第11話-戦い-
椿さんが警察の仕事でいない間、ものすごく暇です。だから、今日は散歩することにしました。清々しいほどの青空の下を歩くのはとてもポカポカしており心地よいです。いつもの幼稚園の前を通り過ぎようとした時、一つの疑問を抱いた。園の門が開きっぱなしだったことを。閉め忘れ?そんなことあるわけがない。なぜならいつも先生たちが必ず閉めていたことを知っているから。私は園の中にある部屋に駆け寄る。その中にいたのは、刃物を持った男が先生と園児を脅しているものを。そして私はとっさにドアを開ける。
「なんでここに女が入ってくるんだよ」
そして私の方にナイフを振り下ろしてきた。だが、小さい頃から教わっていた格闘技を使い男の手にある刃物を殴り落とすとそのまま男を捕まえた。その直後、椿さんがきたのだ。椿さんも同じ理由で入ってきたとか。私はホッとなり力が抜けた。そして男は無事逮捕されたのだが、それがきっかけに私は有名人となってしまったのだ。美人な女性。美人な少女。ギャップ萌え。いろいろなことがネット、テレビ、新聞で騒がれた。そして私が街を歩いているだけで注目を浴びるようになった。それもありもうヘトヘトとなっていた。椿さんは家にいる時、膝の上に座らせてくれる。私はめちゃくちゃかまってちゃんなのだ。だから、ハグをしながらスマホを触ったり、寝るときは指を握ったりとして本当に大好きだ。そんな私を少し嫌がる椿さんだけど、結局は嬉しそうだ。そんな彼を愛しています。そんなある日、竜胆さんからラインが来たのです。
「話がある。川の公園で待ってる」
私はすぐに支度をし家を出た。椿さんは仕事でいないため、竜胆さんと会うことはバレない。そして公園へ着くと、いつもと変わらず女子に囲まれていた。その光景ももう見慣れてきた。しかし、今日は隣にあの日助けてくれた可愛い女の子がいたのです。そして私の存在に気づいた少女は私の方へ歩いてきた。
「あのようなことになったら時間かかるんだ」
そしてニコッと笑う顔が何よりも可愛かった。私はあの日、二年前以来だったことから感謝を伝えられなかった。だから、あの日ありがとうございました。そう言った。女の子は笑顔で私に、どういたしまして。そう言った。そして数分立ち、竜胆さんがこちらに向かってきました。ヘトヘトな顔をしている竜胆さんはまるで八十歳ほどのおじいちゃんのようだった。それを見ている私と女の子はどうすれば良いのか。そう考えていると、竜胆さんが言った。
「そいつの名前、向日葵って言うんだ。俺の妹だ。」
竜胆さんの妹さんだったとは知らなかった私はものすごく驚きました。でも、確かによく考えれば美男性の妹が美少女でもおかしくない。そう思ったのだ。それから本題へと入った。
「鶴野家と鶴咲家が戦いを始めることが決まった。鶴野家が後継を失い弱体化しているうちに、鶴咲家が乗り込む。その計画らしい。だから、お前も鶴咲家についてくれないか。」
私はそう言われた。だが、なんとも言えない。戦い。武器が嫌いだからだ。まー鶴野家と鶴咲家、どちらにつくと聞かれれば鶴咲家側につくが、戦いは嫌だ。竜胆さんの言っている戦いは本当の方だろう。この戦いで負けた方はこの世界から跡形もなく消える。それが見えるからだ。私が顔を暗くし悩んでいると竜胆さんは言った。
「鶴野家の当主であるお前のばあちゃんこそ倒せばこの戦いは終わる。」
だが、私は知っている。おばあちゃんが竜胆さんたちが思っているよりも弱くないことを。いつも襖の部屋で座っているおばあちゃんは不思議であった。だが、私がもっと不思議であったのは、顔が全く同じおばあちゃんが中庭でいつもお茶を飲んでいたことを。私はそのおばあちゃんだけにはうまく喋りかけることができた。襖にいるもう一人のおばあちゃんと比べて優しく、よくあやとり、こま、けん玉を教えてくれた。しかし、鶴野家本家に帰るのは半年に一度ほどだったため、おばあちゃんに会えることも少なかったのだ。私はあのおばあちゃんのことを今でもたまに思い出す。あの頃、あの時間だけが私の幸せであったことを忘れることはない。幼い頃、おばあちゃんと遊んでいる際に一人の不法侵入者が私たちのいる中庭へときたのです。刃物を持っており、震えながら涙目になる私におばあちゃんは、大丈夫。そう優しく声をかけたのです。そして不法侵入者は私たちの方へ走ってくるが、地面に叩きつけられたのだ。それは、おばあちゃんが箒の棒で倒しちゃったのです。私はその姿に憧れました。その時私の中で思ったことといえば、おばあちゃんは私のヒーロー。それだけでした。いい歳をしているおばあちゃんがそこまで動けたことを今では考えられません。まーこんなこともあったため、ただのおばあちゃん。そう推測していると容赦なく死ぬ。それだけがわかる。 私は竜胆さんに言った。
「あなたたち鶴咲家が思っているよりも、鶴野家は強いですよ。」
その姿はまるで私が鶴野家に肩を持つかのようでした。私はおばあちゃんのことだけは傷つけてほしくない。そう思ったのです。だから、条件を叶えてくれるならばあなたたちの役に立ちましょう。そう言ったのだ。もちろん条件とは?そうなった。
「条件、それは鶴野家にいる当時の双子の妹を助けて欲しいのです。」
私にはわかる。妹だと。私はその条件を言うと唾をゴクリと飲み込んだ。そして竜胆さんは笑いながら言った。
「おっけい!俺たち鶴咲家もそこまで腐った根性してないから安心して。彩芽は知らないかもしれないけど、鶴野家は暴力集団。鶴咲家はそれを止めるため、鶴野家にいる人々を保護するところなんだよ。だから鶴咲家には今元鶴野家の人たちいっぱいいるよ。」
その話を聞き私はキョトンとなる。思っていたより明るかったことと、すんなり受け入れてくれたことを。そして、私は一度鶴咲家を訪れることとなった。移動中は向日葵さんのバイクの後ろに乗り移動する。その間、いろいろな話で盛り上がり楽しかった。それなら二十分ほどが経過し、ようやく鶴咲家本家へと到着したのだ。そこは鶴野家と似ていた。だが、門をくぐった先は子供たちが中庭で走り回る姿などがあり、鶴野家とは大違いであった。そのまま少し案内され、すぐに現在の鶴咲家の当主とご対面することとなった。
「おばあちゃん。入るね」
そして襖を開いた先にいたのは、あの頃のおばあちゃんでした。私はキョトンとなるが喋りかけた。
「私のこと覚えてる?」
そしてゆっくりと頷くと涙を流し始めた。私の瞳からも涙が流れ落ちる。その姿を見た竜胆さんも向日葵さんも何が怒っているのかが分からないためキョトンとしている。そして恐る恐るおばあちゃんに近づく。そして手を伸ばすと、おばあちゃんの手の上に乗せた。手は温かく、生きている温もりを感じられた私の瞳からは涙が溢れて止まりませんでした。生きてる。おばあちゃんは無事だったのです。それからいろいろな話を聞いた。あの中庭にいたのは、ただの気まぐれだったとか。暇な時はいつもあそこの庭に行き、ひなたごっこをしたりと遊んでいたらしい。おばあちゃんは双子らしいです。だけど、鶴野家から追い出されたおばあちゃんは鶴咲家に保護され、鶴野家の当主となるはずだった人ということもあったし、ちょうど先月当主が亡くなり空いていたこともあったので、おばあちゃんが当主となったらしい。いろいろ不思議ですが、これで私も戦うことを覚悟した。おばあちゃんが無事なことを知れた私の心は一気に燃え上がったのです。
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