File.04 復活(前編)



 ピッピッピッ

 電子音が聞こえる。

 それからわたしの顔を覗き込む顔もいくつか見える。

 それから、すごく眩しい

 わたしの意識はまた、深い闇へと

 落ちていく。



 目を覚ます。体の節々が痛い。わたし‥‥は?

 そこまで考えると、また意識を失ってしまう


 目を覚ます。さっきよりも少し意識がはっきりしている。わたしは藤宮なずな。15歳。うん。思い出せる。

 ここはどこなんだろう。

 周りを見渡そうとしたが、身体は思ったように動かずまたもや視界が暗転してしまう。



 そして意識を取り戻したり、失ったりしながら、わたしは体感で言うと丸2日くらいかけて完全に覚醒した。

 どうやらわたしは死ななかったようだ。


 わたしは今、6畳間位の白い部屋の中にぽつんと置いてあるベッドに横たわっている。動きたいが、まだそれほどには身体が思うように動かない。


 ん?

 ‥‥あれ?


 身体が‥‥ある。

 わたしはあのロボットによって殺されたはず‥‥いや、今現にこうして息を吸って生命活動をしているんだから、訂正しよう。わたしはあのロボットによって全身を粉砕とは言わないにしろ、ばらばらもいいところにされたのではなかったか。


 誰がそんな奇跡みたいなことを?


 というかそんなことが出来るならどうして隠されてた?だって、こんな技術があったんだったら、交通事故で虫の息になった人でも簡単に戻すことが出来るのだろう。


 かなちゃん達は?


 わたしが意識を失う前に走ってきているのは見えた。ただ、これは考えても考えても一人じゃ結論は出ない。この疑問は考えるのは後回しにしよう。


 そして、最大の疑問。


 なんで?


 全ての疑問はこの一言に収束する。

 なんでこんな冴えないどこにでもいるような少女を?なんでわたしは襲われた?


 よく分からない。


 そんなわたしの疑問は消えないまま、ただ何もできない時間を悶々と過ごしていると病室と、廊下と思われる通路の間にあるドアに取り付けられたガラスに人影が。そして、ガラガラと何の気はなしに開けると次の瞬間に驚いた顔を浮かべ、


「ワァーッ!患者が、藤宮薺が起きています!先生、早く!」


 そうやって叫ぶ。

 いや、誰?


 見たこともなければ話したこともない女の人。ただ、すごーく美人。端正な顔をしている和風美人。そんな人がわたしを見て驚いている。

 いやいや、驚きたいのはこっちの方だ。

 本当に誰なんだね。あなたは。


 パタパタとスリッパの足音が近づいているのが聞こえる。

 そして、ひょっこりと女の人が出てきた。

 髪はぼっさぼさでメガネをかけている。もとは美人なんだろうけど、その格好のせいで残念美人となり果てている。


 どうやらこの人がわたしのことを元に戻してくれた医者らしい。


「よっ。藤宮ちゃん、様子はどうだ?」


 いや、おったまげた。まさか担任の会津先生だったとは。

 いつも先生は髪を整えているから分からなかったのか。確かに目元に面影が残っている。


 驚くわたしを尻目に、先生はベッドの隣に置いてあった椅子を引きそこに腰掛けると、どんどんわたしに繋がれている計器の数値を持っているバインダーに挟んだ紙にメモってる。


 様子というか‥‥もうこの状況が全部分からないこと尽くめで逆に分かっていることを挙げた方が速いくらいだ、と冗談も交えて話そうとしたが、わたしの喉は思った通りに発音してくれなかった

(この時には知らなかったが、私が襲われてから実に一週間近く経っていたので喉が正常に動く方がおかしいのだ)。


「あぁ。すまんかった。まだ全快じゃないもんな。そんじゃひとまず、藤宮ちゃんが気になりそうな事を言っていくよ。」


 そういう言葉と共に、先生はわたしの持っている疑問点をほとんど解決してくれた。


 まず、わたし達のいるところは、あのロボットに襲われた山の頂にある研究施設だという事。

 その研究施設は、体面上は研究施設だが、本質上は要塞のようなところであるという事。正確には要塞というよりも城壁みたいなものだが持っている戦力的に要塞の方が近いらしい。


 勿論、何から人を守るのかは言わずもがな、あの恐ろしいロボットからだ。

 なかなか状況を理解できていなさそうな様子のわたしを見て(この時にはもうわたしは首ぐらいはほぼ自由に動かせるようになっていた)、あとで見せた方が早いか、と先生は呟いた。


 それから‥‥


「山に入っていったあなたたち五人のうち、死者はいないわ。」


 会津先生からまさかの神のお言葉が聞こえた。彼女によると全員が保護、又は救助されたらしい。

 あの状況から考えると、まさに奇跡だ。


「さて、藤宮ちゃんも元に戻ってきたことだしわたし達の置かれている状況について説明しなくてはいけない時が来たのかもしれないわね。

 かなえちゃんの話もしてあげる。心配でしょ?

 ついてきなさい」


 そう言うと、会津先生は立ち上がりドアを通って廊下を歩いて行った。


 いや、この状況でどうやって考えればわたしが付いて行くことが出来るとお思いで‥‥と思っていたらさっきの和風美人看護婦さんAがベッドを押して、運んでくれた。あ、車輪がついてたんだ。


 連れていかれている最中に廊下からガラス越しに外を見ると、そこは‥‥


 大きな倉庫?基地?みたいなところだった。

 全体が薄暗く、なんか全体的に灰色のコンクリートがむき出しになっていて、おしゃれとは言い難い空間だ。

 そして、巨大換気扇が動いているような轟音がしている。


 イメージで言うところの、まさしくロボットアニメとかで出てきそうな基地だ。

 そこには謎の30メーター位の巨大な物体がある。あれは何なんだろう。


 そんなことを思っていると、その廊下の突き当りにある巨大なドアの前に先生は立つと何やらポケットからカードキーらしきものを取り出すと、スキャンした。


 大きな起動音と共にドアが動き始める。


 そこの部屋の中には‥‥

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