第6話-誕生日は友と-
私は電車を降りると共に歩き出した、家へとついた。もう夕方だ。きっと椿さんはもう仕事に行っただろう。私はそう思いながら鍵を開け中にへと入った。そして靴を脱ぎ終わり、ただいまと言い入った。そしてリビングへと繋がる部屋のドアを開けた先は、風船などで飾り付けをされた部屋であった。私は驚き足を止めると共に背後からクラッカーの音が鳴り響き、驚きながらも後ろを向いた。背後にはなんと椿さんと椿さんのご友人?がいた。そしてみんな一斉に声を合わせ。
「彩芽ちゃん。お誕生日おめでとう」
そう言ったのだ。私は一瞬戸惑ったが、スマホの日付を見ると今日は誕生日であった。そんなこととっくに忘れていた。誕生日など祝ってもらった事がないからだ。いや、もしかしたら姉といた頃は、姉が私の誕生日を祝ってくれていたかもしれない。私はまず、なぜ今日誕生日だと知ってるんですか?と聞くと椿さんは答えた。
「昨日ライン交換した時に、明日誕生日の人でいたから、同僚に手伝ってもらって準備した。もしかして、嫌だったか?」
少し申し訳無さそうに聞く椿さんはまるで寒さに震える子犬のようだった。私はその姿にクスッと笑い、
「嫌なわけないです!とっても嬉しいです。」
そう言った。スマホなんて母が私を管理するためだけにあるものだと思っていた。私を監視するためだけにあるもの。だからこそこのような素晴らしいことを起こしてくれる物となるなど思ってもいなかった。それからはあっという間であった。料理を食べたり、歌を聞いたり、ケーキを食べたりと今までに味わったことのない事だらけだった。これが幸せなのかな。そう心で思った。それからみんなでワイワイし、深夜十二時を回った頃同僚の皆さんは寝落ちしてしまいこの部屋で起きているのはいつも通りの私と椿さんだけとなった。椿さんはマシュマロの入った、湯気が出るほどの温かいココアを私に手渡した。まるで、私がこの家で目覚めた時にいただいた水のようだ。あの日から私がこの家で暮らしはじめて、たったの二日間しかたっていない。だけど、この二日間で家にいた頃には起こらないことばかりのいろいろなことが起こっている。私は気づかないうちに何かを恐れるかのような顔へとなっていた。それを見た椿さんは私の隣へとコーヒーをマグカップに入れ腰かけた。私たちは二人ただ、無言で私はマシュマロの入ったココア。椿さんはコーヒーを飲む。会話など何もなく、ただ同僚の人のいびきだけが響き渡る。たまに大きないびきをすると、椿さんがうるさい!と言い静かとなる。だが、それがなんとも言えないほどに幸せだと感じた。この空間がなぜか安心する。ただ隣に誰かがいるだけなのに、ただ周りに人がいるだけなのに安心出来る。それから二人、静かでただ飲み物を飲む音が響き渡るこの時間を過ごしていると、椿さんがコーヒーの最後の一滴を飲みほすと口を開いた。
「あのさ、これ誕生日プレゼント。あんまプレゼントとか女にあげることないから、喜んでもらえるか分からないが。」
私はマグカップをテーブルへと置いた。そして私の掌には細長く小さな箱が一つ置かれた。その箱は見た目からして高価そうで、私は貰うことを躊躇したのだがそれを受け取ることとした。箱をゆっくり開き、中にあったものはアヤメの花のネックレスであった。紫色に輝くネックレスはとても美しく、可愛かった。私はそれを見ると思わず頬が上がりにやけてしまった。それと共に少し涙が溢れてきたことにより涙目となった。私は箱を絞めると胸に当て感じた。これが幸せなんだな。そして一つの記憶が遡る。私の十六歳へとなった次の日の朝、枕元にエリカの花の髪飾りがおかれていたことを。私は今でもそれを大切に保管している。とても細かく作られているエリカの花は、本物のようだ。あれから二年経ち、私は今日十八歳へと大人の階段を登ったのだな。それと共に私に有利な状況へと変わった。なぜなら児童養護施設は十八歳となると施設を出なければいけないからだ。簡単に言えば、今もし母に見つかり私が警察に通報したとしたところで、養護施設にはもう入れない歳となったから好きなところへと行けるのだ。この状況は私にとって、とても甘いスイーツよりもとても美味しいお菓子よりも美味しい状況であった。私は解放されたと感じる思いと共に、プレゼントの嬉しさが混ざり瞳は涙へと包まれて行った。それと共に椿さんがもう一つ箱を渡してきた。私は涙が流れないよう天を見上げている状況だったことから、手探りでもう一つのプレゼントを探す私を見た椿さんは笑うと共に私の手を引っ張った。そして私は椿さんの胸の中へと飛び込んだ。とても暖かい。それと共にもう一つ感じたことといえばものすごく早く動いている心臓の音が私の脳に響き渡っていることだ。それから何秒、何分経ったことだろうか、私たちは動かない。椿さんの顔に当たる私の髪。その先か見えたのは一瞬のことであったが、椿さんの頬、耳は赤くなりまるで赤い木の実のようだった。そして私たちはハッとなり離れた。それから少し恥ずかしそうに椿さんは私の掌へと確実にもう一つの箱を置いてくれた。私は最初にいただいたネックレスを一旦テーブルにへと置くと、もう一つの箱を開けた。次回にへと入ってきた中身とは、とても美しい指輪だった。ルビーの様に赤く、星のように美しく輝いている宝石が真ん中についており、まるでツバキの花のようだった。私はテーブルにおき少し眺めている時にある一つのことに気づいた。それは、椿さんの指にも私と似たような指輪が嵌められていることを。私は少し気になってしまいムズムズしていた結果、その指輪は?と聞いてしまった。そして返ってきた返事は、どう受けていいのかが分からず、感じがいしてしまいそうになる言葉だった。
「俺のは彩芽のと同じシリーズで、アヤメの花がモチーフにされた宝石なんだ。ちなみにそれはツバキの花だ。」
椿さんの顔はまたもや赤い木の実のように赤へと染まり、掌で顔を隠している。だが、細く綺麗な指の隙間からは一つも隠れておらず、顔が赤いことが丸見えだ。私はクスッと笑うと共に少し嬉しくなった。椿さんとお揃いのものではないけど、似たものをもらえた事が何よりも嬉しかった。そして満面な笑顔で、ありがとうございます!そう答えると椿さんは隠していた顔をこちらに向けると、どういたしまして。と言った。それから何時間経ったことだろうか、今日あった出来事の話をしたり最近の話をしたりととても楽しい時間を過ごした。そんな中、私が遊園地へと行ったことが無いと知った椿さんは明日遊園地へと行こう。そう言ったのだ。私は目を輝かせながら頷いた。それを見た椿さんは嬉しそうだ。そして椿さんが口を開こうとした瞬間、同僚の中の一人の推薦さんが口を開き突然喋り始めた。
「えっ、遊園地!俺も行きたいー!」
椿さんと私がポカンとしていると、他の同僚の人たちも次々と目を覚まし遊園地へ行くと言い始めた。その結果、仕方なく同僚の皆さんも混じえて遊園地へと行くこととなってしまった。本当は二人で行きたかった。この気持ちは椿さんも同じなのかな?そう思いました。そして気づけば深夜二時を回っており、ベッドに入り私は思った。今日は生きてきた中で、最も良い日だな。今日は久々に心地の良い眠りへとつけました。なぜなら、今日だけは特別に私のベッドの中、隣には椿さんがいる。それだけでは無く、私は椿さんの腕の中へと包まれているからです。私が次目が覚めたのは、カーテンの隙間から入り込む光が目に当たった時でした。そして起きようと思い目を開けた先にあったのは、椿さんの顔でした。寝た時と比べるとなぜこうなったの?と思うほどの近さだ。私がオドオドしていると、椿さんが寝ぼけて私を抱きしめたのです。抱き枕を抱くかのように私を締め付けてきます。私はその状況を嫌だと思いませんでした。その時私は気づいたかのように思った。私、椿さんのことが好き?と言うことに。私は一人頭の中で妄想劇を広げていると、モゾモゾしている私の振動のせいか目を覚ましてしまいました。モゾモゾしている私は起きたことに気づかず、永遠に頭の中で妄想劇を広げていました。そしてハッ!と思い後ろを向いた次の瞬間。椿さんのスマホへと顔がぶつかったのです。私がモゾモゾ妄想劇をしている間、椿さんはスマホを寝ながら見ていたため、起きていないと思っていた私が実話起きていて後ろを向いてスマホに顔をぶつけるなど思ってもいなかったのだろう。そして二人謝りあっている間、同僚の人たちはリビングで今だいびきをかいでいたのであった。それから時間は経ち、みんな支度が終わった。現在の時刻は十一時だ。もう着いた頃には昼食を優先しなければいけないだろう。まーそれでもいっか!と言う気持ちで楽しく家を出た。私は昨日からスマホで遊園地の乗り物などを調べていた。どれも楽しそうで、今の私は四歳の頃に戻った気分だ。浮かれながら行った私たちにアナウンスです。なんと、電車に間に合いませんでした。次の電車は三時間後。私は絶望して地面に膝をつけた。
「神様の意地悪ー!」
私がそう言うと椿さんや同僚の推薦さんが私を慰める。人生初の遊園地を心を躍らせながら、いや心を爆発させながら待っていたのに。これってもしかしてあたし、神様にいびられてる?!私は立ち上がると一旦駅のホームを後とした。それからみんなで街に来たがどうする?と言うこととなり、まず昼食を取ることとなった。だが、みんな食べたいものが違ったことから、好きなものを買って、また待ち合わせをする。と言うこととなった。残念ながらパンを食べたかったのは私だけだったらしく、一人で行くこととなった。だが、ここらへんにあるパン屋さんは絶品だ。だから例え一人で買いに行かなければならぬと言う試練があろうと構わなかった。私は一歩ずつ歩く。いつもと変わらない景色。私はそれが好きだ。何も変わらない景色だからこそ平和だなと感じられるからだ。そして気づけばパン屋へと着いており、中に入った。自動ドアが開いた瞬間、いや開く前から漂ってくるこの何とも言えない焼きたての匂い。その匂いがたまらなく好きだ。だからパンも好きだ。トレーとトングを持ち私は店の中を回る。メロンパン、カレーパン、アンパン、焼きそばパン、なんでもある。私は悩んでいるうちについつい十五個も買ってしまった。こんなに食べ切れるわけがないから、みんなにも上げるようとした。そして私は手にパンの袋を抱えて外に出ると、みんなでの待ち合わせ場所へと歩き始めた。その途中、少年と少女が泣いているのが見えた私はすぐに駆け寄る。見えていなかったが、少年と少女の目の前に立っていたのは、風船配りをしているウサギの大きな人形だった。それも、中の人がミスって首を逆につけている。私は少し呆れてから、少年と少女に声をかけた。
「ねぇねぇ、パンは好き?」
私がそう聞くと不思議そうに頷いた。だから私はパンの袋を開き、好きないいよ。と言った。涙も止まった頃、少年が少女の手を引きお礼を言って去っていった。きっと兄妹なんだろう。それから私はウサギの大きな人形の首を直すとそのまま行こうとした。だが、手を引っ張られた感触がした私は背後を見た。その先にいたのは、ウサギの大きな人形の頭を脇に挟み汗だくになった美男性だった。その見た目は椿さんに負けないほどに。
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