第10話 冨永月愛は敵愾心を燃やす。「最終的に勝つのはこの私ですから」


※月愛視点※


「あの女……確か……颯流と同じクラスの木下優希でしたか……」


 裏庭にある木々の隙間からこうして覗いてますが、本当に颯流と楽しそうに話してて猛烈に不愉快な気分になりますね。いえ不愉快を通り越して私ははっきりとあの女に対する感情を『憎悪』だと自覚できました……本当に忌々しい泥棒猫ですね……。


 いつからあの2人があんなにも親密になり始めたのかは知る由もありませんが、颯流の態度が普段とは全く違うことが分かりましたよ……颯流が私にあんなにデレデレしながら話すこともありましたが終始あんな颯流は今までに見たこともありません。


 どうして今までに私にしか見せてこなかった愛情を他の女にも注ぎ込むようになったんですか。何故他の女の横顔を見つめてるだけで顔を赤くしたりするのですか。なんであの女は私の大好きな男の子に色目なんかを使ったりしてるのですか。


「どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてっ──クッ!!」


 あれが……アレが私の恋路を邪魔しようとする障害物ですか……っ。

 アレが颯流に照れた笑みを見せてるだけでも強烈な怒りを覚えてしまいます……無意識に作っているこの握力をアレのおっぱいに当てたら握り潰してその立派そうなFカップをマイナスDカップに出来そうですね──ふーっ、一旦落ち着きましょうか。


 今すぐにでもアレをブラックホールまで蹴り飛ばしたいのですが、暴力だけは絶対に辞めるべきでしょう。日本で殺人が許されるはずもありませんし、何より自衛するための手段を攻撃に使っては私の美徳に反します……ここは頭脳戦で勝負でしょう。


「アレのプロフィール……たしかダンス部に入ってましたね」


 独断と偏見でアレの生態を分析するに物凄く頭が悪そうで脳内がお花畑でしょうね。ダンス部に入っててガールズヒップホップを習ってるようですがその動機が青春を求めてのもの……まあ清々しい程に一般の女子高生じみた思考回路のようですね。


 1学期の成績は320人中の200位より上に食い込んだことはなく、1年3組つまり颯流と同じクラス。出席番号11番。自宅は東大阪の八戸ノやえのさと駅から徒歩5分の位置。両親に3歳の弟がいる4人家族。趣味は読書だが私と違ってラノベも好物。


 好きな固形物はケーキ。飲料物はバナナ&ミルクジュース。最近の悩みは自分の体型。性格は天然バカでクラスでは姫様のような存在。将来の夢はお嫁さん。スリーサイズはバスト88、ウエスト63、ヒップ89。パイパンの私と違って陰毛ボーボー。メイクでニキビを隠してる。本人曰く自称Mらしいですが処女で恋愛経験ゼロ。


「当然でしょうね、外見でモテてもムダ毛の処理すら出来ないお子様なんですから。そんな草むらのような下半身を見られたら勃起したはずのおちんちんが萎えるに決まってるじゃないですか、そんな体で颯流とセックス出来るとでも思ってますか? ふふふっ。今はお前が一歩リードしてるようですが最終的に勝つのはこの私ですから」


 懐に上手くつけ入れたのか今は颯流がアレに惚れていることは知っています。そして状況では圧倒的に私が不利……何故なら颯流の恋愛ルールに照らし合わせるとあの2人が付き合い出すのは恐らく時間の問題。けれど何も悲観することはありません。


 恋愛は戦争だという言葉の通り、例え初陣でこっ酷く敗北を喫したとしても何度でも戦いを挑めば良いだけの話ですから。フラれてもゾンビのように何度でも立ち上がれるのは女の特権ですから。想像しただけで虫唾が走りますが、仮にファーストキスを奪われても私が上から自分の唇で記憶を塗り潰してあげれば良いだけですから。


 それから時が経ち秋になると忌々しいことにアレが颯流のことを下の名前で呼び始めましたが、私の方も学校の外で颯流と距離を詰めることを怠りませんでした。それでも颯流の中でアレの存在がどんどん大きくなっていたことが分かりましたが、もうお遊びはここで終わりです。無事に留年出来た今もう全ての準備は整いましたから。


「んふふっ。ちゃんと言いつけ通りに颯流と同じクラスにしてくれたようですね♪」


 教員たちの上層部をほんの少しだけ脅してあげると私の希望に寄り添ってくれたようですね。これで今年から颯流と一緒に学校に通って同じクラスに通えるようになりました。それに学校では今までひたすら存在感を隠し続けましたので、もう自分を偽らなくても良いのは清々とした気分ですね。アレも同じクラスになりましたが。


 颯流に留年したことを報告すると酷く困惑したようですが「この1年間は収入を増やすことに集中してましたので」と言ってあげると呆れながらも一応の納得はしてくれたようです。そしてまた時が経って2週間前に私の宣戦布告が始まりました。


 んふふっ……颯流は無理難題だと笑い飛ばしてましたが、私が空港に現れたときの呆けた顔と来たら傑作でしたからね。あれだから颯流を驚かせるのが辞められないんですよ〜。まあ私がどう颯流のパパを見つけ出せたかというとあのお方の力ですね。


 彼女に少々衛星をハッキングさせて冨永克樹さんの居場所を暴いて頂くと、私専用のジェット機を用意して下さると私をオーストリアに連れて行ってくれたので感謝しかありません。また今度会うときにお土産を沢山贈りましょうか。


「こんにちは、あなたが冨永克樹さんですよね。私は松本月愛と申します。どうぞお見知りおきを」


 彼と会ったのはあのお方の言う通りに丁度仕事帰りで1人バーに来ていたときでした。彼と最後に会ったのは幼稚園の頃に颯流を直々にお迎えしに来たとき以来でしたから酷く驚かれましたね。それで困惑する彼に私がある提案を持ちかけると彼は喜んで約束をして下さり、私たちは形式上だけ結婚することになりました。


 颯流曰く彼は物凄いヤリチンとのことでしたがそれを裏付けるかのように、私が向こうで滞在してた3日間だけでも2桁の女性と寝ていたようですね。「そんな男と結婚したら月愛の腰がぶっ壊れちゃうぞ?」とあのお方に揶揄われましたが、彼との契約でそれはあり得ませんし、私は颯流以外の男に体を許すつもりは毛頭ありません。


 それが颯流のパパ(──いえ仮にも夫になりましたね)と交渉するのに1日しか掛からなかったので残り2日は1人で楽しく観光したりあのお方と美味しいご飯を食べに行ったりしましたね。それで私は帰国すると颯流の継母となり今に至るわけです。


「……んふふっ……これからもママがどこまでも深い愛情であなたをドロドロに溶かしてあげますので、覚悟してて下さいね颯流♪」


 あらら、今までの過去を振り返ってるといつの間にか夜の2時を迎えましたね……結局私の提案で颯流にゲームを持ち掛けたあと彼は自分の部屋でぐっすりと寝始めました。んふふ……彼は私の提案をむしろ望むところで受けてくれましたが甘いですよ? あなたの男性器に触れないことしか私にはハンデが無いのですから。


 逆に言えばあなたのおちんちんに触れる以外に私はどんなことをしても良いということなんですよ? それ気付いてないのでしょうか。アハっ。もうこれからが楽しみでまだなかなか眠れる気になりませんね……明日に遠足がある小学生のようですね。


 そういえば最近の私は準備やら忙しさでゆっくりできる時間が少なかったのでご無沙汰ですね……再び思い出しましょうか、私が颯流に惚れた経緯を……今まで嫌悪してきた男性という枠の中から颯流だけが外れるどころか、私は彼を求め始めました。




「はあっ……颯流……颯流ぅ……」




 今までずっと私とエッチしたいと陰で言ってきた男子も直接告白しに来た男子も吐き気を覚える程に皆心底気持ち悪かったのに、その発言者を颯流に脳内変換したらまあ〜。過去に私のパンツでオナニーしてたこともありますし、こうして同じ屋根で暮らすようになった今再び大人のトラップを仕掛けたら食い付いてくれるでしょうか?


 やり方を覚えている指がパジャマの裾を少しだけ上げて腹部下へ滑り込ませるとさわさわした感触を楽しみ、やがてじんわりと熱を帯びて来たので中に差し込みます。それから片手で服を捲って胸を包むように触れます。家では基本的にノーブラなのでいつも手間が1つ省けますね……微力を込めながらゆっくりと回していきます。


「欲しいですよ……今度は直接っ……挿れて下さいよ……」


 颯流が直接私の体の隅から隅まで口を這わせる場面を想像してみただけで体の発熱が止まりません……やっぱり男だから颯流なら少し乱暴に触ってくるのでしょうか……再現してみただけで身体の震えも止まらなくなりましたね……股の間から背中を経由して脳天を駆け抜ける甘い痺れがどんどん強く、勢いも増して来て──


「遠慮せず……動かしてくらしゃい……」


 やがて先端の突起がむにゅっと尖り始めたのでそれを掴むとむず痒い刺激が広がっていきます。下の指も奥へ伸ばすと2年前にインフルエンザにかかった颯流のおでこのように熱くて、より興奮しました。ひだの上から軽く押すように指を動かすと、奥に隠れていた敏感な突起にも刺激が伝わってお尻の筋肉がキュッと締まりました。


「んっ……せしりゅ……もっとしてくりゃしゃいよ……」


 指を動かしてるとやがてにゅるん、とひだの間に飲み込まれて内側からぬるぬるとした液が滲み出てきたので合わせ目を解きます。この指が颯流だったら……もっと激しくなってたのでしょうか……いえきっと彼なら優しくゆっくり動かすでしょう。彼の指を想像しながら指の腹で皮に包まれたしこりをクチュッと音を立てて弾くと──


「んっ!?」


 本当に危なかったです……胸を弄っていた手を瞬間的に口元に当ててなかったら私は普段のように大きな声で喘いでしまうところでした……颯流が今眠っている寝室は元々彼の両親が使っていたこの寝室の隣なので、起こす可能性があるかもでした。


 でもこれがスリルが刺激に変わるメカニズムなのでしょうか……声を上げたら颯流が起きるかも知れないと理解していながらも皮膚の上からしこりを刺激する指が止りません……もどかしいですが直接触ると確実に口を覆っている指の隙間から喘ぎ声が漏れてしまうのでダメですね……それでも甘い電気が脳天を突き上げていきます。


「孕みたい……孕まれたいれしゅよ……」


 颯流の子を身籠れたらどれほどに幸せなことでしょうか……もちろん結婚するまではお預けですがいつか産みたいですね……ああそれはヤバいです……颯流のこと以外もう何も考えられなくなっちゃいます……『月愛、俺と子供を作ってくれッ!』──


「ン〜〜〜〜〜〜ッ!! …………はぁーっ、は〜っ……」


 颯流が真剣な表情でそれを言う場面を想像したら一気に強烈な快感の波が押し寄せて来て腰が勝手に海老反り、喉の先端もグッと上がって熱い吐息が漏れました。寝かせると深呼吸をしながら息を落ち着つかせます。……今日はもうここまでですね。


 生まれたての子鹿の如くプルプルと揺れる身体を落ち着かせるためにうつ伏せになると、次第に収まったので脱いだパジャマを着直すと颯流の部屋に向かいます。どうしてかと? んふふっ、朝起きたら隣に私が居たときに驚いた反応を楽しむんです。


「あら?」


 ドアを開けようとすると内側から鍵が掛かっていたので思わず苦笑します。全くガードが硬いんですから……けれど今日からもう通用しませんね『──がチャリ』……何故なら私にはこの家のありとあらゆるロックを開けられるマスターキーが有るんですから。この家の支配者の権限を私に移譲した時からもう逃げ場はありませんよ〜♪


 すると案の定気持ちの良さそうな笑顔を浮かべていたので、私は自分用に持ってきた枕を置くと布団を捲って颯流の真横で一緒に布団に包まれました。ス〜ハーっ……んふふっ、私の大好きな匂いに包まれながら眠れるなんてこんなに幸せなんですね。


 本来ならここで夜這いをかけて長年の悲願が達成出来るというもの……ですがゲームを盛り上げるためにあえて襲いません。何故なら颯流がアレに向けてる恋愛感情を私に向けて頂けるようにしないと旨味がありませんから……それでは寝ましょうか。


「チュッ♡ おやすみなさい、颯流」


 颯流の額におやすみのチュウをすると私も目を閉じて熟睡につきました。




【──後書き──】

 カクヨム様から警告が来たら月愛の自慰シーンをもっとマイルドに修正しますが……。流石にアウトでしょうか……? 読者の皆様はどう思いますか?

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