大変だのう」

『そう!そういえばさ。なんか知らないけど、最近この屋敷で、フェンリル繁殖してない?』

「そりゃ、天敵がいなくなれば当然だのう。食料も与えられ、このまま、増える一方だろう」

「そうだな。まあ、味方は大いに越した事はないだろう」

『え--!そっか、フェンリルの天敵といえば、ブラックドラゴンあたりか。--って事は、まさか、エリクは、ブラックドラゴン並みの戦力を大量に手に入れようとしている!?』

「まあ、細かいことは気にするな。それより、コカトリスとグリフォン倒し終わった。回収に入る。すぐに料理して出すつもりだ」

『そっか。色々気にはなるけど、美味しいご飯が出てくるなら、仕方がないね』

「お主も大概よのお」



 こうして、エリク達は唐揚げと、絶品卵かけご飯を食べながら、銅鉱山の魔物討伐を終え、本拠地に帰ったのだった--。



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