第6話 僕はデブ。でもただのデブじゃない

――とある河川敷


今、目の前で仲よさげに歩いている男女がいる。

でも知っている。

でも僕は知っている。

あのふたりのことを知っているからだ……


男の名前は釜戸恋次。

通称は、れんれん。


女の子の名前は根津聖子。

あだ名はキヨちゃん。


可愛いような可愛くないような犬。

多分雑種のタマ。

犬なのにタマ。

ちなみにメスだ。


ふたりは付き合ってはいない。

聖子は付き合っている男子がいる。


その男子の名前は、水島紘。

周りからはヒロくんという名前で知られている。


これを語っている僕は誰かって?

別にお茶を飲んでいるわけではないお茶の間のみんなは気になっているだろう。

いやもしかしたら気になっている人なんていないかもしれない。

でも言っておく。

僕の名前は岡林康信。

デブさ。

でもただのデブじゃない。

ぽっちゃりさ。

体重は80キロもない。


「うわーーーん」


子供が泣いている。


「どうしたんだい?」


思わず声をかけてしまう。

気持ち悪がられるのわかっているのにな。


「ままはぐれちゃったの」


「え?」


こんな見通しのいいところで?


「おにいちゃん、一緒にままを探して……」


「あ、うん。

 お母さんの特徴はどんなの?」


「お母さんじゃないよ。

 ままだよ」


「そっか、ままさんを探そう」


きっと呼び方にこだわりがあるのだろう。


康信はその程度に思っていた。

康信はあのふたりの行く末が気になるものの。

今はこの子を優先しよう。

そう思った。

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