第21話 良信のお祓い
彼女は父良信に話しかける
「お父さん、お願いがあるのだけ
ど。」
「何かな」
「お祓いをしてほしいの。」
「どうして。」
「友だちが赤壁の家に行っておかしな
声を聞いたのよ。」
「お前たちはまだそんなことやってい
るのか。」
芳美は、この前赤壁の家に肝試しに行き、良信に怒られたばかりである
「ごめんなさい、私は行っていない
わ。」
「じゃ誰が行ったんだい。」
「大学の友だちよ。」
「何があったのかい。」
「友だちは赤壁の家の一番奥の部屋に
行って、写真を撮って私に送って来
たの。」
「そんな馬鹿なことをやっているの
か。」
「話を聞いて、写真に黒い
いて、私はすぐに逃げるように連絡
をしたの。」
「それでお祓いかい。」
「違うわ、その後、頭の中に声が聞え
て来たんだって。」
「何か言っていたの。」
「最初はお前、次はお前、その次はお
前、最後にお前と言っていたそう
よ。」
「今は何も起きていないんだね。」
「はい、でも友達が心配している
の。」
「しかたないなー、明日連れてきなさ
い。」
「ありがとうお父さん。」
芳美は礼を言う。
彼女はLINEで
お父さん、お祓いしてくれるって
ありがとう
明日午前10時に威徳寺に集まって
分かった、4人で行くからよろしく
早苗は安心する。
彼女は
咲子はインターネットで赤壁の家について調べている。
彼女は赤壁の家が県下でも1、2位を争う心霊スポットで、かなり恐れられていることを知る。
調べを続けるが玄関の幽霊と居間のポルターガイストストの話がほとんどである。
ほとんどの人は居間でポルターガイストストに遭い怖くなって逃げ出している。
一番奥の部屋について書かれているものはない。
彼女は不思議に思う、ネットにかかれていないのになぜ一番奥の部屋のことをみんな噂で知っているのかと。
掲示板の書き込みを漁っていく。
台所の包丁の件が書き込まれている。
包丁が飛んできて危うく死にかけたという話だ。
しかし、一番奥の部屋についてはなかなか出てこない。
既に何時間も探し続けている。
空が白み始める頃、咲子は眠る。
今日は9時に早苗の家に集まって、お寺でお祓いをしてもらうので少しでも睡眠をとることにする。
咲子は心配で眠れないと思っていたが、疲れていたのか、直ぐに眠りに落ちる。
日曜日の朝9時早苗の家に彩、恵子、咲子の3人は時間どおりに集合する。
早苗は説明する
「午前10時に威徳寺でお祓いをして
もらいます。」
「これで大丈夫ね。」
彩が言う
「安心はできるわよ。」
恵子が言う
咲子が質問する
「ネットで赤壁の家を調べたの、でも
一番奥の部屋のことが載っていなか
ったわ。」
「どういうこと。」
「あの家は県下でも有名な心霊スポッ
トなのに書かれていないの、なのに
私たち噂で知っていたのよ。」
みんな黙り込む、説明できるものが誰もいないのだ
「でもこの町の人なら多分知っている
よね。」
彩が言う。
考え込んでいるうちに出発の時間が来る。
このことは、後で考えることになる。
4人は威徳寺までバスで移動する。
威徳寺に午前10時前に着く。
芳美が寺で待っている
「おはよー」
「おはよう」
早苗は挨拶をする。
そして、彩、恵子、咲子を紹介する。
5人は本堂に入る。
午前10時、芳美の父良信和尚が来る。
彼は早苗、彩、恵子、咲子を見ると
「君たちは心霊スポットに肝試しをし
に行ってそうだね。」
「はい、そうです。」
「随分、怖い目に遭ったそうだね。」
「はい。」
「これに懲りたら2度としないよう
に。」
「はい、すみません。」
「今からお祓いをします、気持ちを落
ち着けるように。」
「お願いします。」
良信はお経を唱え始める。
しばらくすると本堂の畳に黒い穴が開く。
その穴から2本の手が出てくる。
呪いはズルズルと青白いやせ細った腕を伸ばす。
手はビタビタと穴の周りを探る。
良信のお経が止まる、彼はゆっくりと振り返る、そして呪いに気づく。
彼の顔は恐怖に歪み、叫ぶが声が出ない。
他の5人は何が起こっているのか分からない。
芳美が声をかける
「お父さん、どうしたの。」
返事はないが右手で指さす。
そこは何もない畳である。
彼女はパニックになる
「どうしたの、何が起こっているの、
教えて。」
早苗、彩、恵子も何をしたらよいか分からすオロオロする。
咲子が発作だと思い救護隊に電話する。
咲子がみんなに
「今、救急車を呼んだから落ち着い
て。」
芳美は
「どうしよう。」
と泣きそうである。
咲子がみんなに指示する
「とにかく寝かせましょ。」
5人は良信を寝かせようとするが固まってしまったように動かない。
まるで畳に吸い付いているようだ。
呪いはさらに這い出てくる、頭が出てくる、黒いばさばさの長髪である、目は黒い虚空になっている、口からは
「あああああ」
とうめき声が聞こえる。
さらにズルズルと這い出てくる、やせ細った肩、あばらの浮き出た胸が穴からでてくる。
良信は呪いの強さになすすべがない。
5人は必死に彼を動かそうとするがびくともしない。
呪いは足まで出ると立つことも四つん這いになることもなく腹ばいのまま良信の方へ這いずっていく。
緩慢な動きだが確実に近づいて来る。
呪いの手が彼の足に触れる、それは冷水のように冷たい。
そしてズルズルと足に掴まり、這い上がって来る。
体に掴まりながら這い上がり、とうとう頭が良信の顔の所に来る。
黒い虚空の目は良信を見る。
すると彼は魂が抜けたように倒れる。
咲子が脈をみるが脈はない。
芳美は彼に
「お父さん、起きてよ。」
と泣き出す。
呪いは足からズルズルと穴に入る。
そして黒い穴は消える。
救護隊が駆けつけて病院に運ぶが手遅れである。
早苗が震えながら言う
「あれ何が起こったの、もしかして私
たち死ぬの。」
咲子が答える
「まだ分からないよ。」
「最初は私なんだよ、いい加減なこと
言わないで。」
早苗は興奮する。
「落ち着いて、まだ死ぬとは決まって
いないわ。」
咲子がなだめる。
「どうしたらいいの。」
彩も泣きそうな声で言う。
「霊能者に頼んだら。」
恵子が言う。
「除霊してもらうの?」
早苗が聞く。
「そうよ。」
恵子が答える。
咲子は、人を呪い殺すような霊を除霊できる霊能者が簡単に見つかるとは思えない。
しかし、彼女は口に出さない。
4人は早苗の家で相談することにする。
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