第27話 沙也加の除霊

 赤壁の家は林に囲まれ周りに民家がない、また街路灯がないため、夕やみに黒い影を浮かび上がらせて幽霊屋敷そのものである。

 建物は木造平屋建てだが居間と3つの居室、台所がある。

沙也加さやかさんと中野なかのはそれぞれヘッドライトを付け赤壁の家へ近づく。

そして、2人はキスをする。

すると中野の体が光だし赤壁の家を包んでいた黒いものを消し去る。

みおの目にも赤壁の家が見えるようになる。

中野は、陽の光を発する体質であるが。

自らコントロールできない。

彼が力を発揮するのは、女性に抱き着いたり、キスしたりした時である。

沙也加さんと中野は玄関の扉を開ける、カギは壊れてかかっておらず

ギ~

と音を立てながら開く。

2人は玄関に入る、玄関は広く、黒いもやまとった霊がいる

   「悪霊よ。」

沙也加はペットボトルの水を使って水の刀を作り、悪霊に切りつける、悪霊は避けるが2振り目で切り裂くと霊は霧散する。

 次に沙也加と中野が手をつないで居間に入るといきなり灰皿が飛んできて中野に当たりそうになる。

 居間にも1人黒い靄を纏った悪霊がいる。

 悪霊は、ソファーが浮かせる。

 沙也加は飛んでくるソファを避けながら悪霊に迫る。

 悪霊は後ろに下がるが、彼女は大きく踏み込み水の刀で横に一閃する。

 悪霊は霧散する

   「何人も悪霊がいるんですか。」

   「そうみたいね、悪霊も強力だわ、で

    も主はもっと強力よ。」

中野の質問に沙也加は答える。

 台所へ行くと包丁が何本も飛んでくる。

 とっさに中野が沙也加をかばう、飛んできた包丁のうち1本がたすくの肩に刺さる。

ここにも黒い靄を纏った悪霊がいる。

 沙也加は怒り、悪霊に突っ込むと水の刀で真っ二つに切り裂き、霧散させる。

 刺さった包丁を抜き、沙也加は稲荷の使いからもらった勾玉にたすくの傷が癒えるように願う。

 すると傷口が塞がり、出血が止まる。

廊下に出ると3つ居室がある。

2人は居室を見て回る。

1つ目の居室は何もいない。

2つ目の居室に入るがここにも何もいない。

 しかし、沙也加には3つ目の一番奥の居室からは大きな気配がドアを開ける前からしている。

 霊の気配が分からない中野にも威圧感を感じる。

 おそらく咲子に呪いをかけた正体がいるはずだ。

沙也加は冷や汗をかく、想像していたが気配から強敵なのは間違えない。

中野とつなぐ手が震える。

   「さやか、大丈夫。」

   「ええ、ここが一番危険よ。」

   「分かった。」

沙也加は慎重にドアを開ける。

 すると沙也加の顔を目掛けて万年筆が飛んでくる。

 顔に刺さる直前、中野が手を出して万年筆を受け止める。

 万年筆は中野の手のひらに刺さる。

 中野が万年筆を抜くと、手のひらから血がしたたり落ちる。

 沙也加に怒りがこみあげてくる。

 怨霊は黒い靄に包まれている。

 しかし怨霊は手を緩めない、椅子が飛んでくるのをかわすと壁に当たり壊れる。

 さらに机が飛んできて潰されそうになるのをかろうじてかわす。

 やはり、先ほどまでの悪霊とは力の強さが違う。

 怨霊は笑っている、そこへ沙也加は水の刃を飛ばす、怨霊に当たるが効果は無い。

 しかし、怨霊から笑いが消える。

 そして、怨霊は窓ガラスを割り、破片を2人に向けと飛ばす。

 中野が沙也加をかばい、ガラスの破片を受ける

   「もう、傷つけさせませんよ。」

中野は痛みをこらえて無理して笑う

   「大好き。」

沙也加は中野に口づけをする。

 沙也加にキスをされ中野の体は光り出す。

 光は怨霊を焼き、黒い靄がちぎれていくが消滅させることはできない。

 しかし、怨霊の力は大きく削られる。

 沙也加は全てのペットボトルの蓋を開け、二振りの水の刀を作り出す。

 集中して硬く鋭い刀にする。

 そして怨霊に迫る、しかし彼女の後ろに机が迫っている。

 彼女は右手の刀を盾に変えると角度を付けて机をはじく。

 盾は鋼鉄のような硬さを持っている。

 沙也加は盾で怨霊の顎を突き上げると左手の刀で袈裟切りにする。

 怨霊の傷は治ってしまう、しかし沙也加は、切りつけ続ける。

 切りつけられる度に怨霊の力は削られていく。

 段々怨霊の傷の治りが遅くなる。

 怨霊は黒い靄の中から青白い顔を出す。

 目は呪いと同じ黒い虚空の目をしている。

 沙也加は怨霊を袈裟切りにすると横に回り、顔について出てきた首をはねる。

 怨霊は徐々に霧散していく。


 沙也加は中野に刺さっているガラス片を抜きとる、出血がひどい。

 稲荷の使いからもらった勾玉に沙也加は中野の傷が治るように願いを込める。

 すると出血が止まり傷口が塞がる。

 中野は意識を保っている。

 沙也加はたすくに肩を貸し赤壁の家を出る。

 みおは沙也加さんたちが無事に出てくることを祈っている。

 純教じゅんきょうの時のような思いはもうしたくないのだ。

 自分の無力さを感じる。

 そして沙也加さんと中野が赤壁の家から出てきたことに気づく。

 みおは思わず駆け出す。

 みおは近づいて来て驚く

   「中野君、血だらけじゃないの。」

   「大丈夫、初めてじゃないから。」

中野はみおに言う

   「一条さん早く帰りましょう、まだ終わっていないわ。」

   「でも、中野君が・・・」

   「大丈夫よ。」

そして、2人は服を着替え帰り支度をする。

 そこでみおは中野に傷がないことを見る

   「中野君なぜ傷がないの。」

   「内緒よ。」

中野に代わって沙也加さんが答える。

沙也加は今回、たすくが居なければ死んでいたであろうことを考える。

そして、最近たすくに頼りすぎているのではないかと思う。

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