0:ロン

 一瞬、耳を疑った。

 だが同時に、何となく彼がそんなことを言い出すのではと、予感していたのも事実だ。

ある一点で、彼と俺とは、とてもよく似ているから。

「――本気ですか?」

 ハルの問いに、黒の正装に身を包んだ彼が、真顔で重々しく頷いた。

 窓ガラス一枚隔てたその向こうでは、間もなく始まる式典の為に集まった人々が、思い思いに歓談している。その賑わしさとはうってかわって静かなバルコニーには、今は俺達三人しかいない。

 風が、涼やかな夜気を送る。澄んだ空気に、月光が映える。

「ああ。返事は式典の後で構わない」

 静かに微笑み、彼は身を翻して去っていく。それを見送り、ハルが小さく溜息を吐いた。

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