可愛くなれたら
「ねぇ、沙羅ママにイケメンって言われちゃった。沙羅もそう思う?」
朝でも残暑は厳しいのに、なんで悠君はそんなにいつもご機嫌なんだろう。しかも自分が美形だって今まで自覚してなかったとかあり得ないよ。
「……学校のみんなはそう言ってるよ」
私はボソッと呟いた。
「みんなじゃなくて、沙羅にそう思ってもらえなきゃ意味がないじゃん。俺は沙羅にだけモテたいのに!」
「はいはいそうですか」
「ほらね、全然モテない!」
無表情を装って会話を流してみても、ほんとはずっと心臓が跳ねていた。
悠君が廊下を歩くだけで、あちこちから女子のピンクの声が上がるのに、それが聞こえてないはずない。
誰の目から見ても悠君はイケメンでしかないのに。それなのに、太りたいとか言うんだもん。ほんと信じられない。
「そっかぁ、沙羅はイケメンより王子様が好きなんだっけ」
「イケメンか、王子様かって……」
一瞬悩んでみたものの、アホくさくなってやめてみた。
「王子様がいいって言うなら俺また馬に乗ろっかな? 日本だと馬って車と同じ扱いだった?公道走れるんだっけ?」
「いやそんなこと知らないよ」
何の話してたんだっけ?
マイペースな悠君と話してると、時々意味がわからなくなるんだよね。
「なんか……怒ってる?」
「別に怒ってないもん」
なんて言いつつ、悠君の先を歩いた。
「あっそうだ! 馬ってね~」
ほらね、ふわふわと勝手に話し出す。
ほんと人の話を聞かないんだよね、彼は。
「あれって二人で乗るときは同乗者を前に座らせるんだよ。ちゃんと背中側にいて落馬しないように守ってあげるのが王子様ってことなんじゃない? バイクなんかよりずっといいな。大事にしてる感伝わるし」
「ねぇ、女子高生が馬に乗せられて喜ぶと本気で思ってる?バイクのほうがいいに決まってるでしょ」
だってあれって好きな人にしがみついていいんだもんね?
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