冗談だよね?

「そういう子供っぽいの、もうやめようよ。私達もう高校生なんだし」



そう言い返したら悠君は顔を上げて、私に向き直った。



「沙羅には俺が子供に見えてんだ?」



そんなわけないじゃん。

逆だからおろおろするんじゃん! でも確かに膨れっ面だけは、小さい頃から変わらないかも。だからこう言ってやった。


「うん。やることにデリカシーないし」


平静を装って立ち上がると鞄を手に取った。もうこれ以上悠君に振り回されたくないし、無駄にドキドキしたくない。



ふたりきりの空間ってだけでも変に意識してしまう。もう耐えられないから早く下に降りちゃおう。



「俺には沙羅の方が子供に見えるけどなぁ」



思いがけず並んで隣に立つと、まざまざと見せつけられる身長差。

目線の高さには悠君の胸がある。

着崩した制服からのぞく、男の子らしい首のラインやなめらかなカーブの喉仏。


ほんとは知ってるんだ。広い肩幅も、いつの間にか逞しくなっちゃった胸元も、ほんとは意識しちゃって仕方ないの。



小さくてふわふわの男の子じゃなくなってしまった悠君のまえで、どんなふうに振る舞ったらいいか全然わからない。



いつも、戸惑ってひとりだけあたふたして、1人で勝手にうろたえて……。

隣で君の顔を見上げられたことなんかない。



「沙羅はいつまでたってもちっちゃいね」

「わかんないもん、これから伸びるかもしれないもん」

「いやたぶん変わらないでしょ」


ばっさり断言されてしまった。


「悠君は変わりすぎ。見た目だけ」


そう、見た目だけ!

中身は子供のまんまで私の気持ちを弄ぶデビル君!



「もしかしてさ、この見た目がダメなの?

俺昔チビだったもんね」


「うん、私より全然ちっちゃかった。あの頃の悠君は可愛かったなぁ」



私が守ってあげなくちゃと思うほどに、頼りなくて泣き虫だった。あの頃はよかったな。だって、同じ目線で笑い合えていたから。



「そっか、そっちのがタイプかぁ。デカいと威圧感があるってことだ?」

「いや、そうじゃなくて……」



そうじゃないよ。

正直に言うと、今の悠君は眩しすぎるんだ。いや、眩しいを追い越して……まばゆい。

しどろもどろになると、悠君は慌てて私から離れた。

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