第29話 記憶
「ありがとうございました。」
「どういたしまして。」
沙也加さんはいい笑顔で咲子に請求書を渡す。
咲子は請求書を見て青くなる。
みおが咲子に聞く
「どうしたの。」
「これ。」
咲子は困ったように請求書をみおに見せる。
みおは自分の時より0が2つ多い請求書に驚く。
沙也加さんは笑顔のままで言う
「今回は命がけの仕事だから当然でし
ょ。」
みおは沙也加さんはお金に厳しいと思う。
咲子は父親に電話し事情を話し代金を払ってもらうことになる。
父親からは何か条件を出されたようで咲子は涙を流している。
美月は運転手付きの車で家に帰り、離れへ行く。
「私がいない間、何かありました
か。」
「いえ、何もありません。」
「そうですか。」
「赤壁の家の件、お疲れ様です。」
「1回目の時、樹が行って正解でした
ね、他の者なら命を落としていたで
しょう。」
「ありがとうございます。」
「もう、家長代理に戻りなさい。」
「拝命しました。」
「純教は惜しかったですね。」
「残念です。」
「彼の実力がよくわかりました。」
「沙也加はどうですか。」
「今回、たすく様がいなければ、死ん
でいました。」
「たすくですか。」
「ええ。」
「婿に迎えてはどうですか。」
「沙也加が離しませんし、たすく様も
惚れているようです。」
「五條の力なら何とかなりましょ
う。」
「そうですね、愛はいりませんか
ら。」
「ではそのように。」
「待ちなさい。」
「今はよいです、私は妾になろうと思
います。」
「妾ですか。」
「はい、実さえ手に入ればいいので
す。」
「あの力は貴重です、手元に置いてお
いた方がいいのでは。」
「沙也加の手元にあれば問題ありませ
ん。」
「あの2人を手に入れるつもりです
か。」
美月は微笑む。
咲子はみおの下宿に泊まる
咲子がみおに言う
「みお、
しょ。」
「何のこと。」
「私には教えて欲しかったよ。」
「何のことか、わからないわ。」
「そういうことにしておきましょ。」
みおは
咲子に話しても悲しませるだけだと思っている。
翌日、咲子は
坂井町ではなぜか赤壁の家について噂をするものが居なくなる。
一番奥の部屋についても人々の記憶から消えている。
咲子が家に帰ると父親に呼び出される。
父親は咲子に
「こんな多額の請求何に使ったん
だ。」
「お父さん、説明したでしょ。」
「そうだったか。」
「赤壁の家の件よ。」
「赤壁の家、なんだそれは。」
「心霊スポットの赤壁の家よ。」
「どこにあるんだ。」
「忘れちゃったの。」
「まだ、もうろくしていないぞ。」
咲子は不思議に思う。
咲子は健二に電話する
「高校3年生の時の肝試し覚えてい
る。」
「何のこと。」
「赤壁の家の一番奥の部屋よ。」
「聞いたことのないよ。」
「あなたたち肝試しで居間まで行って
ポルターガイストストに遭ったでし
ょ。」
「知らないよ。」
健二は本当に覚えていないようである。
咲子は数人の友人に電話するがみんな記憶がない。
翌日、咲子は何か忘れているような気がしたが思い出せずにいる。
それから数日後、みおから電話がかかって来る
「咲子調子はどお。」
「いいよ、どうしたの。」
「呪いでショック受けていたから大丈
夫かなと思って。」
「呪いって何。」
「赤壁の家の一番奥の部屋で受けた呪
いよ。」
「赤壁の家なんて知らないよ。」
「冗談言っている。」
「まじめだよ。」
「忘れちゃったの。」
「何のこと。」
咲子も忘れている。
赤壁の家に少女の霊が迷い込む。
少女の霊は一番奥の部屋に入り込む。
するとその部屋から出られなくなる。
部屋は少女の霊にある少女の記憶を見せる。
霊は抵抗し部屋から出ようとするが無駄に終わる。
そして繰り返しある少女の記憶を見せる。
そして少女の霊は染まっていく。
家に閉じ込められ陰鬱とした気持ち、自分の生まれを呪う気持ち、誰かが連れ出してくれる期待が少女の霊の中で繰り返される。
霊体は黒くなっていく。
さらに顔は青白くなっていく。
もう、少女の霊に抵抗する力はない。
目が黒い虚空になる。
しかしまだ小さい。
さらに家に閉じ込められ陰鬱とした気持ち、自分の生まれを呪う気持ち、誰かが連れ出してくれる期待が少女の霊の中で繰り返される。
霊体は黒い靄を纏い始める
赤壁の家の居間で迷い込んだ男性の霊が家に捕まる。
家の妖気に当てられ霊体は黒く染まっていく、ついには黒い靄を纏い始める。
少年の霊が赤壁の家に迷い込む。
玄関では少年の霊が家に捕まる。
家の妖気に当てられ霊体が黒く染まっていく、そして、黒い靄を纏い始める。
女性の霊が赤壁の家に迷い込む。
台所では女性の霊が家に捕まる。
家の妖気に当てられ霊体が黒く染まっていく、そして、黒い靄を纏い始める。
それぞれの力はまだ弱い、力をつけるには時間がかかる。
赤壁の家は、今は息をひそめている。
人々から家の記憶を消して・・・
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