十九、二十、最低な愛
深海(mimi)
第1話
19の夏、彼氏ができた。 同じ大学で同じ学部の同級生だった。 彼の方は2年浪人していたので実際は2つ年は違うが、 たいした差はないので壁を感じることはなかった。
付き合ったきっかけは相手からのアプローチだった。 私と彼はTwitterで知り合った。 受験を終えた学生が春休みにするSNSの投稿でよく使われる、「春から○○大学」のハッシュタグで彼のツイートを見つけた。 気づけば相互フォローになっていて、DMで少し話した後 LINEに切り替えて話すようになった。
その頃何を話していたのかは詳細には覚えていないが、 多分高校生時代の部活とか、 大学で入りたいサークルとか、 どれも他愛ないことだったのだと思う。 正直彼の顔や服装は私のタイプとはだいぶ離れていたし、 出会った頃はこの人と恋人同士になることなんて全く想像がつかなかったが、彼とは何人かで集まって遊びに行ったり、ビデオ通話をしたりした。 そしてそのうちに2人でデートをするようになった。
彼はよくふざける人で、笑いのツボが浅い私はいつの間にか彼と過ごす時間が好きになった。 出会ってから数か月間の中で小さな喧嘩を数回したことくらいはあったが、 その原因は全てくだらないものだった。 ただ、何日も引きずることもなかったが、完全に自分が納得していたのかはよく分からなかった。
彼の存在が自分の中でどんどん大きくなっていくのを感じ始めたその年の7月7日、 いつものように2人で会っていた日に、彼から初めて告白をされた。
私は彼の好意に気づいていたため驚きはしなかったけれど、 迷いなく答えることもできなかった。
その時私の頭の中に残っていたのは、彼との小さな喧嘩で感じた違和感だった。 何がどう違和感なのかは自分でも全く分からないのに、 どこか彼のことを信じきれない部分もあった。 だからこそ、彼と付き合うことには慎重にならなければと思ったのだ。
結局私はそれから夏休みの間ずっと悩み続けて、 あれだけ慎重になった癖に、「迷うなら1度付き合ってみればいいか」という楽観的な結論に至り、夏休み最終日の8月31日に「はい」と告白に対する答えを告げた。 七夕みたいにロマンチックな日付ではないけれど、 夏の終わりがとても愛しく思えた感覚は悪くなかった。
彼と恋人として過ごした毎日はとても不思議で飽きないものだった。 毎日色んなことが起こる。 とても仲が良くたくさん笑っていた日もあれば、 カップルと思えないほど仲が悪くて大きい喧嘩をした日もあった。 今思えばその毎日はただ彼に振り回されていただけなのだけれど、 当時の自分にとっては彼の存在は私のつまらない毎日を鮮やかに彩ってくれるものだった。
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