✴︎

 父親の奥さんは、どういう人だったのだろう。なぜ、亡くなってしまったのだろう。子供は、今は何をしているのだろう。特に気にしていなかった父親の家族に対する興味が、唐突に湧いてきた。そして、必然的に、母親のことが思い浮かんだ。僕の、母親。物心付く前に、僕の前から消えてしまった母親。記憶には、殆ど残っていない。微かに残る記憶でさえも、覚束ない。僕の母親は、どういう人だったのだろう。なぜ、僕の前から居なくなってしまったのだろう。

 夢の中で、僕はそんなことを考えた。多分、これは夢。目を瞑る前に刹那に考えたことが、眠りの中で想起されているんだ。胸が、じんじんする。僕は、泣いているのだろうか? なぜ?

 微かに残る記憶は定かではなく、もしかしたら、時間の経過とともに、僕の中で美化されたものなのかもしれない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る