第15話 私と東京嫌いな友人(2)
私の新居には、隣人に渡しそびれた東京ばな奈があった。
それと私の胸にはモヤモヤとした胸のつかえが残った。
私はただ、挨拶をしただけなのにどうしてあそこまで拒絶をされなければならないのか。
その理不尽な、意味不明さに耐えきれず、部屋にある段ボールをひっくり返しグチャグチャにしたいと考えたが、後片付けが面倒くさいのでやめた。誰か後片付けをしてくれるのならこの場でそのようなことをしていたのかもしれない。
隣人は、東京に行ったことがあるのだろうか。
仮に東京に行ったことなく、そのようなことを言っているのであればそれは偏見である。
と、同時に私も同じような偏見をしていたのかもしれない。
田舎は、買い物をする場所がないとか、陰湿だとか。
そんなことは、実際に住んでいる人にしか分からない。
買い物に関しても、大きな百貨店はないけどイオンはあるし、駅の方には天満屋と呼ばれる百貨店がある。チェーン店もたくさんある。
普通に買い物をするには困らない。
それと都会の人たちが勝手に、不便だと名付けたのかもしれない。
だからだ。
もう一度、少女と話をしたい。
お互い誤解をしている部分を取り除きたい。
そう思い、再び隣の家へ向かうことにした。
私が追い出されてから30分もしない時間だった。
隣の家の表札には赤崎と書いてある。
そして家の駐車場には軽自動車が1台。
どうもあの少女以外に誰か住んでいるような気配はない。
あの広い家で、少女1人。
しかも見た感じ若い。そんな少女がこんな昼間に仕事せず1人。
専業主婦であるのなら、そんなことはあるのかもしれない。しかし、あの幼い顔で主婦というのは想像が出来なかった。
もう一回、赤崎家のインターホンを鳴らす。
怖い長老が出ないと分かった今、インターホンはすぐに押すことができた。
そして、まだ奥の方からドガドガ。
扉が開く。
やはり先ほどと同じ少女が出迎えた。
彼女はため息を吐く。
扉に手をかけている。
いつでも、閉めれるように待機をしているのだろう。
「何? 別に挨拶とかいらないよ」
「いや、折角隣に引っ越したので仲良くしたいなって」
「私は仲良くしたくない」
ガルガル。ワン。今すぐ吠えてきそうだ。
「とにかく帰って」
ピシャリ。
扉を閉めた。
そして私1人にさせられた。
拒絶。
まさか、あそこまで拒絶されるとは思っていなかった。
一体どこがダメだったのだろうか。
私の身なり、匂い?
確かに、私の使っている香水は東京の百貨店で買ったもので、地方の人には珍しいものだろう。
しかしそんな不快させるような匂いではないはず。
私はずっと、家の前で立っていた。
いつか、もう一度扉が開いてくれることを祈りながら。
しかし固く閉ざされたその扉は開く気配など一切なかった。
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