第15話 叔父の話

 火曜日の朝、あおいが登校してくる、彼女は目を赤くはらしている。

 みおも百合ゆりが家族ごと交通事故に遭って亡くなったことは知っている。

 彼女が葵に話しかける

   「葵、大丈夫。」

   「泣いちゃった。」

   「交通事故のこと。」

   「そうよ。」

   「やはり、呪いのせいかしら。」

   「分からないわ。」

   「そうだね。」

   「次は私の番ね。」

   「諦めないで純教じゅんきょうと言う人、霊が見

    えていたわ本物よ。」

   「うん、そうだね。」

朝のホームルームで担任が百合が交通事故で亡くなったことを知らせる。

 教室は朝から沈んでいる。

 もう、噂話をする生徒もいない。

 昼休み、葵がみおに話しかける。

 既に目のはれは引いている

   「除霊、木曜日の夜にすることになっ

    たわ。」

   「それってタイムリミットじゃない

    の。」

   「呪いの解呪と一緒に行うそうよ。」

   「お父さん、受け入れたの。」

   「お父さんは2人にかけているみた

    い。」

   「もし失敗したら次が無いじゃな

    い。」

   「どっちみち次の手はないわ。」

   「諦めるの。」

   「諦めたくないよ。」

   「ごめん。」

   「今日は1人で帰れるから。」

みおは危うさを感じる

   「今日も一緒に帰るから。」

みおは断言する。


 高志たかしは火曜日の朝から出かけている。

 探偵の神谷かみやが回った加賀家かがけの親戚に遭うためである。

 まずは一番近くにある叔父の家に行く

   「突然失礼します、高木たかぎと言いま

    す。」

   「何の用ですか。」

   「加賀ひなさんのことで来ました。」

   「帰ってください、何も話すことはあ

    りません。」

叔父はいきなり態度を変え追い返そうとする。

 高志は引かない

   「こちらには用があるのです、話を聞

    いてください。」

   「聞くだけですよ。」

   「ひなさんは怨霊となっています。」

叔父は青くなり

   「脅かすつもりですか。」

   「いいえ、娘と私は怨霊に呪われてい

    ます、それでひなさんのことを調べ

    ています。」

   「責任はとれんぞ。」

   「ただ、ひなさんのことを話して欲し

    いのです。」

   「話すことはない、思い出したくもな

    いわ。」

   「何があったのです。」

   「あんな子供のこと知らん。」

   「そこを何とか教えてください。」

   「しつこいぞ。」

   「話してもらえれば直ぐに立ち去りま

    す。」

   「あれは鬼子だ。」

   「どういうことですか。

   「あれはわしの目の前で人を殺してい

    る。」

   「病弱な子供ですよ。」

   「不思議な力を使って殺しよる。」

   「不思議な力ですか。」

   「そうだ、近所の悪ガキがひなをから

    かったが、その時、ひなは悪ガキを

    睨みつけたんじゃ、そうしたら悪ガ

    キは苦しみ出しで死んでしまっ

    た。」

   「見るだけで殺したんですね。」

   「そうだ、わしはその1回しか知ら

    ん。」

   「他にもあったんですね。」

   「ああ、そうだ、もう帰ってくれ。」

   「ありがとうございます。」

高志は約束通り叔父の家から立ち去る。

 彼は午後に帰宅する。

 樹と純教に報告をする

   「加賀ひなについて少しわかりまし

    た。」

   「叔父から聞きだしたのですか。」

樹が言う

   「はい、粘りがちです。」

   「何が分かったんですか。」

   「鬼子についてです。」

   「そうですか。」

   「ひなは叔父の目の前で人を殺してい

    ます。」

   「病弱な少女ですよ。」

   「それも子供の時です。」

   「どのように殺したのですか。」

   「からかった悪ガキを睨みつけると悪

    ガキは苦しみだして死んだそうで

    す。」

   「それは怖いですね。」

   「そう思います。」

   「邪眼の持ち主でしょうか。」

   「それは何ですか。」

   「相手を睨むだけで呪うことができる

    能力です。」

   「まだ、他の可能性もあるさ。」

純教が言う

   「他に何が考えられますか。」

   「念力とかいろいろ考えられるさ。」

樹は言う

   「情報が少なすぎますし、本人は死ん

    でいるので決めれませんね。」

   「確かにそうですね、明日は祖父母の

    家に行ってみようと思います。」

   「無理し過ぎではありませんか。」

   「情報が大いに越したことはありませ

    ん。」

   「その通りですが…」

樹は高志の行動力に不安を覚える。

本番で倒れられては意味がないのだ。


放課後になり、葵とみおは一緒に下校する。

   「お父さんはちゃんと休んでいる。」

   「いいえ、今日も加賀ひなの叔父の所

    へ行っているわ。」

   「夜も寝ていないんでしょ。」

   「たぶん。」

   「そのうち倒れるわよ。」

   「お父さん、動いていないと不安なん

    だと思う。」

   「それでも休まないと。」

   「分かった、お父さんに言ってみ

    る。」

   「言うこと聞いてくれればいいけ

    ど。」

葵が笑い出す

   「どうしたの。」

   「だって、自分のお父さんを心配して

    いるような感じだから。」

   「そんなんじゃないよ。」

   「分かったわ。」

みおは顔を赤くする。

 2人は話しながら葵の家に着く

   「今日も寄っていって。」

   「分かりました。」

2人揃って家に入る

   「ただいまー」

   「お邪魔します。」

高志が玄関に迎え出る

   「一条さんいらっしゃい。」

彼は2人を居間に通す。

 居間にはいつきと純教がいる

   「こんにちは」

2人は挨拶する

   「今ちょうど加賀ひなの能力について

    話していたんだ。」

   「力が分かったんですか。」

   「相手を睨むだけで殺せるらしい。」

   「そうですか。」

みおは考え込む。

   「どうした、何か思い当たることがあ

    るのか。」

   「呪いのことです。」

   「貞観寺で呪いを見ていたね。」

   「はい。」

   「何か気づいたの。」

   「木魚が割れたのを覚えています

    か。」

   「ああ、覚えている。」

   「あの時、呪いが木魚を見たんで

    す。」

   「そうか。」

   「何だって。」

樹が声を出す。

   「どうしたのですか。」

   「物質に干渉するなんて聞いたことが

    ない、それも木魚を割るなんて。」

   「まずいのですか。」

   「はい、陣が破られなければ呪いは目

    標を特定できません。」

   「見えないのですね。」

   「そこまではいいのですが、破られた

    時、対処法がありません。」

   「と言うと。」

   「この場合、呪具で呪いに対応できな

    いのです。」

   「そうですか。」

   「はい、呪いの撃退は無理です。」

   「純教さんが怨霊を倒せば、解呪はで

    きるのですね。」

   「はい出来ます、桐生が死んでしまう

    はずです、こんなに強いなんて。」

樹の言葉に高志、葵、みおが戸惑う。

 居間に沈黙が訪れる。

 みおが沈黙を破る

   「お父さんは休んでいないそうです

    ね。」

   「まあ、仮眠は取っているよ。」

   「明日はちゃんと休んでください。」

   「分かりました。」

しかし、高志は加賀ひなの祖父母に明日会いに行くつもりだ。

 葵が高志に言う

   「今、嘘ついたでしょう。」

   「どうして。」

   「私が娘だから分かるのよ。」

   「すまない、どうしても明日やりたい

    ことがあるんだ。」

みおは泣き出す。

 みおは葵

と高志が心配なのだ

   「ごめん、今晩ちゃんと休むから、約

    束する。」

みおは無言でうなづく。

 純教はみおが葵と高志に入れ込み過ぎていることに不安を抱く。

 しかし、今かける言葉がない。

 みおは泣き止むと高志に話しかける

   「除霊と呪いの解除を同時にやると聞

    いたのですけど。」

   「そう決まったよ、」

   「もし除霊が失敗したらどうするんで

    すか。」

   「分からない。」

   「分からないって、諦めるんです

    か。」

   「そうだな怨霊を外に連れ出すと

    か。」

   「冗談言っている場合ですか。」

   「私は彼女をあの部屋から出してあげ

    たいと思っている。」

   「方法はあるんですか。」

   「日記とノートを外に持ち出そうと思

    っている。」

   「そうですか。」

みおは黙る、自分にも何もできないのだ、人のことを言う資格はないと思っている。








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