第2話
恋人同士になった私たちは、2人でいろんな場所に出かけた。 真夏のある日は汗でびしょびしょになりながらテーマパークではしゃいだ。 気づけば長袖を着る時期になって、 秋のある日は美味しいプリンが食べられるカフェに行った。 すぐに上着が必要な寒さになり、 真冬の日は体を震わせながらイルミネーションを見に行った。 数多くの楽しいことを経験し、 彼のおかげで私には笑顔が増えた気もする。
しかし、たいてい恋愛というのは楽しい面だけで構成されているわけではない。 ある程度相手のことを知っていけば好きなところだけが増えていく、 そんな都合のいい恋愛は少ない。 お互いの好きなところも、そうでないところも、 誰かと一緒に過ごしていけば増えていくのは自然なことだ。
それを互いに認めたり受け入れたりすることが、 関係を長く続けていくために求められるのだろうけれど、 私と彼はそれを上手にやり遂げることができなかった。 私がどれだけ向き合おうとしても、 それは彼によって虚しくはねのけられるだけだった。
付き合って半年くらい経った頃のことだ。 私は少しずつ彼との関係において限界が近づいていくことに気づいていた。 半年間の中で、私たちが喧嘩をしなかった月はなかった。 毎月、いや、毎週くらいの頻度だったかもしれないが、 私たちは些細なことで喧嘩を繰り返した。
疲れてるから今はそっとしておいてほしいと言った30分後には 「甘えてもいい?」と連絡してきたこと。 私が大学で男の子と数分話しただけでキレるほど激しく束縛をしてきたのに、 彼は平気で女の子とお酒を飲みに行ったこと。 彼の身内の悪口は永遠に聞かされるのに、 私のたまにこぼす小さな愚痴は聞いてもらえなかったこと。
これらのエピソードはある意味他人から見たらしょうもないことなのかもしれない。 こんなこと許せばいいのかもしれない。 しかし、私にとって彼の態度や行動は、 「こんなこと」とは思えないものだった。 そんなに簡単に何かを許せるほど、 人間はシンプルな生き物ではないと思う。
時々小さな喧嘩が大きなものに発展して、 何度か別れようかという話題も出ていた。 彼は喧嘩をする度に、自分勝手さを強く出すようになった。 自分が弱い立場にあることが嫌なのか、私を一方的に責め続けた。彼の方から「ごめんね」の言葉をもらえることはなかった。
その結果私は怒ることすら無意味だと思い、 諦めて全て私が悪いということにして無理やり解決させるという変な癖がついてしまった。 そうしてなんとなく曖昧に別れを延長する形で付き合っていくうちに、 彼に対する恋愛感情は冷めていき、 彼が送ってくるLINEにも冷たい対応しかできなくなった。彼と喧嘩した夜は、心がざわざわしていて眠れなかった。
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