第23.5話 元幼馴染はゲームの解説を受ける【本日からのアクションプラン】


 けれど基本的には2択というわけだな……いや俺の選択肢は木下さんのみだ。


「そしてまたしても誠に不本意ですけど、万が一のときのために颯流には避妊具を常備して頂きますね。私は既に用意あるので大丈夫ですが、優希ちゃんと生でするわけにはいかないでしょう?」

「っ〜〜〜〜!!」

「何をこの程度の刺激で顔を赤くしてるのですか。颯流、今更でしょう?」

「お前が変なことを言うからだろ!?」


 一瞬でも思い浮かべてしまった木下さんとの本番のイメージをゴミ箱に捨てる。


「なので颯流は早めに準備をしてて下さいね。まあ颯流がそんなに早い段階から優希ちゃんを押し倒す度胸も無いことを知ってますけどね」

「……いずれはそうなるんだろ多分」

「んふふっ。ちなみにこのゲームから降りることは許しませんからね?」

「分かってる。男に二言は無いからな」

「それを聞いて安心しましたよ。なら次にルート別の報酬へ着目しましょうか。颯流が勝つと、私は2人が結婚に至るまで全力でサポートしますよ」

「それは嬉しいんだが、ただただ辛いだけなんじゃないか?」


 そんな身を削るような真似をしてちゃ心がすり減っていくだけだろう。

 俺が木下さんを彼女の好きな人とくっつけるよう頼まれても絶対にお断りするぞ。

 それを結婚まで言い切るんだから、負けたときのデメリットが計り知れないぞ。


「んふふっ。心配してくれるんですね? 嬉しいですけど、颯流を幸せにすることが私の人生における生き甲斐ですからね。例え辛くても辞められそうにありません」

「……月愛」

「そんな複雑そうな顔をしないで下さい。元はと言えば私の人生なのですよ? 本人が好きなように使ってナンボです」

「そうか。お前がそれで良いのなら俺から言うことは何もないな」


 顔は寂しそうな表情を見せてるはずなのに、笑ってるようにも見えるのは何故だ。

 いや気のせいだろう。


「そして最後に私が勝つと低容量ピルを服用しますので、颯流は思う存分に私の中で直接セシ汁プシャーして下さいね?」

「変な言い換えをするな気持ち悪い!」

「んふふっ。まあ、もとより私は颯流と本番を迎えるときはいつだって生を希望しますけどね。それに実はもう低容量ピルを服用してたりしますが」

「はっ? 何でだよ?」

「正しく服用すると避妊だけでなく月経痛を緩和したり、月経不順や肌荒れの改善にも貢献してくれるからですよ」

「そう言うもんなのか」


 念のために覚えていて損は無いだろう。

 頭の中のメモ欄へと情報を刻みつけておく。




「そして最後に【本日からのアクションプラン】ですね。これは文字通りに颯流がより沢山の女性と仲良くなるための修行期間のようなものと思って下さい」




「それは分かったが、何でわざわざ複数の女性を同時に狙うんだ? 俺は木下さんだけが好きだから、木下さんとだけ仲良くしておけば良いと思うんだけどな」

「それ考えるのも分かりますが、女の子というものは周囲からの評価を物凄く大事にするのですよ。つまり他の女の子の好感度を上げておくと必然的に颯流のことを気にかけてる他の女の子たちも颯流に対する印象が良くなる、という仕組みです」

「そうだったのか」


 それはまるでポ◯モンバトル中に学習装置を渡すことで獲得した経験値を他の手持ちポ◯モンに自動的に分け与えるような仕組みだな。

 何とも便利な。


「なので颯流には早速明日から女の子に話しかけてもらいますね」

「い、いや無理だろそんなの。俺一応人見知りだから休み時間は基本的に1人で読書かクロワッサンと一緒に連んでるんだが」

「そうですね。なのでその人見知りを解消することも目指して颯流にはガンガン女の子に話しかけて頂きます!」

「その候補がここに書いてある4人と言うことか?」

「はい、その通りです。もちろん話しかける対象を増やしたければ遠慮なくアプローチして行ってください。指定の4人はあくまで関係を深めるのに集中する女の子たちという意味です」

「なるほど」


 いや本当は女の子に話しかけるなんざ怖過ぎて無理なんだが。


「何をそんなに焦ってるのですか。私や優希ちゃんとは平気で話しかけていられるでしょう?」

「お前はもう緊張するとか無いけど、木下さんは平気なふりして今でも話しかける度にドキドキしてんだよ」

「なら颯流が優希ちゃんに話しかけるのと同じように他の女の子たちとも話しかけて下さい」

「そう言われてもな」

「和実ちゃんとは比較的平気で話しかけられてると思いますが?」

「あいつはクロワッサンにべったりだからいつの間にか気楽に話しかけられるようになったんだよ。お前と同じように例外のような存在だ」


 ただあの心の底に土足で踏み込んでこようとする探求熱心さには辟易とさせられるものだ。

 好奇心旺盛も度が過ぎれば時々鬱陶しく思えてくる。

 ただ悪いやつじゃないんだよな……流石クロワッサンが選んだ人のことだけある。


「なので和実ちゃんはクリアとして、課題は他の3人の女の子ですね」

「そうだが、なんでこのリストに教師陣が入ってるのか聞いても良いか?」

「マディ先生ですね。もちろん颯流の性行為スキルを磨くためですよ。私はまだ処女で未経験なので悔しいですが、色々な経験値をもたらしてくれるのはこのマディ先生だと予想してます」

「スキルって何だよ」


 その質問を待っていたのか、月愛が目をキラキラさせて熱弁を振るう。


「だって人妻ですよ!? 私のような紛い物と違ってマディ先生は結婚生活という性の土壌で成熟し、匂うほどに濃い果汁をたっぷりと染み込ませた経験豊富な女性なんですよ? きっと彼女と身体を重ねるようになってから、颯流は進化するに違いありません!」

「いやどう考えても無理だろ。教師と生徒の関係が見つかったら向こうは首が吹っ飛ぶぞ」

「んふふっ。そのときのために私がいるじゃないですか。まあ、先程も申し上げた通りにセックス云々をしたくなければ自分の操を優希ちゃんに立てて下さい。今回のはあくまで仲良くなることです」

「……そうかよ」


 いや本当は猛烈に気になるぞ……日々おかずにしていたモノが現実化するというのであれば、興味を抱かずにはいられない……これも悲しき男の性か。


「私のルートを選べば悲願が叶いますよ?」

「今俺が考えてたことを口にするんじゃねえ」

「んふふっ。書いてあるとおりに私は颯流の性生活を全力で後押ししますよ? マディ先生以外の人妻。若妻。レスられ妻。ありとあらゆる熟女たちのスイッチを押した状態でお届け致しますよ」

「っ…………辞めろ」

「それが例え新婚夫婦だとしてもですよ。私の実力の範囲内だと余裕の案件です」

「辞めろ」

「今すぐにでも私に下半身を差し出してくだされば、明日の放課後に、保健室で、2人きりで、マディ先生と好き放題出来ることを約束しますが、どうしますかぁ?」

「辞めろって言ってんだろ!!」


 慌てて目と耳を塞いで雑念を一生懸命に振り払う。

 マジで悪魔野郎かよこの女は。

 的確に俺の弱点を突いてきやがって……今これ以上誘惑されたら欲に負けちまう。


「んふふっ。壊れかけの理性で随分と粘りますね。まあここは颯流の決断と勇気に免じて、話を次に進めましょうか」

「っ……ああ、頼む」

「颯流は教師陣の中ではマディ先生とは1番仲良いので心配はあまり無いでしょう。課題は愛素ちゃんと鐘美ちゃんですね」

「そうだな」


 木下さんといつもべったりしてる桃園さんとはたまにだけ話すがそこまで仲が良いわけじゃないし、共通の話題があるのかも怪しい間柄になってるからな。

 凪音さんに関してはもう完全に未知数で今まで話した覚えもない。

 

「なので桃園さんに関しては最初のうちは木下さんを挟んで3人で会話出来るようにしておくと1番ですね。私が遠くから観察してる分には、少なくとも嫌われてはいませんよ? それどころか好感度が結構高めだと仮説を立ててます」

「怖えよお前マジで……なんでそう言い切れる?」

「先程も述べた通りに、1人の女の子の好感度を上げていると必然的にその子の周りの女の子たちからの評価も上がるからですよ」

「それって……つまり木下さんは俺に好意を抱いてるってことか?」


 いや本当はもう気付いている……少なくとも嫌われていないことは。

 じゃなければ放課後に俺と会ってくれたりは絶対にしないと思うしな。

 ただ彼女からの好意が恋愛感情絡みなのかそうじゃないか、まだ分からないのだ。

 だから俺は木下さんと両思いだと確信出来るまで決定的な展開へと踏み込めないでいる。


「もう答えは自分の中で出てるようなので私からは一切助言しませんよ」

「分かってるって。流石にそこまで無神経じゃない」

「それでは最後に鐘美ちゃんですね。毎週火曜日の6限で行われる情報の授業で颯流の隣の席の女の子です。名前は把握してますか?」

「ああ、一応な」


 関わり合いがなくとも男はクラスの可愛い女の子の名前だけは覚えているものだ。

 まあ木下さんや月愛程じゃなくても個人的に可愛い部類に入ると思ってる。


「ほぼ初対面の女の子に話しかける際は口籠もって自然消滅するのを避けるために、ちゃんと話しかける理由を作っておきましょう」

「話しかける理由?」

「ええ、業務連絡など何かしら『話しかけるのが仕方ない』ような言い訳を勘上げておくとベストです」

「それって例えばどんなの?」

「私が何でもかんでも教えると勘違いしないで下さい颯流。これはあなたを更生するためのトレーニングの一環です。先ずは自分で考えてみましょう」

「……わかったよ」


 女の子に話しかけるための言い訳?

 そんなもの業務連絡以外にあると言うのか?

 でもとりあえず考えてみようか……話しかけるのが仕方ない状況を作り出すか。

 つまり大抵の場合は話しかける側が何かしらの悩みを抱いてることに──


「1個だけ思いついた」

「聞かせて下さい」

「ああ。先生の教えてることが分からない『やり方教えて』って頼もうと思う」

「んふふっ。上出来ですね颯流。明後日は早速それで話しかけに行きましょう!」

「分かったよ……それが木下さんからの好感度アップに繋がるならやってやる」

「良い心意気ですね。なので明日からは和実ちゃんと愛素ちゃんを中心にガンガン話しかけていきましょうか」

「やってみるよ」


 月愛がそう言うのならそうなんだろう。

 こんな大層なゲームを仕掛けておいて嘘をついてるとは思えないからな。

 先ずは桃園さんの攻略法を考えて行こうか。

 あいつは俺のことが嫌いじゃな誘うだからゲームを話題にすれば── 




 そう頭を悩ませる俺を、月愛はソファで真横から微笑ましげに見つめるのだった。




【──後書き──】

 次回、新ヒロイン登場です!


 読者の皆様へ、ここまで読んで下さり誠に有難う御座います!

 この作品を読んで少しでも、


「面白かったっ!」「今後どうなるの?」「続きが気になる!!」


 と楽しんで頂けたら、ブクマ6948に★4545目指してるので、

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