第7話 君の名を

「ところで君の名前は?」


康信が尋ねる。


「そんなのでレディのハートは落ちないの。

 お歌に合わせて名前を聞いてくれたら答えるよ」


康信は一瞬考える。


「迷子の迷子の子猫ちゃん。

 貴方のお名前なんですか?」


「お兄さん面白いね。

 私の名前は真子」


「真子ちゃんね」


「でも、こういうときは自分から名乗るべきなの」


「そうだね。

 僕の名前は岡林康信」


「やっすんだね」


康信は初めてそのあだ名で呼ばれた。


「そだね、やっすんだ」


「やっすん。合体するの」


「合体?」


真子は戸惑う康信の背後に周り飛びかかる。


「やっすん号出発なの!」


「やっすん号発進だー」


康信はそのまま走る。


「ちょっと待った!」


女の子が康信を呼び止める。


「まま!」


「……まま?」


康信はその少女の方を見る。

その少女はどう見ても中学生。

康信は何かを納得した。


「小学生が母になる時代だし……

 そんなのもありか」


「ちょ!!違うよ!

 私の名前は真美!

 真美がマミーでままなの!」


真美がそういって焦る。


「ままなの。

 ままはお姉ちゃんなの」


真子はそういって笑う。


「……そっか」


「信じてないでしょ?」


真美がそういって康信に言う。


「信じるよ」


「本当に??」


真美が口を尖らせる。


「うん」


康信はまだこのときは知らない。

真子が美少女コンテストで一位を取るほど美人なことを。

まだ何も知らない。

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