第3話 放歌高吟

「どんなときだって。

 どんなときも笑ってこれたならー」


オリジナルの歌を歌う恋次。


無限にあふれるその歌。

それはある意味才能なのかもしれない。


そんな歌をYou Tubeに流す恋次。

同時視聴者数は13人。

少ないけど実はすごいやつ。

それが恋次。


外から名曲が流れる。


「さよなら さよなら さよなら もうすぐウチは黒い夏。

 愛したのはたしかに黄身だけ そのままの黄身だけ」


恋次はこの歌が好きだった。

はじめて聞いた時鳥肌が立った。


フライパンで焼かれる半熟の儚さを歌っているからだ。

固くてもダメ。

生でもダメ。

恋次は特にこだわりがある人生は送っていない。

でも、卵へのこだわりは深かった。


「そう思えばいつも僕は思っていた。

 そう思えばいつも僕は願っていた。

 今日だけは我慢せずにCry Baby。

 泣けずに生まれたその生命だから。

 生まれずに消えた生命だから。

 Cry Baby、君は黄身とは違い生きているから。

 Cry Baby、君は今日だけは泣いてもいいんだ。

 さよなら さよなら さよなら。

 もうすぐウチは黒い夏。

 愛したのはたしかに黄身だけ そのままの黄身だけ。

 最後まで半熟でペロリと食べたいのは君だけ」


恋次は歌いたい。

その歌を歌いたい。


歌えばBANされるであろうその世界。

そんな世界で生きている恋次。


この歌を歌っているのは恋次と同じ歳の男の子。

京極きょうごく安志あんじ

もう名前からしてイケメンな存在だ。


そんな彼に密かに憧れる。


放歌高吟ほうかこうぎんな人生を歩みたい恋次なのであった。

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