第3話 1人目の犠牲者

 月曜日になり、亜紀あき早紀さき百合ゆりあおいの4人は何事もなく登校する。

 しかし、既に兆候はある。

 教室では、みおが青くなる亜紀、早紀、百合、葵の顔が歪んで見えるのである。

 みおには歪んでいる意味は分からないが、何か悪いことに違いない。

 亜紀は早苗さなえ健二けんじに赤壁の家に夜、行ったことを話す

   「大したことありませんでしたわ。」

   「ポルターガイストあっただろ。」

   「ええ、ありましたけど怖くない

    わ。」

   「すごいなぁ。」

健二が感心する。

   「一番奥の部屋には行ったの。」

早苗が質問する。

   「ええ、何もなかったわ。」

亜紀は答える。

   「亜紀、本当にそれだけ。」

みおが聞くと亜紀は

   「ええ、それだけよ。」

   「それだけじゃないだろ、声の話をし

    ていないじゃないか。」

百合が興奮気味に言う

   「声って何。」

みおが聞く

   「4人揃って声が頭に響いて来たん

    だ。」

   「なんて言っていたの。」

   「最初はお前、次はお前、その次はお

    前、最後にお前」

と言っていた。

   「順番はどうなの。」

   「亜紀、早紀、私、葵の順だ。」

百合が説明する。

 みおは亜紀に

   「お祓い行きましょう。」

   「なぜ、行かなければならないの。」

   「何か起きてからでは遅いよ。」

   「みおには関係ないでしょ、私はいい

    わ。」

亜紀が拒否してお祓いの話は無くなる。

 月曜日は何事もなく終わる。

 火曜日、亜紀はみおに

   「ほら何も起こらないでしょ。」

   「もう一度お祓い考えて。」

   「しつこいわよ。」

亜紀はみおの言葉に耳を貸さない。

 咲子がみおに聞く何か見えるの。

 みおには亜紀たち4人の顔が歪んで見えているが言わないことにする。

 不安をあおることはしたくなかったのだ。

 咲子にはただの勘だと説明する。

 火曜日も何事もなく過ぎ、夜になる。

 亜紀は寝る前に2階にある自分の部屋で勉強をしている。

 彼女は努力して上位の成績をキープしている。

 夜10時頃、亜紀の部屋に異変が起こる

 床に黒い穴が開いたのだ。

 亜紀は目の錯覚だと思うが、その穴から手が2本で手くる

 亜紀は叫ぶ

   「きやあぁぁ」

両親が部屋に来る

   「どうした。」

   「手が手が・・・」

亜紀は床を指さす。

 しかし両親は

   「何もないぞ、静かにしなさい。」

と言って帰って行く。

   「おと・・・」

早紀は助けを呼ぼうとするが声が出ない。

 穴からはズルズルと腕が出てくる、それは青白くやせ細っている。

 手はビタビタとあたりを探る。

 亜紀は逃げ出したいが体が動かない。

 それはさらに這い出てくる、頭が出てくる、黒いばさばさの長髪である、目は黒い虚空になっている、口からは

   「あああああ」

とうめき声が聞こえる。

 さらにズルズルと這い出てくる、やせ細った肩、あばらの浮き出た胸が穴からでてくる。

 亜紀は涙目になり何でこうなったのと考えるが恐怖のため頭の中はぐちゃぐちゃである。

 それは足まで穴から出る。

 そして立つことも四つん這いになることもなく腹ばいのまま亜紀の方へ這いずっていく。

 亜紀の足にそれの手が触れる、冷水のように冷たい、それは亜紀の体に掴まり、這い上がって来る。

 亜紀は恐怖のあまり泣き出すが声が出ない、ただ涙があふれる。

 ついに頭が亜紀の顔の所に来る、黒い虚空の目は亜紀を見つめる。

 亜紀の顔は恐怖のあまり歪む。

 そして、亜紀は魂を抜かれたように倒れる。

 それはズルズルと足から穴の中へ戻っていく。

 穴の中に消えると穴は消える。

 翌朝、亜紀の部屋で彼女が死んでいるのが発見される。

 死に顔は恐怖に歪んでいた。


 水曜日の朝、亜紀は登校してきていない。

 朝のホーム-ルームで担任から亜紀が自分の部屋で死んでいるのを発見されたと報告する。

 早紀、百合、葵は青ざめる。

 休時間3人はみおの所に来る

   「お祓いしたら助かる?」

   「分からないけど、他に方法が思い当

    たらないわ。」

   「私、お父さんに頼んでみる。」

早紀が言う、彼女の父親は貞観寺じょうがんじ檀家だんかである

   「私も親に相談する。」

百合が言う。

 葵は口に出さなかったが父親に相談するつもりである。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る