当麻君かっこいいぃ
「……か、かっこいい……」
テレビのなかのアイドルをガン見したまま思わず呟いてしまったら、カレーをがっついていた悠君は顔を上げた。
「もしかして、こいつを見たかったわけ?」
「ごめん! ちょっと、あとちょっとだけ黙ってて!」
ブーブー騒ぐかなぁと思ったけど、悠君は意外に素直にテレビ鑑賞に協力してくれた。
「まさかリアタイできるとは思わなかったなー、悠君のおかげだよ」
「そんな幸せそうな顔で感謝されてもなんかちっとも嬉しくないんですけど!」
当麻君の出番が終わったから、ほくほくした気分でカレー皿に目を向けると、人参のタワーが出来ていた。
「もう、好き嫌いしちゃダメでしょ!」
サラダの方にもトマトがこんもり。
「沙羅がいけないんですぅー」
悠君はふて腐れている。
「だってさー」
「よそ見すんなって。俺だけ見とけ!」
「あれ、もしかしてやきもちだ?」
かなり照れくさかったからいつものようにふざけたら、悠君はプンプンしたままたった一言。
「そうだよ、悪い!?」
そう言い残して皿を手にキッチンに消えてしまった。
……やばい。拗ねた顔にキュンときた。なんて言ってる場合じゃないな。きっと機嫌を損ねちゃった。
さっきのハプニングにあんなに親身になってくれたのに、からかったりするのは態度悪かったな。そう反省してたら、悠君はすぐに戻ってきた。
「ねぇ、もう鍋空っぽになっちゃった。カレーうどんも食べたかったのに」
なんだよ! お代わりしに行っただけかよ!
「沙羅は料理が上手だからいいお嫁さんになれると思うな」
「そ、そぉかな。カレーなんて誰にでも作れると思うけど」
我ながら可愛いこと言えないなぁ。
なのにデレちゃうなぁ。
照れた顔を見られないようにうつむいてたら、突然悠君の両手が私の両ほっぺたを包んだ。
強引に顔をあげられて、目の前の端整なお顔と目があった。いきなりのことに動揺しまくって、目をそらすこともできない。
「えと……」
「今日この日のこと、ちゃんと覚えといて?」
「は、はい?」
動揺しすぎて瞬きバチバチ。
そんな私の顔を真顔でみつめて悠君はこう言ったんだ。
「いつか『悠介しか見えない』って言わせてやるから。ちゃんと覚えとけよ」って。
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