第5話 定海のお祓い
次の日の木曜日、
早紀は
「話信じてくれて直ぐにお祓い頼んで
くれたよ。」
と報告する。
百合はそれを聞いて
「家は、全然信じてくれないわ、話に
ならないわ。」
「家のお父さんは信じてくれて、みん
なのお父さんに電話していたみた
い。」
葵は言う。
早紀、百合、葵の3人はみおに話す
「今日放課後、
の。」
「それは良かったわ。」
「それでついて来てくれないかし
ら。」
「どうして。」
「何かあるんでしょ。」
「何かって。」
「霊感よ。」
「そんなものないわ。」
「何もなくていいから、ついて来
て。」
「分かったわ。」
みおは強制的にお祓いに付き合うことになる。
授業は無事に終わる。
そして、みおは早紀、百合、葵と共に貞観寺へ向かう
寺は早紀の家の近くにある。
寺には早紀の父親と葵の父親の
「昨日は夜遅くに電話をすみませんで
した。」
「いいえ、子供のことですから、構い
ませんよ。」
「これで助かるといいですね。」
「私は信じています。」
「一応、昨夜、祓い屋のリストを作り
ました。」
「そうですね、次の手を考えておくこ
とは必要ですね。」
「はい。」
そこへ学校が終わった4人が来る
葵が高志をみおに紹介する
「私のお父さん高志よ。」
そしてみおを高志に紹介する
「こちらは
注意してくれた子よ。」
「娘たちが悪いことをした済まなかっ
た。」
高志は謝る、みおは
「何のことですか。」
「君が娘たちを赤壁の家に行くことを
止めようとしてくれたことだよ。」
「気にしていませんから。」
「赤壁の家について何か知っているの
かい。」
「いいえ、知りません、ただ嫌な予感
がするだけです。」
「それにしては適切にアドバイスして
いるし、霊感があるの。」
「いえ、何もありません。」
みおは霊を見ることが出来ることを隠す。
早紀の父が
「娘たちをお願いします。」
「任せておいてください。」
集まった6人は本堂に正座する。
早紀、百合、葵の3人が前に並ぶ。
定海和尚のお経が始まる。
みおは3人の後ろに座っている。
彼女には、お経が進むにつれて3人の顔が様々に変形していくのがみえる。
そして本堂の敷いてある畳に黒い穴が開くのを見る。
みおは目を疑うが穴の中から2本の手が出てくる。
手はズルズルと伸びで腕が出てくる、それは青白くひどく痩せている。
みおは思わず立ち上がる。
みんながみおを見る、みおは畳の穴を指すが他の人には見えていないようだ。
それはさらに這い出てくる、頭が出てくる、黒いばさばさの長髪である、目は黒い虚空になっている、口からは
「あああああ」
とうめき声が聞こえる。
そこで定海和尚のお経が止まる。
いや、声が出せなくなったのだ。
和尚はゆっくりと振り返る、顔には冷や汗が浮いている。
それはズルズルと這い出てくる、やせ細った肩、あばらの浮き出た胸が穴からでてくる。
和尚は穴から出てくるものを指さす。
この場で見えているのはみおと和尚だけである。
みおは言う
「和尚様どうしたらいいですか。」
和尚は首を曲げ木魚を見る
「木魚を鳴らせばいいのですなね。」
和尚はうなづく、みおは木魚を鳴らし続ける。
残りの5人は和尚とみおが何をしているのか分からない。
しかしそれはズルズル這い出てくる。
足まで出ると立つことも四つん這いになることもなく腹ばいのまま和尚に向かってズルズルと這っていく。
それが黒い虚空の目で木魚を見る。
すると木魚が割れてしまう。
それは和尚に掴まる、彼の顔は恐怖に引きつる。
残された5人は、それを見ることが出来ず何が起こっているのか分からない。
みおは和尚をそれから遠ざけようとするが重く感じ動かすことも転がすことも出来ない。
それは掴み上がり頭が和尚の顔の高さまで来ると黒い虚空の目で見る。
和尚は魂を吸い取られるように倒れる。
それは足からズルズルと穴の中に戻っていく。
高志が救護隊を携帯で呼ぶ。
早紀の父親が定海和尚の脈を診るが脈がない。
駆けつけた救護隊によって定海和尚は病院に運ばれるが既に手遅れである。
高志はみおに聞く
「君たちは何を見ていたんだ。」
「何のことですか。」
「君と定海和尚が見ていたもののこと
だよ。」
「何もなかったんじゃないですか。」
「いや、見えていないだけで何かが居
たんだ。」
「私、見えるんです。」
「見えるって霊とかか。」
「はい。」
みおは秘密を明かす
「それで何がいたの。」
「たぶん、呪いのようなものだと思い
ます。」
「霊じゃないの。」
「いいえ、初めて見ます、畳に穴が開
いて青白いやせこけた人の様なもの
が出てきて和尚様に掴まってそうし
たら和尚様が倒れたんです。」
「それはまだいるの。」
「いいえ、和尚様が倒れたら穴の中に
戻って行きました。」
「分かったよ、また力を貸して欲しい
から連絡先を教えてくれ。」
「それは葵に聞いてください。」
「ああ、すまなかった。」
高志はお祓いが通用しないことを知る。
「どうしたらいいんだ。」
早紀の父親は頭を抱える
「定海和尚のことは残念でした、祓い
屋を当たって見ましょう。」
「もうそんなに時間がないんだぞ。」
「諦めるんですか。」
「諦められるか。」
「ならやれることをしましょう。」
「そうだな。」
早紀の父親と高志は祓い屋を当たることにする。
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