第2話 希望のない親たち

 私は、親に相談しても希望などないと思っている。

 例えば、今娘が遠い地方に異動を言い渡されて困っている。


 そうなると父、名和翔はこういうだろ。

「会社が行けというのであれば、文句言わずにいけ」と。


 分かる。分かる。相談しなくても確実にそういう。

 ただでさえ、早乙女という時代錯誤なパワハラ先輩と一緒に働いているのに父親もそんなんだとシンドイ。


 それじゃ、母は何と言うのだろうか。

 私の母、名和呈子は非常にうっとりしている性格である。

 父や早乙女先輩のように時代錯誤をしているような人物ではない。


 人物ではないが、いかんせんアホである。

 アホであるからあんな、昭和頑固頭の父と結婚をしてしまっている。


 そんなアホはこういうに決まっている。


「会社のお金で鳥取に行けるなんて幸せだね。お土産よろしくね」


 と。

 恐らく娘の辞令を、修学旅行の日程か何かと勘違いするだろう。

 また、会社が明日戦争の地に言ってこいと言われたとしても、母は同じ反応をする。


 要は馬鹿なのである。


 この2人に相談をしたところで、何一つ解決しないのである。残念なことに。


 それでも、それでもだ。一抹の期待を込めて私は言う。


「鳥取県勤務になりそうだけど、どうすればいい?」


 そして父から返答が来る。


「おう、頑張れよ」


 母からは


「いいなー鳥取砂丘に行きたいな」


 やはりアホである。

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