第2話*同居はじめます!?


「というわけで、しばらくママは家を開けますので」


「なになに、どーいうこと?」



それは帰宅して3人で食卓を囲んでいるときのことだった。



「おかわり!」


「だから、パパがあっちでギックリ腰やっちゃって、身の回りのことが大変なんだって」


「おかわりっ!」


「だからってさ、私のこと置いてっちゃうの?」


「あんた意外としっかり者じゃない」


「だからってさー」


「……おかわりは自分でやるからもういいですっ!」



今はそれどころじゃないんだってば!


「あんたの課題点は早起きくらいでしょ」


「沙羅食べないならハンバーグちょうだいね」


「早起き……うん、まぁ、うーん」



ママがいなくなるってだけで、こんなにテンパると思わなかった。



「大丈夫よ、今だって悠君が起こしてくれてるじゃない。1週間くらいで帰れると思うし」


「ポテトサラダもちょうだい? 代わりにトマトあげるね」


「うーん、そっか。そだね。はぁぁ」




深い深いため息をついてテーブルに目を向けた。


「なにこれ!」


いつの間にかお皿の上はミニトマトだらけ!


「私のハンバーグどこ? サラダもなくなってるし!」


「ちょうだいって言ったらうん、て言ったよね?」


私の夕御飯はすでに悠君のお腹の中みたい。


「でもねぇ、年頃の女の子ひとり残してっていうのは実際ママも心配なのよね」


「だよね、普通そうだよね!」



ひとりじゃこの家は広すぎる。

夜中に物音とかしたらどーすればいいのかわかんない。絶対パニックになる。

でもパパのことも気になる。

パパはずっとひとりぼっちなんだし、身体の自由まで奪われてるんだもん。可哀想。



「……番犬として悠君置くか」

「えっ、俺?」

「無理無理! それはそれで困るって!」



あり得ないあり得ない。

マンガのなかでしかあり得ない展開だよそれ。


「ひとりよりはマシじゃない? ねぇ悠君。沙羅のこと任せて大丈夫よね?」


「うーん、別にいいけど」


「悠君! まず犬扱いされてることに腹を立てようか?」


「あっ、ほんとだ! ひっど!」


なんだこの能天気! 凄みのなさ!


「あとさ、ママの口車に乗せられちゃダメだよ。無理なら無理って言わなきゃ。ひとりの時間も大事だもんね?」



通うくらいならよくても、住むのは悠君的にも困るはず。だって私達、高校生の男女だもん!

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