第17話 みおの気持ち 

 木曜日が来る、今夜、あおいの呪いのタイムリミットが来る。

 朝、葵が登校してくるが表情は硬い。

 みおが声をかける

   「おはよう、眠れなかったの。」

   「おはよう、そんなことないけど、今

    日のこと考えると緊張しちゃっ

    て。」

   「きっと、うまくいくよ。」

   「そうだといいけど。」

葵の表情は硬いままだ。

 教室に2人が行くと咲子さきこが話しかける

   「相変わらす仲いいね。」

   「そうかな。」

   「今度の休み、みんなとカラオケ行く

    わよ。」

   「みんなって。」

   「早苗さなえたちと葵と私たちでよ。」

   「いいわね、葵も行くでしょ。」

   「う、うん。」

葵は戸惑いながら返事をする。

 彼女は今夜死ぬかもしれないという気持ちがつよい。

 朝のホームルームが終わり、午前中の授業が始まる。


 高志たかしは朝から家でのんびり過ごしている。

 しかし、心の中は葵のタイムリミットが迫って焦っている。

 いつきに家で休んでいるように言われたので大人しくしているが頭の中ではやれることはないか探している。

 樹は2階にある葵の部屋で純教じゅんきょうに手伝ってもらい陣の用意をしている。

 ベットをどかし、床に円を描き、中に文字のような模様を描いていく。

 そしてその外側にもう1つ円を描き、同じような模様を描く。

 樹は自分が張れる陣で一番強力なものを作る。

 純教が感心して言う

   「随分厳重な陣を作るな。」

   「これでも心細いですよ。」

   「俺は呪いのことは分からないから

    な、これで一応通用するんだな。」

   「普通なら十分です、しかし今回は違

    います、物理的に陣を壊されたらひ

    とたまりもありません。」

   「俺が早く始末をつければいいんだ

    な。」

   「頼りにしていますよ。」

樹は陣を完成させる。


 高校では昼休みになる。

 葵がみおに言う

   「今日は家に来てはダメよ。」

   「何言っているの。」

   「純教さんに言われたでしょ。」

   「分かっているけど、行くわよ。」

   「ダメ。」

   「行く。」

   「頑固ね。」

   「私の気が収まらないの。」

   「怒られるわよ。」

   「構わないわ。」

みおは引くつもりはない。

 放課後、みおは葵について下校する。

 2人は黙って歩く、タイムリミットが迫っているのだ、葵の緊張をみおも感じ取る。

 葵の家に着くと、玄関に高志が待ち受けている

   「やっぱり、来ると思っていたよ。」

彼はみおに言う

   「私は役に立ちます、見ることが出来

    ますから。」

   「ダメだよ、これ以上関わってはいけ

    ない。」

   「お願いします。」

   「帰ってくれ。」

高志はみおを追い出す。

 純教が言う

   「これで、あの子は助かります。」

   「そうですね。」

   「本当にあの子は危ういよ。」

純教はみおが呪いや霊が見えているのに恐れずに近づいているように思う。

普通なら見えていれば、恐ろしくて関わらないはずなのである。

   「葵、いい友達ができたね。」

   「うん、そうだね。」

高志と葵はみおの気持ちに感謝する。


 みおは家に帰り、夕食を食べると出かける。

 彼女は暗くなった町の中を歩く。

 そして、林に囲まれた家の前に行く。

 みおは赤壁の家に来ている。

 家は黒いもやに包まれている。

 彼女はこの家の禍々まがまがしさに震えがくるが立ち去ろうとはしない。

 夜8時頃、純教がやって来る。

 彼はみおを見つけると

   「何をやっているんだ、早く帰りなさ

    い。」

   「いやです。」

   「死にたいのか、見えるんだろ。」

   「はい、純教さんが除霊して出てくる

    のを待ちます。」

   「その必要はない。」

   「もし、失敗したら誰が連絡するので

    すか。」

   「成功させて見せる。」

   「なら、ここに居ても大丈夫です

    ね。」

   「・・・」

   「動きませんよ。」

純教はお札をみおに渡す

   「これを持っていなさい。」

   「はい。」

   「今から、高木さんのお父さんに連絡

    をしなさい、連絡役をすると。」

   「わかりました。」

みおは高志に電話をかける

   「私です。」

   「一条さんどうしたの。」

   「今、赤壁の家の前にいます。」

   「直ぐに離れなさい。」

   「いいえ、純教さんも一緒です。」

   「どうするつもりだ。」

   「私が連絡役をします。」

   「なんてことだ。」

高志は頭を抱える。

   「大丈夫です、お札をもらいまし

    た。」

   「そうか、頼みます。」

   「はい。」

みおは赤壁の家の側の連絡役になる

   「私が入って、1時間経っても出てこ

    なかったら、失敗したと連絡しなさ

    い。」

   「ちゃんと出てきてください、そして

    私を弟子にしてください。」

   「俺は引退をしているんだ、これは最

    後の仕事になる、だから弟子は無理

    だな。」

   「純教さんは本物だから諦めません

    よ。」

午後9時半になり、純教は赤壁の家に入って行く。


 高木家では夕食を食べると純教が赤壁の家の向かって出て行く。

 そして、午後8時半頃、高志の携帯にみおから電話がかかって来る。

 高志が電話を済ませると葵が聞いて来る

   「今のみおでしょ。」

   「そうだよ。」

   「何をしようとしているの。」

   「彼女は今、赤壁の家の前にいる。」

   「どうしてそんなところにいるの。」

   「連絡役をするそうだ。」

   「やはり、引かないのね、頑固者。」

葵は少しうれしそうだ。

 樹は葵に言う

   「陣の中では何があっても声を出して

    はいけないよ。」

   「はい。」

   「声を出すと呪いに位置がばれてしま

    うからね。」

葵は緊張しながらうなずく。

樹と葵は陣の中に入り、呪いを待ち構える。

純教は除霊を開始する。

みおの飛び入りがあったが、これまでは高志、樹、純教の3人の計画通りに進んでいる。



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