第13話-扉-

 私は最近少女漫画の良さを知ってしまいました。心がキュンキュンしてとても楽しいのです。だから、たまに、いやよく漫画喫茶へと立ち寄ります。私が特に好きなのは、青春モノです。私は青春ができなかった変わりにものすごく憧れるのです。そのため漫画を読んでいるとものすごくドキドキして、青春ってこんな感じのことなのかな?と思うのです。そんな椿さんは私を見て最近からかってくるのです。

 

「お前のことが好きなんだ」

 

 ものすごく私の好きな少女漫画のセリフを言うのだ。私は耳を塞いでも聞こえてくるため、少し、いや結構諦めていた。私がなぜ漫画にハマったかと言うと、初めに向日葵さんから送られてきたネットのサイトで見られる少女漫画がきっかけであった。その少女漫画を最初は気軽にただ暇つぶしの材料としていた。だが、読んでいくうちに心を奪われた私は違う作品も見るようにとなった。ドキドキ。この気持ちがなによりもよかったのだ。家でもネットサイトで少女漫画。そんな生活をしていると、ある日椿さんが怒ったのです。

 

「前みたく俺の体にくっつけよ。悲しいから」

 

 その言葉に私の心は打ち取られた。私はすぐにでも言うことを聞くと椿さんの膝へと座った。それを見て悪巧みをした椿さんは次から次へといろいろ要求してくる。私はその要求にどうしても逆らうことができず、つい願いを叶えてしまう。そのうち私は疲れて椿さんの膝の上で寝落ちをしました。そして次の日、朝起きると椿さんはいなくなっていたのです。現在深夜一時だと言うのにいなくなるって、私のこと嫌いになって出て行ったの?そう思った。私は部屋中を探しまくる。便器の中も、ゴミ箱の中も全て探してもいなかった。私の瞳には涙が溜まった。

 

「いいもん。椿さ、椿なんて知らない」

 

 私はそういえば出てくると思っていたのです。だけど出てこない現実に目が涙目となります。そして椿さんのパンツでもシャツでも服でも関わらず、ベッドに置き抱き枕として寝たのでした。その頃椿は緊急で入った警察の仕事で警察署へときていたのだ。そして深夜二時ほどに仕事が終わり帰宅すると自分のパンツ、シャツ、服を抱きしめて寝ている彼女がベッドにいたのだ。その姿はものすごく可愛すぎてついついほっぺをツンツンとか、体をこちょこちょとしたくなる。可愛い。そう椿の頭の中をよぎるのでした。それから次の日彩芽が起きると目の前には椿さんの服ではなく椿さんがいたのでした。驚いた私は一瞬叫びそうになったけどその声を堪えた私は椿さんの腕をくぐり抜け起き上がる。そして椿さんの顔を見ると、とても可愛い。それが頭をよぎるのでした。それからいつも通りガスコンロで米を炊いている間、お豆腐のお味噌汁を作ったりと忙しい。だけど、今日は運がついてないようで野菜を切る時に指を切ってしまった。

 

「いったぁー」

 

 それが声に漏れてしまい、椿さんを起こしてしまいました。そしてキッチンへと急いできた椿さんはどうした!と言い私が抑える指を見る。そして水を出しその指を洗うと消毒液を持つまでくると消毒をし、絆創膏を貼った。私は治療してくれている間の彼の顔が忘れられない。それから準備が終わり、朝ごはんの時間へとなった。今日の魚は鮭だ。それだけで私ははしゃいでいた。鮭、一番好きな魚であったから。

 

「いただきます」

 

 その言葉を言った時には鮭は私を待ち望んでいた。食べる顔を見ながら可愛いと思う椿がいたのでした。ただ一つの電話が椿さんにかかってきたのです。椿さんは箸を置くと電話にでた。

 

「如月です。」

 

 電話の内容までは分からないけど、緊急ということは分かった。そして椿さんはご飯も食べ終わらないまま支度をすると出掛けていった。なんの緊急の仕事とはなんなのか不思議だが、私はご飯を口に入れる。その時玄関のドアが開いた音がした。

 

「忘れ物ですか?」

 

 私の前に現れたのは、ナイフを持った男であった。その見た目に身に覚えがあったな、そう思い考える。そしてハッとなり思い出したのが、交番に前落とし物を持って行った時に張り出されていた不審者の人だ。私は焦る。私の目の前に不審者が立っているのだから。それから数分たち、不審者が私の方へと近づいてくる。少しずつ近づいてくる不審者相手に私は何もできなかった。私はそのまま外に逃げ出した。髪がすれすれで今にでも掴まりそうになった。私は逃げる。交番に向かっていると言うのに気づかない不審者は思っていたよりも馬鹿だったことを。私は走る。息が切れようと走り続けた。そしてようやく交番が見えてきたほどで私の髪の毛を捕まえられた。そして走れなくなった私はそのまま転び首にナイフを当てられたのだ。唾を飲み込むだけで喉が切れそうなためうまく呼吸もできない。格闘技もこの状況じゃ使うことが難しいため、私は言うことを聞くしかなかったのだ。だが、私は死にたくなかった。ただこのままでいたら、殺されるだけ。その瞬間何かが切れたような気がした。そして蹴り飛ばしたのだ。幼い頃から運動などをしていなかった私は体力が少なかったはずなのに自分が思っていたよりもはるかにすごい力が出たのだ。私はその時言った。

 

「あなたに制裁を」

 

 自分の体じゃないみたい動く。その体の快感を私は覚えたのだ。何度も殴る、何度も蹴る。それを繰り返していたのだ。自分ではもう記憶がなかった。だがふと思えば背後から椿さんの声が聞こえてきた。やめるんだ。もうやめてくれ。その言葉が何度も聞こえてくる。私はその声を頼りに暗闇の中を歩く。そして声が近くなってきた私は走る。走って走って走りまくる。そして私がたどり着いた場所は1つの扉であった。その扉を開こうとした瞬間背後から女性の声が聞こえた。

 

「そのドアは開いてはいけません。開くと言うのならばあなたはあなた自身を捨てた時となるでしょう。それでもあなたはそこを開けますか。」

 

 その女性は私に心配そうに言う。その女性の見た目には見覚えがあった。だがそれもただの錯覚だろう。私はそのドアを開けることを止め後は戻った。声が少しずつ離れていく。それが逆に良かったのかもしれない。あそこにいた女性が言っていた通りあそこのドアは危なかったのかもしれない。私は少し明るい場所から遠ざかり暗闇へとまた足を運ぶのでした。次目が開けたときには私は家のベッドで寝ていた。周囲を見渡すとそこには椿さんがいた。椿さんは私の顔を見ながら泣いた。なんで泣いているの?そう思ったのだが椿さんは言った。

 

「彩芽なのか。本当に彩芽なのか。」

 

 瞳からは涙が流れていた。椿さん。私、私じゃないみたい。ごめんなさい。今のままじゃ私あなたが望んでいる私になれない。またはあなたの愛していた彩芽ではなくなってしまう。私の瞳からも涙が流れた。どんなに悲しんでもいちど私は人に手を挙げてしまったのだ。その事実が消えると言うならばこの世界の犯罪この世界の罪全てが消えている。私はやってしまったのだ。自分自身を変える取り返しのつかないことを。私は知っている。鶴野家に産まれた者の心には生まれた時から何かしらの呪いがかけられていると言うことを。あの扉はきっとその呪いを解放する時だったんだろう。解放前からあれだとは何と言うおぞましい力。きっと私の心は今後何かが起きた時ドアを開くだろう。その恐ろしさを自分ですら分かっている。椿さんに迷惑はかけられない。だからこそ私は自分を殺してでも制御しようと思った。それから椿さんは言った。

 

「あの不審者な、俺のことを殺したがっていたらしい。俺が子供の頃に出会った女の息子が今さら来たらしい。」

 

 私はその言葉に少し安心した。これで椿さんは狙われない。そう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る