第34話 信泉の除霊
木曜日の朝、
さくらは3人に聞く
「洋はどうしたの。」
3人は
「分からない。」
と答える
「分からないて何、友だちでしょ。」
3人は答えない。
答えられなかった、おそらく洋は死んでいるのだ。
さくらは涙ぐむ。
朝のホームルームが始まる、担任が洋の死を伝える。
教室内がざわめく。
大和、日向、博人の3人はうなだれる。
さくらは泣き出してしまう。
さくらは今日、洋が元気に登校してくることを、自分のことを好きだと言ってくれることを信じていた。
担任の言葉は受け入れられない。
さくらは楓と日葵に保健室に連れられてゆく。
その頃、大和の父親は日向の父親に電話をする
「佐藤です、昨日のことは日向君から
聞いていると思います。」
「はい、聞いています、残念です、し
かし他に良い方法が思いつきませ
ん。」
「私も考えているところです、木村さ
んに良いアイデアが浮かんだら連絡
をお願いします。」
「佐藤さんと協力して何とかしたいと
思います。」
2人ともお祓い以外に良い考えが浮かばない。
日向の父親はネットで赤壁の家のことについて調べている。
ほとんどが玄関の黒い影と居間のポルターガイストについて書かれているだけである。
しかし、
彼は除霊について考え始める。
彼は祓い屋に除霊を頼むことを考え、大和の父親に電話する
「木村です、考えがあるのですが。」
「どんなことでしょう。」
「祓い屋に除霊をしてもらうのはどう
でしょう。」
「除霊ですか。」
「はい、呪いの元を絶つのです。」
「そうですね、試してみましょう。」
「それでは手分けして、祓い屋を見つ
けましょう。」
2人の祓い屋探しが始まる。
しかし、仕事を受けてくれる人が見つからない、赤壁の家の話をしただけで断られてしまうのである。
昼休み、大和、日向、博人の3人は今後のことを話し合う
「俺は土曜日の夜だな。」
大和が言う
「まだ、お父さんたちが方法を探して
くれるよ。」
日向が言うが、大和は
「洋ダメだったんだぞ、方法なんてあ
るか。」
と頭を抱え込む。
博人が言う
「俺はネットで調べている、助かった
人が居れば何か書き込んでいるかも
しれない。」
「一番奥の部屋について書き込みがな
いんだろ、それはみんな死んだから
さ。」
大和は言い捨てる。
3人は黙り込む。
放課後、3人は別々に帰宅する、仲の良い彼らにとって珍しいことだ。
大和が帰宅すると家に父がいる
「お父さん、どうしたの、仕事は。」
「休んでいる。」
「どうして。」
「お前を助けるためだろ。」
「何をしても無駄だよ。」
「お前が諦めてどうする。」
「そうだね。」
大和の気は晴れない。
日向が帰宅すると父が家でパソコンを操作している
「お父さん、仕事は。」
「休んだよ。」
「どうして、もう助からないんだ
よ。」
「諦めているのか。」
「もう、2回も失敗しているんだ。」
「まだ、方法はあるよ。」
「どうするつもり。」
「除霊をしてもらうんだ。」
「除霊。」
「そう、祓い屋を雇って悪霊を退治し
てもらうのさ。」
「ありがとう、お父さん。」
日向は希望を持つ。
博人は家に帰るとパソコンで赤壁の家について調べ始める。
あいかわらず玄関の黒い影や居間のポルターガイストについてばかりで稀に台所の包丁が飛んでくることについて書かれている。
調べても一番奥の部屋について書かれたものはない。
何時間も調べているうちに一つの書き込みに行き当たる。
書き込みには
これを読んで赤壁の家には近づかない
ようにしてください。
私たち3人は、ポルターガイストなど
にあいながら奥の部屋にたどり着きま
した。
そこで頭の中に響く声を聴きました。
それは1人づつ呪い殺す順番を告げる
ものでした。
私の他の2人は既に死んでいます。
死に顔は恐怖で歪んでいました。
私たちは呪いを解くためにお祓いをし
たり、霊能者を頼ったりしましたが全
て無駄に終わりました。
あの呪いは解けません。
だから赤壁の家の一番奥の部屋には行
ってはいけません。
もうすぐ、私の番が来ます、さような
ら。
と書かれている。
博人は全身の力が抜ける。
書き込みには、お前がした努力は全て無駄だと言われている気がしたのだ。
彼はベットに倒れ込み眠る。
そして、彼は何か恐ろしいものに襲われ恐怖におののきながら死んでゆく夢を見る。
ひどい寝汗をかいている、彼は風呂に入り寝巻に着替える。
再びパソコンを操作する、博人は諦めていない。
金曜日の朝が来る、大和、日向、博人の3人が登校する
大和が謝る
「昨日は言い過ぎた、ごめん。」
「いいよ、俺たちの気持ちを代弁して
くれたんだから。」
博人がいう
「お父さんが祓い屋を探してくれてい
るよ。」
日向が続ける
「俺のお父さんも家で何かやってい
た。」
大和が言う。
日向の父親はネットで検索中、
彼はここ1年程の間に活躍しネットで名を上げ始めている。
日向の父親は信泉に連絡を取る
「木村と言います。お願いがあるので
すが。」
「何でしょう。」
「除霊をお願いしたいのですが。」
「私は高いですよ、それでもよろしけ
れば。」
「はい、赤壁の家での除霊をお願いし
ます。」
「事情があるよですね、お話願えます
か。」
「はい、息子たち4人が赤壁の家で肝
試しをして、一番奥の部屋で頭の中
に声を聞きました。」
「どんな声です。」
「少女の声だったそうです。」
「何を言っていたのですか。」
「最初はお前、次はお前、その次はお
前、最後にお前と言っていたそうで
す。」
「そうですか、これまでに何かしまし
たか。」
信泉は手に汗をかきながら聞く
「はい、お祓いを2回しましたが、住
職が2人とも亡くなってます、火曜
日の夜には私の息子が死にます。」
信泉はかなり厄介な仕事だと思う、お祓いの住職を殺すなど、強力な霊に違いない。
「なぜ火曜日にに死ぬと分かるので
す。」
「既に1人目の子が亡くなっていま
す、3日ごとに息子たちは殺されて
行きます。次は土曜日の夜です。」
信泉は青くなるが
「分かりました、明日の午前中に赤壁
の家で除霊をしましょう。」
「ありがとうございます、午前9時で
どうでしょう。」
「それでは午前9時に赤壁の家の家の
前に集合しましょう。」
日向の父親はホッとする。
これで日向は救われるのだ。
彼は大和の父親に連絡する。
「木村です、祓い屋が見つかりまし
た。」
「本当ですか。」
「はい、土曜日の午前9時に赤壁の家
の前に集合です。」
「分かりました、ありがとうございま
す。」
大和の父親は喜ぶ、これで大和は助かるのだ。
昼休み、大和、日向、博人の3人は話をする。
大和が言う
「除霊て、赤壁の家の霊を消すんだよ
な。」
「でも、一番奥の部屋以外にも霊がい
るよ。」
日向が言う
「今度は除霊について調べてみる
よ。」
博人が言う。
放課後、3人は一緒に下校する。
大和が帰宅すると父親が
「見つかったぞ、祓い屋だ。」
「本当。」
「ああ、指すの午前9時に赤壁の家の
前に集合だ。」
「ありがとう、お父さん。」
大和は希望が見えてくる。
大和は博人に連絡する
「祓い屋が見つかった、明日午前9時
に赤壁の家の前に集合だよ。」
「分かった。」
博人は答える。
日向が帰宅する、今日も父親は家でパソコンに向かっている。
父親が日向に言う
「おかえり、祓い屋が見つかった
よ。」
「本当に。」
「宇久井信泉と言う人だ、ネットで名
をあげ始めている人だよ。」
「ありがとう、お父さん。」
日向にも希望が見える。
博人は祓い屋について調べ始める。
赤壁の家について佐伯哲也と言う祓い屋が重傷を負ったとういう書き込みを見つける。
彼は除霊に成功していれば自分たちが呪われてるわけがないと思う。
土曜日の午前9時前、大和、日向、博人の3人と大和の父親、日向の父親の5人が集まる。
時間ちょうどに宇久井信泉が到着する。
信泉が5人を見ると大和、日向、博人の3人の顔が歪んで見える。
怨霊に呪われていると考える
「呪われているのはこの子たちです
ね。」
「はい、そうです。」
日向の父親が答える。
信泉は赤壁の家を見ると黒い靄に包まれている。
彼はこれは強力な怨霊がいると覚悟する。
彼は家の気配から複数の霊がいることを感じる。
彼は言う
「1時間して戻ってこなかったら、こ
こを引き上げてください。」
「どういうことですか。」
「その時は霊に敗れているでしょ
う。」
「救護隊を呼ばなくていいのです
か。」
「危険ですので誰も入ってはいけませ
ん、必ずここを離れるのですよ。」
「分かりました。」
信泉は指示を出すと、赤壁の家へ近づいて行く。
玄関のドアを開けるとギ~ッと音を出して開く。
カギは壊れており、カギはかかっていない。
玄関に入ると黒い
彼は丹田に力を込めると柏手を打つ。
悪霊はしびれたように動かなくなる。
彼は力を温存している、全ての悪霊を除霊していては体力が持たないのである。
次に居間に入るとソファーが飛んでくる。
信泉がかわすと居間の中央に黒い靄を纏った悪霊がいる。
再び丹田に力を込め柏手を打つ。
悪霊はやはりしびれたように動かなくなる。
台所に入ると、包丁が3本飛んできて壁に刺さる。
1本は彼の顔ギリギリに刺さる。
彼は冷や汗をかく。
台所にも黒い靄を纏った悪霊がいる。
彼は丹田に力を込めると柏手を打つ。
悪霊は金縛りになったように動かなくなる。
信泉は肩で息をする、既にかなりの力を消耗している。
行く手を阻む悪霊でさえかなり強力である。
怨霊が予想外に強力であることを感じる。
彼は廊下で一休みする、体力を回復するためである。
後は3つの居室があるだけである。
大きな気配を3つ目の一番奥の部屋から感じる。
だが一応手前の2つの居室も調べることにする。
背後をとられたくないからだ。
1つ目の部屋に入る来たかとが何もない。
2つ目の部屋に入るがここにも何もない。
一番奥の部屋はかなり大きな気配がする。
信泉は丹田に力を込め、ドアを慎重に開く。
すると万年筆が飛んできて、彼の左目に刺さる。
彼は万年筆を抜き取ると、床に倒れる。
そこに机が飛んでくる。
机は信泉をつぶす。
彼はあばら骨を痛め血を吐く。
部屋の中では黒い靄に包まれた怨霊が笑う。
彼は呼吸を整え、丹田に力を込め柏手を打つ。
怨霊の靄がちぎれる。
怨霊から笑いが消える。
机が再び浮き上がり、信泉の上に落ちてくる。
彼にさける余力はない。
彼は机につぶされる。
呼吸を整え力を取り戻そうとする。
怨霊は繰り返し机を倒れている信泉にぶつける。
朦朧とした中、丹田に力を込まようとする。
しかし、攻撃は終わらない。
彼は意識を失う。
ついには信泉は息絶える。
5人は信泉を待ち続ける。
大和と大和の父親にとっては彼が命を握っているのに等しい。
30分経っても彼は出てこない。
そして1時間が経つ
「うそだろ。」
大和は思わずくちに出す
「頼む、出てきてくれ。」
大和の父親は頭を抱える。
日向の父親はかける言葉を見つけられない。
5人は1時間経っても動こうとはしない。
1時間半経った頃、博人が黙って家に帰る。
次に日向と日向の父親が家に帰って行く。
大和と大和の父親は最後まで残っていたが諦めて帰って行く。
大和と父親が帰宅して、母親が除霊に失敗したことを知ると
「どうなるよ、大和は死んでしまう
の。」
と泣き出す。
2人は黙ったままである。
かける言葉がないのだ。
夕食の後、大和は言う
「お世話になりました。」
「バカなこと言うな。」
「でも、もう助からないよ。」
「死なないで、お願い。」
母親が泣きつく。
大和は自分の部屋でその時を待つ。
夜10時頃、大和の部屋の床に黒い穴が開く。
大和はついに死ぬ時が来たかと思う。
穴から2本の手が出てくる、手は青白く小学生の高学年くらいの小さな手である。
穴から引き続き腕がズルズルと出てくる、短く細い腕だ
彼は禍々しさに思わず叫んでしまう
「うわああぁー」
叫び声に両親が大和の部屋に駆け付ける。
彼は床を指さしているが、両親には見えない。
大和は声が出なくなり、動けなくなる。
呪いは止まることなくズルズルと出続ける、黒髪のおかっぱ頭が出てくる。
顔は少女の顔をしているが青白く、目は黒い虚空になっている。
口は半開きで
「ああああああ」
とうめき声を出す。
さらに肩、胸と続けて出てくる。
両親はそこにないかいるのだとは思うが見えず、何もできない。
父親が救護隊に連絡する。
少女の形をした呪いは足まで穴から出る。
呪いは立つことも四つん這いになることもなく腹ばいのまま大和の方へ這いずっていく。
手が彼の足に触れる、手は冷水のように冷たい
「もうやめて。」
母親は大和に縋り付く。
呪いの手が彼の足を掴む、さらに体に掴まりながらズルズルと上がって来る。
恐怖に大和の顔が歪む。
そして、呪いの頭が彼の顔の所へ来る。
黒い虚空の目が彼を見る。
彼は魂を抜かれるように倒れる。
母親は叫ぶ
「大和、返事をして。」
しかし、返事はない。
救護隊が到着するが既に手遅れである。
両親は途方に暮れる。
夜11時頃、日向の父親から大和の父親に電話がかかって来る
「大和君は大丈夫ですか。」
「大和は死にました。」
「冥福をお祈りいたします。」
日向の父親は肩を落とす。
もうどうして良いのか分からないのである。
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