第14話-夢-
私は今椿さんと約二年前に共に歩いた道にいる。その際に見た花畑はもう無くなっており、寂しい雰囲気だ。だけど、私は見てしまったなだ。あの日咲いていたマリーゴールドの花が未だに満開に咲き誇っていることを。私はそれを見て驚いた。花が二年間も満開で居続けるなど聞いたことがなかったからだ。私はマリーゴールドを引き抜こうとした。だが、抜けない。花びらをちぎろうとしてもちぎれない。切ろうとしても切れない。マリーゴールドは何をしてもびくともしないのでした。そんな花を私は思った。
「二年間経っても、あんたは私なんだね」
花は風に揺らされている。それと共に私の髪も花と同じ向きへと揺れる。私は一体何をしたいのか。そう自分でも思う。夕日が消えかけているこの時間に私はマリーゴールドと同じ時間を過ごしているのです。そして私は歩き出す。家へと帰るために。私には帰る場所がある。その目的地に向かい歩くのでした。そして家へ着いた頃には星空に輝く月がいたのです。私は靴を脱ぐと中へと足を運ぶ。椿さんはもちろん居ない。今日は帰ってくるかも曖昧な日であったため、ご飯を作る気になれなかった。倒れるように床にへばりついた私はベッドに腕を乗せる。そのままカーテンが風に揺れ、開いた窓からの生暖かい風と差し込む青光を感じながら眠る。まるで海の中にいるみたいであった。その日は海の中にいる夢を見た。手を差し伸べても沈んでゆくだけで何も掴めない。掴みたくてもすり抜ける海水は私を切り離す。そのまま青月が海面から差し込む光でわかる。深く落ちてゆくたびに私の視界から海面に移る青月が離れてゆく。それと共に私は体の力を抜く。先ほどよりも早く落ちてゆくこの場所で私は目を閉じる。そして、次目を開けると、私は海にはいなかった。私の体を包み込む赤い彼岸花が咲き誇っていたのだ。体を起こし見てみると、私の周り以外は白くなっている彼岸花が悩んでいた。私はそれに触れようと歩き出す。だが、私が近寄る場所の彼岸花は全て赤く血のような彼岸花へと変わる。それは次々と広がって行った。まるで、ゾンビの感染が広がっているようであった。私はそこに立ち尽くす。そしてある一本の違う花が見えたのです。私はそれを一眼見ようと歩いてゆくと、蕾であったマリーゴールドの花は立ち待ち満開へと咲いた。それからは枯れることもなくただ咲いている。私はその花を踏み潰した。だが、その瞬間私の視界は真っ暗へと変わったのです。周囲を見渡してもただ暗闇が続いているだけ。その状況で迷わず歩き出す私。歩くたびに今までの記憶が蘇る。思い出したくないものさえもが私の頭に流れてくるのだ。私は走る。その時、一つの記憶が流れてきたのだ。その記憶は私のものではない記憶。一体誰の記憶だ。そう思っていると、私の背後から小さな子供の鳴き声が聞こえた。私が振り向くとそこには私が居た。いや、私ではない。母だ。母が二人?私がそう思っていると言ったのだ。
「二人で幸せになろ」
私はそれを聞き理解した。母は孤独なのだと。その少女は自分の前にもう一人誰かがいるかのように話しかける。誰もいない、誰も返事をしない中喋り続ける。そんな少女の手を私は握った。それは私の意志ではないはずだ。なぜ私は握ったのか。そう不思議に思っていると少女入った。
「エリカの花の髪飾り。それがあなたを導いてくれるわ。」
そこからは覚えていなかった。だけど、少女の呟いた言葉に私は少し希望が見えた気がした。
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