こわがり
リビングのテレビがついていることに気がついて、悠君はなぜだかひどく納得した顔をした。
「あー、もしかして見ちゃった? あれの予告」
すぐそばまで来て屈み込むとそう言って苦笑した。それにうんうん頷くので精一杯。もう泣きそうなんだもん。
「あれネットでも予告怖すぎって話題になってたんだよ。うちのクラスでもみんな騒いでたもん。最後暗転するやつだろ? でもあそこに映るのはテレビを見てる自分の影なんだよ。ね、ネタバレしちゃえばさ……」
悠君は頭をタオルで拭きながらふっと表情をゆるめてため息をついた。
「やっぱ怖いか」
「……こわ、こわかったぁぁぁ」
「だいじょぶだって。こうなると思ったから俺今ここにいるんだし」
思いがけない言葉にビックリした。
「ちっちゃいときから沙羅は怖がりだったもんな。心霊番組なんかうっかり見たらパニックだったじゃん」
「そんなこと、覚えててくれてたの?」
「あたりまえ。ね、だから一緒にカレー食べよ。お腹と背中がくっつくぞー」
悠君……。
頭よしよししなくていいから早く服を着てー!
「悠君あのね、私Mフェス見たいの」
勇気を出してTシャツを着た悠君の腕を掴んだ。
「それならもう始まるよ?」
「お風呂にも入りたい!」
「入りなよ。ん?」
怖いからお風呂に一緒に入ってとお願いするのはどう考えても無理だし、でも部活でベタベタの汗は流したいし、シャンプーするときの背後は怖いし、でも
一人でお風呂に入るのが怖いんだと知られるのもなんか微妙に恥ずかしい。あぁもうどうすればいいの!
葛藤に苦しむ私をじーっと見ていた悠君は、無言で私を引っ張った。
「ここで待ってるから、行っといで」
浴室のドアの脇に座り込んでスマホをいじりだした。もしかして私の気持ち、わかってくれたの?
「えーと、一曲目がchoiceで二曲目が東野マナで三曲目が山下当麻で四曲目が……」
「悠君、2分! 2分で出るから!」
「それほんとに女子の発言?」
悠君が笑ってくれたから、さっきの恐怖感がだいぶ和らいだ。
心のなかで悠君ありがとう、やっぱり大好きって叫んで、意を決してシャワーを浴びた。
悠君の優しさを無駄にはしない! 当麻君に間に合わせて見せる!
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