第3話-花畑-

 次の日、私は住まわせていただく変わりに家の家事をしようと考えた。それにしても男性なのに片付いた部屋だ。私が出来ることあるのかなと思った。だが、一つ私は気づいたのだ。冷蔵庫にはエナジードリンクだけがあることを。それに、台所にも食器は見つからず缶だけがそこにある。そして私は決めた。料理をすることを。だが、冷蔵庫には材料が無いため一から買いに行くこととした。椿さんはまだ寝ている。だから、私が家を空けても安心だ。そう考えたのだ。なるべく音が出ないように財布と鞄を持つと私は靴紐を縛り外へと足を踏み込んだ。そしてスマホのナビを頼りに徒歩二十分でモリモリスーパーへと着いた。私はそのままスーパーの中に入ると、今日のご飯は何にしようかな。と考えていた。そして今日の夜ご飯はカレーと決めた為、人参、ジャガイモ、玉ねぎ、肉、トマト、にんにく。次にサラダの材料の、レタス、きゅうり、パプリカ、材料を探し買い物が終わると私はスーパーの外へと出た。そして帰ろうとスマホを出したのだが、充電がもう無くなっていた。私はスマホを何度も見返した。だが、うん。やっぱりダメだ。焦り始めた。周りを見渡すも、一つもどこなのかが分からない。とにかく自分の記憶を、頼りに歩き出してみることにした。そのころ椿は目が覚めると私の鞄、靴が無く。少し焦っていた。もう夕方だ。例え出て行ったとしてもこんな時間に出ていくことないのに。いや、まず出ていくなんて。そう思っていたのだ。椿はドアを開けると階段を一段一段降りると、そのまま走り出した。だが、彩芽のことなど見つけられないだろう。なぜなら今、彩芽は泣きながら知らない地区で泣き崩れているからだ。だが、すぐに立ち上がり歩き始めるの繰り返した。そのうち何も無かった夕方で暗くなってきた通り道に光が入ってきた。そして私は壁が黒くなんて書いてあるのか分からないけど、とにかく駆け込んだ。私はきっと警察署なんだと思い走って行った。だが、階段を降りた先には男性しかいなかった。私は呆然と立ち尽くす。その頃椿は一人で探すには時間もないと、仕事仲間に捜索の手伝いをしてもらおうとスマホを取り出そうとしたが、勢いで出てきてしまった為、スマホは今頃家で一人ぼっちだ。椿は呆然となったが、すぐにまた走り出した。そしてスマホが無いならば直接あって頼むだけ。そう思い仕事場に入った。だが、ドアを開けた先にいたのは、オドオドしながら泣きそうになっている彩芽だった。


 「彩芽?お前何してんだよ」


 椿が聞くと彩芽は目の前に立っていた男性を突き離すと椿に抱きついた。そのまま椿の胸の中で泣いている。それを見た椿は仲間達に事情を聞いた。彩芽が泣きながらうちのお店。ホストに入ってきたと。それでうちのホストの仲間が未成年か聞くがオドオドし、何も言わなかった時に俺がきたと。


 「椿さんって、何歳何ですか?」


 私はそう聞いた。そして椿さんは二十歳だと言うことを知った。私はものすごく驚いた。なぜなら私と同じ十七歳だと思っていたからだ。私はキョトンとした顔をしていると椿さんは笑った。そのまま私に、帰ろ。と言い店を出た。その後は話すこともなくただ無言だ。オレンジがかった空はとても綺麗だった。そんな時、丘の下に小さな花畑があるのが見えた私は思わず走って降りた。そんな私の足音で気づいたのか、丘へと下りる姿を見たのだ。そして私の後をついて行き、目に入ってきたのは私が花畑で蝶の様に柔らかく舞う、踊っているものであった。それを丘の上から見る椿さんはつい見惚れてしまった。そして椿さんの気配に気づいた私は我に戻り舞をやめ、耳が赤くなった。そんな時椿さんは言った。


 「そこにある、一本の花ってなんて名前だろ。」


 私の背後を指差す指を私は追いかけ背後に振り向くと、そこには夕日と同じオレンジ色のマリーゴールドが咲いていた。美しく満開へとなっていた。だが、一枚花がない。それを見つけた私は言った。


 「これは、マリーゴールド。花言葉は…。分かんないです。行きましょう。お家に帰りましょ。」


 あのマリーゴールドは私だ。花言葉は知っている。だが、椿さんは知らなくていい。私は丘の上へと上がると椿さんのところへと走って行った。そして笑った。夕日の下で私は今日も笑います。椿さんも笑います。二人一緒に夕日の下で笑います。そして買い物袋を持ち、歩き出します。その時私は分かってしまった。心にあったモヤモヤが解けたのだ。


 「あの、椿さん!私、私。カレー作るのに、カレールー買うの忘れてました。それにお米も!」


 私が焦りながら言うと椿さんは鼻で笑い、スーパー行くか。と言い買い物袋を持ってくれた。そして歩き始めた私たちはまるで、夫婦の様だと周囲の人々は思っていたのでした。スーパーへ行き、カレールー、米を買い家に着きました。そして今こそ私の料理のセンスが試される時!基本的家では自分のことは自分でしていた為、家事などは出来る方だと思う。だからこそそれを発揮出来る環境にいれて幸せだ。そして料理を始めて一時間三十分ほど経ち、カレーは出来た。とてもいい匂いがしてくる。自分で言うのも何だが、めちゃくちゃ美味しい。カレーを煮込んでいる間にサラダも作り栄養満タンだ!そして椿さんはカレーを一口食べた。あまり人の手料理を好まない椿さんの口は、私のカレーを次から次へと口に運んでいた。それを見た私はホッとなった。サラダも食べ全て完食してくれた。そして椿さんは目を輝かせながら言った。


 「俺、彩芽の手料理ならなんでも食えそうだ。こんな料理上手な彩芽が家に来てくれてマジ幸せだ。」


 これが人に喜んでもらえた瞬間なんだと初めて感じた。私はやりがいを感じた。それと共に私の料理を笑顔で食べてくれる椿さんの顔が私は好きだ。私は少し心を開けてきたのかなと思っている時ふと思い出したのだ。


 「私、おじさんの面会に行こうと思います。どうしても私、おじさんの人生を知りたいんです。」


 私がそう言うと椿さんも行くと言ってくれたのだ。私は嬉しくなったと共に一緒に出かけられることが嬉しかったのだ。そして食器を洗い終わりいろいろしているうちに時刻は十二時を回っていた。寝る前に少し散歩に行こうと思い立ち上がると靴を履き外に出た。そして空に輝く星と共に、夜の主役の月を見つめていた。そして隣に椿さんはきた。椿さんの横顔はとても綺麗だった。そして再度月を見返し数分経った頃、背後から声が聞こえてきた。


 「あれ?その見た目って、学校中退した鶴野さんかなー?」


 その声は紛れもない浅見の声だった。浅見は私を鼻で笑っている。私は唾を飲み込むと共に、何。と聞くとしばらく私と浅見と椿さんの空間はとても静かだった。よく見ると浅見の格好はとても純粋な少女だとは思えない格好であった。私はゆっくり息を飲み込む。そして浅見は口を開いた。

 

 「鶴野さん。そこの男性どなた?私に紹介してちょうだい。私たちお友達でしょ。お友達の言うこと、聞けるよね?」


 浅見は椿さんを狙っている。この暮らしを、今の幸せを奪われたくない。だから私は何も言わずに立ち尽くす。だが、満面な笑顔で笑っていた浅見も徐々に時間が経つにつれ、笑顔は真顔へと変わって行った。そして私の目の前へと夜の道に足音を響かせながら来るとそのまま厚底の靴の裏で私の腹を蹴った。それと共に笑いながら言った。私の靴が汚れる。と。私はあの日のことを忘れていない。だから、もう騙されない。例え友達扱いをされたとしてももう動揺などしない。椿さんは私の元へ行こうとしましたが私はゆっくりと立ち上がると共に椿さんの足も動きを止め、その場に立ち尽くした。そして私は立ち上がると面と面を合わせて浅見に言った。


 「私達いつ友達になったの?あの日のことを私は忘れたことは無い。ずっと鮮明に覚えている。もう一年前の私じゃない。」


 私がそう言うと浅見の顔は真顔から怒りの顔へと変わり、再度私の腹を目掛けて蹴ろうとしたが私は避けると共に浅見の首を地面へとおさいつけると共にその体の上へと乗った。浅見は手もなしを使えずただ魚の様に暴れるだけだ。そして浅見が動かなくなった頃私は椿さんの元へと行った。そして浅見は立ち上がると共に何も言わずに厚底を置いてどこかに行ってしまわれた。その靴を棒でツンツンと突いていると椿さんは言った。


 「彩芽カッコよかったな。」


 私は小さい頃からたった一人の叔父に格闘技を教わっていた。そのため最低限自分の身は守れる。その時私は思ったのだが、もしかしたら、不幸の先には幸せがあると言うことを教えてくれたのはその叔父だったのかもしれないと。だが、深く考えるのはやめておく。どれだけ答えを探そうと見つかりはしないし、叔父はこの世へもういない。私は天を見上げ涙を引っ込ませると、私ら前を向いた。椿さんは私を見ながら言った。


 「そろそろ帰ろ。」


 その言葉は私に居場所があると言うことを、なによりも教えてくれる言葉であった。

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