ライバルは美少女


でも。晩御飯どうしよう。

悠君は何食べたいかな?



今まで通り、一緒にご飯食べるくらいは許されるよね? ふたりで帰りにスーパーに寄っちゃうかな。それはダメかな。

考えただけでドキドキするな。



それに明日は土曜、週末悠君は予定あるのかな? 今夜は一緒にいられるのかな?



そんなことを考えてるとワクワクしてしまって、あんなに不調だったはずなのにサービスエースがんがん取っちゃった!

京ちゃんのボレーもそりゃあ、決まる決まる。



「昨日寝てない人とは思えない」

「ほんと、丈夫な自分が嫌になる」




フィアンセがいるってわかったおかげで、ちょっとふっきれたところもあるのかも。いやぁ、いい汗かいた。



みんなで片付けを始めてからは、体育館のほうが気になって気になって仕方なかった。

バスケ部もそろそろ終わりそうな気配がしてる。



体育館ばかりが気になって注意散漫だったからか、活動記録帳を教室に忘れてきてることに気がついた。さっさと取りに行かなきゃ。



「ごめん、ちょっと抜けるけどすぐ戻るから」

「大丈夫でーす。あとやっときます」



しっかり者の後輩に気を使わせてしまったから、急いで教室へ向かった。あわてていたせいで、途中、教室から急に出てきた女の子とぶつかりそうになった。



「ごめんなさい!」

「いえ、こっちこそすみません」



彼女の手からこぼれてしまった花を一輪、拾った。

可憐な小さな白い花。ここ、華道部だっけ。最近の華道部は、フラワーアレンジメントもやってるって聞いたことがあった。



「折れなくてよかった、はい」


拾った花を手渡した。


「……ありがとうございます」


受け取った子と、軽く会釈して別れるはずだった。


「あ!」


でも私達は、お互い同じ声をあげた。その子が、悠君にラブレターを渡した女の子だったから。

たぶん彼女も、私を悠君の友達として認識してるはず。ものすごく、気まずい。


「あのー、じゃあ」


笑ってみたけど顔の筋肉はたぶん強ばってる。とにかく今は去るしかない、それなのに。



「昨日わたし……佐野先輩と一緒にいました」

「え……?」



その子は、大きな瞳で私をじっとみつめたまま、その場を動かなかった。それはまるで戦いを挑む時のような、揺るぎのない強い視線だった。



そういえば「フィアンセ」というワードにびっくりしてあまり気にしてなかったけど、あの時悠君は「断った」じゃなく「断るよ」って言った気がする。

ということは?

うそだよね?

悠君……彼女のこと、キープ、してる?



ストレートの長い黒髪のせいか、肌の白さがまぶしい。彼女は、お花みたいにキレイな女の子だった。

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