第16話-お茶は少女-
私の事情聴取が終わり、外に出させてもらえた時刻は既に8時を回っている夜であった。お尻がジンジンして、歩くのがやっとなほど痛みを感じる。何時間あの座り心地の悪い椅子に座っていたのだろうか。椿さんやゴリラの椅子はとても座り心地の良さそうなものだったと言うのに、私のはとてもボロボロで硬い。それに、あそこで椿さんやゴリラと見つめあっているだけで話すことなんてひとつもなかった。まさしては、ただいいえと答えることだけが私に与えられた選択肢だったとも言えるだろう。まー、結局は監視カメラの確認により疑いは晴れたものの、もし監視カメラに私が映り込んでいなかったらあのまま永遠に事情聴取をされていたのかもしれないと考えると、とてもヒラッとなる。私って運の無い女だな。アハっ、苦笑いさえもできないやと思うのでした。はぁー。暗く光の灯っていない道を一歩ずつ歩くのは少し怖い。暗い夜の道に私だけの足音が響き渡る。変なトラウマ。それがあるから私は夜が怖い。暗い部屋、夜。それが私の心を飲み込むほど恐ろしい。私の足は徐々に早くなってゆく。そのため、体も私の足の早さに合わせようとするたびにすれ違う足と体は走り出す。止まらない足音は次第に一つが二つと変わった時、背後に誰かがいると悟った。その頃には私の肩に一つのヒンヤリと冷えた掌が乗っており私は思わず叫んだ。
「ウギャァァァァァァァァ」
その声は凄ましく、動物園の猿どもにさえも勝てるかのような叫びであった。そのうち掌を振り払い走り始めた私は、何も無いただのコンクリートへと盛大に転んだ。だが、すぐに立ち上がるとともに走り始める私は痛みなど感じていなかったのだ。息が荒れてきた頃に私はズキッと言う痛みに襲われたのです。それは頭が破れたかのような痛みであったため、私は走ることができなくなった。次第にその痛みから逃げるかのように私は地面に体をぶつけるとともに気絶した。気絶している間のことはよく覚えていない。だが、また一つの夢を見た。
「あなた本当に馬鹿ね」
目を開けた先は彼岸花が咲き誇る花畑であった。その先には顔がボヤけて見えない少女が立っていた。それにしても、初対面でそれはあり得ないでしょ。と最初に思った。というか、ここ今朝見た夢の世界と異なる。私は周囲を見渡していると一つの異変に気がついた。私は異変の感じた先へと走り始めた。だが、顔の見えない少女は言った。
「その先へ行く前に、お茶でもどうだい?こんな機会も無いことだし仲良くしようよ。」
私は足を止める。顔の見えない少女は椅子へと腰掛ける。だが、私はその足を動かすと共に異変の感じた道へと言った。濃い血のような色の壁があった。それはとても細い道であったため、通るのにはものすごく体力が必要であった。そして、たどり着いた先で私は来たことを後悔した。着用していた指輪、ネックレスが落ちた瞬間私の視界には溢れるほどの濃厚な血とその原因の死体が十字架の生贄と同じく吊るされていた。腹から流れる血は肌を流れながら足の指を使い、ポツッポツッ、と落ちる。私は思わず息をすることさえも忘れたかのように目の前が真っ暗へと変わった。今まで呼吸をどうしてやっていたのかさえも忘れるほどに動揺した私に顔の見えない少女は言った。
「この人たちはね、鶴野家の人たちだよ。みんな子孫を産んで育てて、寿命が来て、生涯を終えた瞬間、体内の血は全て鶴野家で飲むこととなる。本体の体は腹を切り裂くと臓器を取り出し生贄として鶴咲家の門に釘で、腕、足に打ち込むとそのまま放置されるらしいよ。だけどそれは生贄と言うか、後処理がめんどくさいから置いてくとか?みんなそう言ってた。ここは基本的にね、鶴野家の死者が来るところなんだ。あっ君は大丈夫だから安心して。僕が君を頑張ってお招きしたのだから!百万年ほどここにいるけどさ、みんな可哀想。死んだ後も、ここに現実で死んだ通りの見た目で放置されちゃうもん。僕が触ろうとしても、変な結界が貼られているから降ろしてあげることさえもできない。この景色は何百年見てもなれないよ。」
顔の見えない少女がそう言い終わると私は死体を見る。一人でも違う死に方をしていないかと知りたかったのだ。そのうちに、鶴野家で生まれたものの顔が違ったものの処理場もあった。私はそこに足を踏み込ませようと思ったが怖かった。声が聞こえてくる。これはなんなんだ?分からない。
「死体は死体でも、生きてるよ。あの十字架の死は結界があるため無理だけど、結界のない子供たちはみんなここにいるよ。」
それを聞いてホッとした私は後ろを向き歩き出す。目が覚めたところへと戻るためだ。赤い彼岸花が続くこの道はどこまでもある。私の瞳からは溢れる涙が流れるが、知らない。これは私の涙までは無い。そう思いたかったのだ。それから最初の場所へと戻ると前にある椅子へと腰掛けた。
「君は本当に不思議だね」
いつの間にか隣に顔の見えない少女が座っていた。私は少女を見つめると言った。
「この世界で私は不利ですね。鶴野家、その苗字を持っているだけで何かとても重要なことを託されている気がします。私は私が大っ嫌いです。自分を消したいです。だけど、そんなことできないです。だから、そんな自分が嫌いです。」
顔の見えない少女は私の話を聞く。それは、口を挟むことさえもなく優しい頷きだけが私を安心させた。それから顔の見えない少女は言った。
「君の話はよくわかった。僕は君の味方だ、だからこれからも僕の助けが来るまで待ってほしい。そのかわり、鶴野家に出会してしまった時にこれが君を守る。必ず。」
それは指輪であった。濃い血のように輝く指輪は私の顔を映し出さない。それは不思議だったが、私は頷く共に瞬きをし、次目が覚めた時には白い天井が私の視界に映り込んできた。そしてハッと思った私は壊れたネックレスと指輪があることに気づく。あれはやっぱり夢であったのか。そう考えたのだが、私の指には濃い血のような指輪が嵌められていた。これはどういうことなんだ、そう思ったのでした。
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