第4話-姉の真実-

 今日は図書館へ行くこととした。椿さんは仕事だが、合鍵をもらったため自由に出かけられる。それにラインも交換したことだし大丈夫だと思っている。だからこそ昨日と違って今日は安心して出かけられる。そして朝、椿さんは寝ているが、八時ほどに私は外へと出た。歩いていると私と同じ高校生達が友達と歩いている。私も本当なら今学校へ行く途中なんだろうな。そう思った。私は早歩きをし、図書館へと行った。図書館はとても静かで勉強に集中出来る。高校へ行っていない代わりに自分で勉強するのだ。勉強なら家で知ればいい。そう思うだろうが、家には朝に帰ってくる椿さんがいるためら、起こしたら申し訳ないと言うことで来ることにした。それにしても図書館など半年振りに来た。半年前に高校を中退した私は一日中家からは出れなかった。外からはいろいろな人たちの喋りごえなどが聞こえてきた。羨ましかった。私も、普通に育ちたかった。そんなことを久しぶりに思い出すと私は少し懐かしく感じた。私は過去も良い思い出となるな。そう思った。高校にいた頃も変わらず図書館へと通っていた。そのことから私は小説が大好きだ。だからこそ今この本に囲まれた場所に入れて幸せだと思う。学校にはなかった本などがいっぱいあった。そんな中私は一つの奇妙な記事を見つけた。それはとても古く色が薄かった。だが興味が湧いた私はその記事を持ち席へと座った。読んでみるととても面白くつい読み進み裏へといった。だが、裏に書いてあったのは、家庭内事件であった。私は少し気になり読んでいくと、あり得ないことが書かれていた。それは、鶴野純恋さん。十五歳で虐待により死亡。それは私の姉と同じ名前であった。私は母に姉は生まれた時に亡くなったため、あなたはレインボーベビーだと。これは十四年前の記事だ。虐待により死亡。母親は逃亡中。それだけであった。だが、私は本当にそれだけなのか気になり、ノートパソコンで調べてみた。その結果、その事件はお金で取り下げられたと書いてあった。私が知っている事実とは全て程遠い。私は姉のことを知りたい。その気持ちから、親戚の家へ行くことにした。会うのなんて何年振りなのかがわからないほどに久しぶりだ。もしかしたら母の子供と言うことで軽蔑をされる可能性さいもあるが、そんなことなど考えていても意味がないと思い私は図書館を出ると電車に乗り、親戚の家へと行った。インターホンを押す。今はお昼前だから人はいるはずだ。はーい。と言う言葉と共にガラガラ音を出しながらドアは開いた。それと共に私の顔を見ると共に一瞬にして虚しい顔へと変わった。私は親戚に家に上げてもらうとお昼ごはんをご馳走となった。その後現在の母の状態を話始めた。母は今若作をし、男と遊んでいるらしい。若作りをした顔は私をそのまま書いたかの様な顔だと言う。だから親戚の人がドアを開けた先にいた私を最初は母だと思っていたらしい。その他にも悲しいことなのかはわからないが、私のことは探していないと聞いた。だが、その言葉で少しホッとした。なぜなら今の幸せを奪われたくないからだ。私は母の話を聞くと親戚に問いた。


 「あの、私の姉のことで知っていることありますよね。このことなのですが…」


 そしてノートパソコンで家庭内事件の記事を見せた。親戚はとても動揺していたが、徐々に喋り始めた。


 「大麗花は実の娘、純恋を嫌いっていたわ。大麗花は美人。だから、娘が自分に似ていないことが気に入らなかったの。そのため、自分の顔に似ていない純恋を虐待し続けた結果、最終的に殺してしまったのよ。でもね、本当は違ったのかもしれない。あなたが生まれて大麗花はとても喜んだわ。なぜなら顔がとても似ていたから。でも、男遊びは絶えずに当たり前かの様にあなたと純恋を家に置いて出掛けて行ってたわ。私は、知っていたけど何もしてあげられなかった。見つけてあげることさえも出来なかった。しなかった。本当にごめんなさい。でも、あなたが生きていてくれてよかったわ。彩芽」


 親戚は土下座をしながら泣いていた。姉は私を育ててくれた。なのに私は母の変な話を信じたことから、姉をこの世界から消していた。真実を知った今だからこそ私はおじさんに会う決心がついた。そして私はその後今日までの話をすると、親戚は泣きながら聞いていた。そして夕方となり私は帰る。帰る途中私はスグリを見つけた。赤く小さな木の実みたい。私は触れようとした時思い出した。母はいつも私にスグリよ。ママはスグリよ。と言われていたことを。私はその瞬間少し息が詰まった。だが歩き続ける。スグリ。その花言葉はとても恐ろしい。だからこそ私は必死に母を助けていたのかも知れない。夕日も終わり、夜の主役にバトンタッチしようとしていた頃、私は家に着いた。そしてただ無言で家に入るが椿さんはホストという仕事へ行き誰もいない。まるであの頃の様だ。学校から帰っても何もない。ただ暗いだけ。私は何かをやろうと思う気持ちなど一つもなかった。そして私は泣いていた。姉のことを考えるとどれだけ申し訳ないことをしたのか。私は泣き崩れながら暗くカーテンが開いている部屋で泣く。カーテンからは外の青い光が差し込み、まるで海の中にいる様であった。海の中に鯨はいるのかななんて考えたりしていた。親戚でも姉の様子などはわからないらしい。だけどゆういつ言えることは、私と姉はやっぱり姉妹だと言うことを。私は赤ん坊の様に泣き疲れて寝た。目の周りは赤く腫れ上がり、泣いたと一目でわかる。深夜十二時を回った頃、私は部屋で一人、部屋の床で寝ています。そして椿は六時となり帰ってきた。なるべく彩芽を起こさない様静かに入った。そしてリビングには彩芽が床で寝ている。それを見た椿は驚くと共に急いで駆け寄ると寝ているだけと分かり安心した。なぜ床で寝ているのか。それを疑問に思っている時、目が赤く腫れ上がっていることに気づく。椿は彩芽が泣いたんだなと思うとモーフを持ってきて彩芽にかけた。そして寝顔を隣で見ている椿も次第に睡魔に襲われ隣で寝た。その日は二人とも初めて共に寝た日でした。そして彩芽が目を覚めた時ものすごく驚いた。なぜなら隣に椿さんの顔があるからだ。私は驚き起きあがろうとしたが、私の腰には椿さんの腕が乗っていた。起きないように腕を動かそうとしたが、少し動くだけですぐに起きそうだ。そのためこの状態から動けない。私は鎖で縛られている様な気分だった。だが、あまら嫌ではなかった。そして私はまた眠りへとついた。そして次目が覚めたのはお昼の十二時を回っていた。椿さんすでに起きており、何やら慌てている様だ。


 「椿さん。そんなに慌ててどうしたんですか?」


 私がそう聞くと椿さんは顔を赤めながら何も言わず、ただ私の顔を見ていた。そんな椿さんが怪しく私は少しずつ徐々に近づいていった。だが椿さんも徐々に一歩ずつ下がる。椿さんはそのまま自分の部屋へと入ってしまった。何を隠しているのかは気になるが、部屋に入られては仕方ないと思い諦めた。そしておじさんの面会に行くため、椿さんにもドア越しに声をかけた。だが今日は用事があると言うので椿さんとはまた後ほど行くこととなった。そして私はザワザワしている街を通り過ぎると電車に乗り刑務所へと到着した。そして中に入り私は椅子に座り待っている。そして数分経った頃、おじさんは透明なガラス越しに現れた。そしておじさんは椅子に座ると口を開き喋り始めた。


 「久しぶりだね。あの時は本当に申し訳ないことをした。本当なら、こんなガラス越しじゃなくきちんと目の前で謝りたいのだが、それも今の私には叶わぬことなのだと実感しているよ。今日はなぜきたんだい?聞きたいことがあるならば正直に全て話す。これだけで償えるとは思っていないが。」


 おじさんはそう言うと唾を飲み込んだ。そして私はおじさんの人生について聞いた。少しずつで良いから話してほしいと。そして話し始めた。聞いていると辛いこともあるが、奥さんに出会えたことなど幸せなことの方が多かった。そんな中、一つの話が私の知りたかったことだった。おじさんには無関係だと思っていた話であったのだ。だが、その話の時だけは辛そうで、とても行き詰まっていた。


 「私の娘が十二歳の時、一人の少女が赤ん坊を抱えて昼間外にいたんだ。姉の方は体に複数の痣があり、一目で虐待を受けていると分かった。私と娘は少女に話しかけると一緒に私たちの家へと帰ったんだ。それから毎日家に遊びに来る様になった。だが、日に日に少女の体の傷は増えるが、妹の体には傷がなかった。きっと、姉が守っていたんだろう。私は体の傷について聞くが、答えようとしなかった。だけど、会うたびに言っていた言葉があるんだ。それは、この子、彩芽の名前は私がつけたの。アヤメの花言葉を込めて。彩芽には私と同じ道を歩んで欲しくない。それにこの子には笑っていてほしいもの。もしこの子が笑わない子となったなら、笑いなさいって言わなくちゃ。もし何かあったらお願いします。この子を頼みます。後、おじさんの人生を知りたいともし言いにきた子がいたら、言ってあげて下さい。微笑みは無くすな。笑顔を絶やすな。笑い続けて、と。」


 その話をしている間おじさんは泣き続けていた。私も知らぬうちに涙が流れていた。私はその少女の名前を聞いた。そして帰ってきた返事は紛れもなく、純恋、姉だった。私はおじさんに言った。私は姉と私を助けてくれた方なのですね。と。おじさんはその真実を知り、私以上に泣いた。そしておじさんは謝り始めた。私はその理由が分からず聞いた。その内容はとても悍ましいことだったのだ。


 「君の姉は、私の娘を守ろうと最後まで戦ってくれたよ。これは警察から聞いたんだが、君の姉は家で腹から血を流し亡くなっていたらしい。そしてその日私の娘は君の母親に轢かれた。私の家に来ていた事がバレた純恋は母が殺しに行くと言って止まらないことから、止めようと体を張って戦ったらしい。瓶で母親の頭を殴ろうとしたのだが、まともな生活をしていなかった純恋は力など強くなかった。だからあっけなくそれを止められ、逆に頭へと瓶で殴られたそうだ。そして頭から血を流し倒れた純恋は母親に腹を刺されたが、最後の力を振り絞り顔に瓶の破片を刺したらしい。だが、それのせいで怒りをかい何度も何度も刺された。そしてこの様なことになったのは全て私の娘のせいだと言い、車で轢いたのだ。だが、新聞には全然違う内容が書かれており、私は絶望した。それは十四年前の話だ。当時君は三歳だ。」


 私はその話を聞き、母の顔にあった傷について知る事ができた。それに姉のことも。私は教えてくれた感謝を伝えようとした瞬間、おじさんが倒れた。そして警察官の方々が急いで駆け寄ると病院へと運ばれていった。私は帰ることとなった。電車の中は一定のリズムで揺れ、まるで揺籠の様だ。姉の願い。微笑みを無くすな。笑顔を絶やすな。笑い続けて。その言葉を忘れない。だけど、私は笑えない。姉は自分をどんだけ殴る母親でも、最後まで愛していたんだなとわかる。私がもの心つく頃に説明した母は都合がよかっただろう。母のことを姉が愛していたことを理解していたのか。それを私は知りたかった。母を許さない。私は姉と正反対だ。姉が願っていた様な妹、彩芽にはなれないかも知れないけど。私はありのままに生きます。だから、私がこれからすることで責めないでほしい。私がすることを応援してほしい。そう心に決めた私は電車から降りる。姉はきっと、いつまでも私のそばにいてくれるはずだ。その時、姉が微笑んだ気がした。

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