第22話 義母とドキドキな手洗い。「キュ〜って閉まるのが気持ち良いですよね?」
「んふふっ。立派な心構えですが、テイッシュに無駄撃ちしてちゃ説得力がありませんね」
「ああ、自分でもなんて可哀想なことをして来たんだと今更後悔してるよ」
「彼らの気持ちを考える度に悲しくなりますね。卵子を目指して生まれて来たと言いますのに無機質な有機物の上に出されて人生を終えるのですよ?」
「なんて言うことだ……俺は今まで何百、いや何億という息子たちをこの手で直接ゴミ箱へと葬り去って来たのか。俺の馬鹿野郎……!」
自分の子供たちを無駄に沢山死なせてきて……父親が聞いてて呆れるな。
「そうですね……流石の私も同情します。なのでこれからはほんの少しでも有効活用させてあげられるように、私の中へ出して下さい」
「そうだよな。親が子を殺すなんてあってはならないことだよな。どうすれば……」
「女の子を喜ばせられたら彼らも本望でしょう。私も颯流の子供を授かるのは何よりの幸せですが、学生のうちに出産するのは賢くありませんので結婚するまで我慢して下さいね?」
「己の欲望を封じ込めるべきか。そうだ……それしかもう方法は無い」
「なので颯流とするようになったらピルを服用しますね。用意はとっくに出来てるので気が向いたらいつでも来て下さい」
「もう僧侶になるしかない。己の底から湧き出してくる性衝動をダンスするエネルギーに昇華させるんだ……」
「いえ、彼らの墓場はティッシュではなく私の卵管内にすべきです」
「っ!? だからしねえって言ってんだろ!」
至近距離まで詰め寄られたせいでやっと正気に戻れた気がする。
いや危ないぞこれは。
そもそも欲望を断ち切るだなんて月愛が家にいる限り無理じゃねえか。
初手から完全に詰んでるぞ……どうすれば良いんだ。
「まあそんなことよりも手を洗いに行きましょう」
「……そうだな。分かったよ今から行く」
「はい、それでは一緒に行きましょう」
月愛と一緒に1階にある洗面所へ行って水で洗ってから石鹸で綺麗に磨き始める。
俺の家の洗面所は結構広いからな、月愛も隣で手を洗う分には広さに余裕がある。
彼女も両手を水にかざして石鹸で手を綺麗に磨き始める──
「なっ!?」
「手を離そうとしないで下さい颯流、一緒に手を洗いましょう?」
「なんでそうなるんだよ! 汚いから手を離せって!」
この女、何を考えてるのか俺の両手を捕まえて一緒に洗い始めたぞ。
『一緒に手を洗おう』ってこういうことじゃないだろ。
手全体から何だか妙にこそばゆい感覚を覚えながら手を石鹸で洗う羽目に。
ぬるぬるした感覚が俺の手を縦横無尽に駆け巡ってもどかしい感じがする。
「何を言ってるんですか、今まさに殺菌をしてる最中なんですから綺麗ですよ。んふふ……セチ菌たちが私の手で生命を終えられるだなんて光栄でしょう?」
「だからセチ菌言うな鬱陶しい」
「へ〜颯流はこの程度のスキンシップだと余裕なんですか?
「当たり前だろ、普段のお前のスキンシップと比べたら何ともないな」
「そうですかぁ? 表情は余裕そうですが、本当は照れてるんじゃないですか? 優希ちゃんという好きな人がいるはずなのに、一々ママに照れてるだなんて〜」
そう言いながらも月愛に手を洗われるところを凝視するしか無い。
『ヌプッ、チュプッ、スプッ』と摩擦音を発しながら手を動かし続ける月愛。
女の子にされるがままになってる姿を見て体温が上昇するのを辞められない。
それにめっちゃ恥ずかしいぞこれ。
「……断じて照れてなどいない」
「ほらほらどうですか? 気持ち良いですか〜?」
「手洗いに気持ち良いも悪いも無いだろ」
そう言いながら底意地の悪い笑顔を浮かべながら心底楽しそうな表情をする月愛。
明らかに困ってる俺を楽しそうに観察してやがるなコンニャロ。
「体は素直なようですね。少しずつ顔が赤くなってるの丸わかりですよ?」
「怪力ババアのマッサージが強過ぎるせいで血圧が上昇してんだよ」
「アハっ。言い訳としては見苦しいですね。耳も赤くなってて可愛いですよ」
「……っ」
「それじゃあリクエスト通りにちょっとマッサージして行きますね」
「いや頼んだ覚えは無え──ひゃっ!?」
今度は片手で恋人繋ぎして指の間をしっかりマッサージして、もう片方の手でグーで手の甲をゆっくり押し当てたり。指の付け根を揉みほぐしたりしてくる。
「んふふっ。随分と気持ちよさそうな声をあげますね颯流」
「っ……いきなり過ぎてビックリしただけだ」
「それにしては感じてたようですが?」
「お前、無駄に特技多過ぎだろ」
「多いに越した事は無いでしょう。……それに何だかいやらしくてエロいですね?」
「この野郎」
なんで月愛のやつはそうも余裕ばかりなんだよ。
こんなむず痒い快感を異性と与え合っててびくともしてないのは納得行かない。
息子で遊びやがって舐めるなよ。
こうなったら俺もやり返してやる。
石鹸でスベスベしていて柔らかい月愛の手を握ったり指先に力を入れて這わせる。
俺も更なる快感に襲われてるわけだが、流石のお前もまいるだろ?
そう思いながら月愛の顔にも視線を向けてみると──
「っ!?」
「……んふふ〜」
心臓が跳ねてしまった。
なんて可愛いらしい笑顔をしてんだこいつは。
頬も赤く紅潮しており気のせいじゃなければ瞳も潤んでいる気がする。
あ、これはヤバいやつだ。
俺は何かしらのスイッチを押してしまったかも知れん。
「颯流も随分と積極的になりましたね。これは颯流なりの前戯ですか?」
「落ち着け馬鹿野郎、そんな意図は微塵もなかったぞ」
「例え颯流にそんな動機が無かったとしても、伝え方が全てなのですよ?」
「チッ……お前の感受性が完全に変態のそれだということを俺は失念していた」
「いいえ至って正常ですよ。なのでもう何をされても文句は言わないで下さいね?」
「いや、だから──って何やってんだよお前」
今度は自分の指で輪っかを作って俺の指の付け根をぎゅっと握ってきた。
やや白くなるくらいに5秒ほど握っては次の指を握り続けるのだ。
悔しいがこれが妙に気持ち良くて、次第に脱力してしまってるのがわかる。
こいついつの間にこんなマッサージまで覚えてるんだよ。
「んふふっ。どうですか? キュ〜って閉まるのが気持ち良いですよね? けれど本物の締まりが伴う快感はこんなものじゃありませんよ〜?」
「っ……本物ってなんだよ」
「んふふっ。乙女にわざわざ言わせたいのですか?」
「今更すぎだろ。いや言わなくて良いから」
「ふ〜ん? それじゃあ、えいっ!」
「なっ!?」
トドメと言わんばかりに月愛が指で作った輪っかを上下に動かし始めたのだ。
ある程度の握力を維持しながら指の付け根から爪辺りまで上がっては降りてくる。
石鹸で表面がスベスベしてるせいでいやらしい程に順調に滑っていく。
これじゃあまるでアダルト動画で見るような前戯のそれだ。
「んふふ……颯流、どうですか? ……はあっ、これは丸で俗に言う手コ──」
「言わせねえよ!! それと変な喘ぎ声も出すなって」
「それじゃあもっと早くしちゃいますね。んふふっ、もうでそうなんですかぁ?」
「爪の間のゴミならもうとっくに出てるわ! ってもう良い加減にしてくれっ!」
「ひゃ〜っ!」
勢い良く月愛の手から引っこ抜いたせいで石鹸が床にポトリと落ちたようだ。
いや良く見てみたら月愛の服や頬にも何個か塊が飛んでしまったようだ。
それを蕩けたような笑顔で見てから口を開く月愛。
「颯流の白いのがいっぱい出ちゃいましたね、おまけに顔射に腹射だなんて」
「それらが石鹸以外のものに見えたらお前は今すぐに眼科に行くべきだ。いやさっさと行け」
「おまけに自分はイかされたんだから、月愛もイクところを見せろと言うんですね? いや〜ん積極的で素敵ですね、早速これからしましょうか」
「頼むから会話のキャッチボールをちゃんとしてくれよっ!!」
必然的に聴覚も腐ってしまっているわけか、流石に参ったなこれは。
いつまでもここに居たら更に俺のリビドーに負担がかかってしまう。
もうさっさとこの場を後にすることを決断。
急いで手を洗って月愛の奥にあるタオルへと手を伸ばす。
「そんなに慌てないで下さい颯流、本当はもっとして欲しいんじゃないですか?」
「そんなわけないだろ。とにかく退いてくれ、ってオイ?」
「へ──きゃっ!」
「うわっ」
急に月愛が俺の進路を塞いで来たからそれを避けようとしたら足が滑って転んだ。
床に石鹸の残骸が残ってたのを完全に失念していた……我ながらドジだな。
けれど何だろうこの感触は……ムニュっムニュっ。
こけたせいで
俺が月愛を組み伏せるようにして、おまけに右手が胸を鷲掴みにしてると。
「ご、ごめん月愛!」
「んふふっ。本当に積極的ですね……もういっそここでヤリます?」
「アホかしないって言ってんだろ!? つーかさっさと手首離せって!」
「嫌ですよ〜ん」
そう、この女と来たら俺の手を胸に押し込むようにして上から押さえてるのだ。
まだ手を拭いてないせいで俺の手の水分が全て服に吸収されている。
つまり何が起きてるかというと、大人っぽい下着が一部くっきり見えてるのだ。
ブラの感触も一層強くなってるからさっさと離したいんだが──
「どうですか? ママらしく大人っぽい下着を揃えました。似合ってるでしょう?」
「俺の美的感覚を追求する前に手を離せって」
「良かったじゃないですか、タオルを使う手間が省けて。今後も遠慮なく私のシャツをタオル代わりに使って頂いて構いませんからね?」
「うるせえな、しないって言ってんだろ」
どこまで俺の性衝動で弄んだら気が済むんだよこの女は。
そろそろ心の悪魔の囁きを振り払うのも辛くなってきたぞ。
ああしたいな……この柔らかいのをもっと堪能したい……月愛ならきっと──
だから黙れって言ってるだろ悪魔が、俺の目的を思い出せ。
そう、俺は木下さんと結ばれるんだ。
何があっても俺は童貞を好きな人に捧げる。
そう自分を落ち着かせてると、月愛が上半身を起こして妖艶に笑った。
「いけない子ですね人妻に手を出そうだなんて──パパには見せられませんね?」
「〜〜〜〜っ!!」
冗談を言ってるようで瞳の奥で情熱的な炎を感じた。
これ以上ここにいたら確実に理性が溶かされ切ってしまう。
母親に反抗する子供の如く腕を勢い良く振り解くとすぐに逃げ出した。
「あっ。あらら……あともう少しでイケそうでしたのに」
「なわけないだろ!」
「あああ〜颯流、手はちゃんと拭いてくださいね?」
「2階にもタオルあるんだよ!」
さっきから心臓が本気でうるさい。
それに何なんだよ月愛のやつどこまでも俺を追い詰めやがって。
びしょ濡れになった服の上から鷲掴みにしたブラと胸の感触が消えん。
「く……っ」
いよいよ本格的に頭がおかしくなりそうなくらいに辛くなってきた。
もうこれ以上はやってられん、猛烈に気が引けるが明日の昼休みにトイレ行くか。
公共の場で抜くなんざ今までやったことないが……背に腹は変えられん。
【──後書き──】
今後もセチ菌登場させたいと思います。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます