地球人 よそから見れば 宇宙人

長月瓦礫

地球人 よそから見れば 宇宙人


「ブラッドさんって本当に地球人なんですか⁉︎」


ブラディノフに詰め寄ったのは1階に住むスピカだ。

ヴァルゴの孫娘であり、マンションの住民たちに可愛がられている。

そう聞いていたが、反抗的な態度を見せている。


『こんなところに何しに来たんですか?』


開口一番に言われてしまった。いわゆる反抗期だろうか。

見た目は十代半ばくらいだから、そのような態度を取ってもおかしくはない。

初対面の相手に向ける態度ではないが、何も言わないでおいた。


見知らぬ星から旅行客が来て気に入らないのだろう。

見どころがないのであれば、余計に疑問に思うはずだ。


「正真正銘の地球人だよ。パスポート見せようか」


「別にいいです!」


そっぽを向いてしまった。


「おじーちゃんから地球人は種類が多いって聞きました!

けど、白い髪に赤い目って聞いたことないです!

染めてるんですか? そんなんでカッコつけてるつもりなんですか?」


「染めてもないし、カッコつけてもない。

生まれつきだから、こればかりはどうしようもないんだ」


「ていうか、何で牙が生えてるんですか! 食生活どうなってるんですか!

偏ってるんじゃないですか⁉」


「何でって言われても……」


「料理する時香辛料とか絶対に使いませんよね⁉︎ 特にニンニクとか!

この前食べさせてもらったヤツ、薄味でびっくりしました!」


「香草類が苦手なだけだし、そもそも調味料が言うほど揃っていないだろうが」


料理は上手ではないほうだが、この星だと評価は一変する。すべてが水の底に沈み、長時間かけて料理する技術がない。


数少ない食料を組み合わせるしかない。

誰もがぎりぎりで生きているから、そこまでの余裕がないのだ。


それにしても、いろいろなことをよく見ている。

賢い子だなあとのんびり考えていた。


「その割には完食していたな」


「はい! とても美味しかったです!」


「それはよかった」


ブラディノフは何度もうなずいた。

育ち盛りだからか、鍋を綺麗に空にしてくれた。

これほど嬉しいこともない。


「あと、ずっと思ってたんですけど!」


「なんだ」


「何で毎晩月を見てるんですか!

月光発電機でも搭載されてるんですか!」


「そんな発電機は地球にもない。月が三つも並んでいたら誰だってそう思うだろう」


「その割には静かですよね!」


「そこにアイドルはいないからな」


「夜遅くまで起きてるから朝ごはんとランチが一緒になるんですよ!」


ぐうの音も出ない。

なぜ旅行先でも責められなければならないのだろう。


この星は夜になると月が3つ並ぶ。

毎日それぞれ違う形で現れるから、見ていてまったく飽きないのだ。


「ところで、今日のおやつはパンケーキにしようと思うのだが」


「ありがとうございます! いただきます!」


食べ物には逆らえない。

自分の胃袋にはどこまでも正直なタイプのようだ。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

地球人 よそから見れば 宇宙人 長月瓦礫 @debrisbottle00

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説