第10話 高志、赤壁の家に入る

 早紀さきの父親は高志たかしに連絡をする

   「早紀が亡くなりました。」

   「それは、ご冥福をお祈りいたしま

    す。」

   「もう、どうしたらいいか。」

早紀の父親の悲痛な声が聞える

   「桐生きりゅうさんはどうしましたか。」

   「先生も無くなりました。」

   「そうですか。」

   「高木たかぎさんすみません、これ以上は何

    もできそうにありません。」

   「分かりました、娘さんを弔って上げ

    てください。」

早紀の父親にこれ以上協力を求めることはできない。

 高志は百合ゆりの父親に電話する

   「夜分すみません。」

   「何時だと思っているんだ。」

   「早紀さんが亡くなりました。」

   「早紀ちゃんが・・・」

   「今、呪い屋に協力を求めていま

    す。」

   「そうか。」

   「助け合いませんか。」

   「いいや、俺のやり方で娘をまも

    る。」

   「どうするつもりですか。」

   「町を出る。」

   「それで解決しますか。」

   「遠くなら大丈夫だろ。」

   「分かりません。」

   「あんたも逃げた方がいいぞ。」

高志は逃げることを考えていなかった、しかし、それで解決するとは思えない。

 彼は五條樹ごじょういつきに意見を求めることにする。

 翌日の土曜日、起きてきたあおいに高志は早紀が死んだことを伝える。

 葵は青い顔をしながら

   「お父さん、私、後6日の命だね。」

   「まだ、諦めてはダメだ。」

   「呪い屋の人に対処を頼んでいる。」

   「でも、みんな失敗しているよ。」

   「それに赤壁の家のこと探偵に調べて

    もらっているんだ、何かわかるかも

    しれない。」

   「うんそうだね。」

葵は沈んだ様子のままだ。

 高志は赤壁の家を調べれば、怨霊の正体を突き止められるのではないかと思っている。

 それに携帯電話で聞いた若い女の声は「だして」と言っていた。

 そこに、解決の糸口があるのではと思っている。

 高志は五條樹に電話をする

   「電話よろしかったですか。」

   「はい、どうぞ。」

   「昨夜、2人目の子と桐生雫きりゅうしずくさんが

    亡くなりました。」

   「桐生がですか。」

   「お知り合いでしたか。」

   「はい、私たちの所で修行していた者

    です。」

   「そうですか。」

   「彼女はかなり優秀だったのですか残

    念なことをしました。」

   「と言うと、呪い屋としては優秀なん

    ですね。」

   「はい、小池清純こいけせいじゅんさんといい、高木さ

    んはよい人選をしています、この業

    界は何の技術も持っていない人も多

    いですから。」

   「そうですか。」

高志は自分たちの人選が間違っていないことを知る。

 しかし、相手はその人たちが通用しないのだ。

 彼は続ける

   「3人目の子の父親は遠くへ逃げるこ

    とを選んだのですが効果あります

    か。」

   「いいえ、距離は関係ありません。」

   「他には無いでしょうか、。」

   「分かりません、怨霊は近づくものす

    べてに害悪を振りまきます。」

   「大切な人にもですか。」

   「そうです、おそらく、自我がなく怨

    念だけで存在しているのではないか

    と思います。」

   「しかし、携帯の声はと言って

    いました。」

   「それについては分かりません、怨霊

    以外の霊かもしれません。」

   「分かりました、それで祓い屋はどう

    なりましたか。」

   「今日、会って話すことになっていま

    す。」

   「よろしくお願いします。」

高志はどんな祓い屋か気になったが樹を信じることにする。

 彼は一度、赤壁の家に入ることを覚悟している。

 どうしても「だして」と言う言葉が気になるのだ。

 土曜日の昼、高志は1人で赤壁の家に行く。

 家は林に囲まれており人影はない。

 家の庭は草が生い茂っており、手入れがされず放置されていることが分かる。

 家の周りを見るつもりであったが草が邪魔で見て回ることを諦める。

 玄関のドアはカギがかかっていない、カギが壊れている。

 玄関に入る、広い玄関だ靴などは残っていない。

 ここは小池清純が霊を除霊している。

 何も起こらない。

 居間に入る、ここも広い20畳から30畳はあるだろうか。

 部屋の中心にソファーをテーブルの応接セットがある。

 壁には絵がかけられている、風景画のようだが汚れてよくわからない。

 そして、ソファーが高志に向かって飛んでくる。

 彼は危うく避ける。

 これがポルターガイストかと思う。

 引き返したくなるが、引くわけにはいかない。

 次は台所に入る、すると、包丁が飛んでくる。

 彼は包丁を避ける。

 台所も広い6畳くらいはある部屋の中央に調理台がある。

 その上に包丁2本が宙に浮いている。

 高志は娘たちはこんな危ない所を通ったのかと驚く。

 彼は後ずさり台所から出る。

 廊下に出ると居室が3つある。

 まずは手前の部屋から見ていく。

 1つ目の部屋に入る。

 6畳ほどの大きさの部屋である。

 ベットと机が置いてある。

 それに本棚がある。

 高志は本を調べる。

 次に机の引き出しを調べる。

 どうもこの部屋は家の主の部屋のようだが参考になるものはない。

 2つ目の部屋に入る。

 1つ目の部屋と同じ造りである。

 部屋の中にはベットと机が置いてある。

 高志が机を調べるが参考になるものは何も見つからない。

 3つ目の部屋に来る、一番奥の部屋である。

 ここで娘たちが呪われたと思うと圧迫感を感じる。

 高志に冷や汗が流れる、深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

 勇気を出してドアを開ける。

 この部屋も造りは他の部屋と同じである。

 部屋の中に入ると高志の頭の中に声が響く

   「お前、決まっている、死ぬ、死ぬ、

    死ぬ・・・」

若い女性のかげりのある声である。

 この声は携帯の若い女の声と同じである。

 彼は声の主が怨霊だと確信する。

 部屋の中にはベットと机、本棚が置いてある。

 彼はここに呪いを解くカギがあるのではないかと期待する。

 本棚を調べるかなり古いものだが恋愛をえがいた物語物が多い。

 しかし、目的の物はない。

 机を見るとその上に万年筆が置いてある。

 引き出しの中にノートがある。

 そこには物語がえがかれている。

 城にとじ込まれたお姫様が困難に打ち勝った騎士に城から連れ出される話である。

 そして日記を見つける。

 そこには家に閉じ込められ陰鬱いんうつとした気持ち、自分の生まれを呪う気持ち、誰かが連れ出してくれる期待がつづられていた。

 高志はこの部屋の住人が怨霊の正体ではないかと思う。

 彼女は外に出たいのに、この部屋に縛り付けられているのだ。

 彼は赤壁の家を後にする。

 外に出ると既に夕方になっている。

 高志が家に帰ると葵が玄関に駆け出してくる。

   「今まで何していたの。」

彼女が問い詰める

   「赤壁の家に行っていた。」

   「何をしているの、危ないでしょ。」

   「今さら命の心配をするの。」

   「死ぬって決まったわけじゃない

    わ。」

   「そうだね、すまなかった。」

高志は謝る

   「それよりお客さんよ、探偵の神谷かみや

    言う人よ。」

高志は有益な情報が得られるのかと期待する。






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