File.01 序章
それは、いつも通りの一日だった。「あの時」までは。
「藤宮ちゃんおはよう。」
そんな声と共に、ぱこんと頭を叩かれた感覚がして深く沈み込んでいた私の意識は一気に覚醒へと、持って来られる。
飛び起きると、目の前にいたのはいつもみたいに叶ちゃん‥‥‥じゃない!担任の会津先生がいる。
見回してみると周りの席には同級生たちがいて、わたしを見て笑っている。どうやら、わたしはまた苦手な数学の授業中に眠ってしまっていたらしい。
恥ずかしさに頬を真っ赤に染めているとその時文字通り、救いの鐘の音が聞こえた。
ああ、助かったぁ…なんて思うのもつかの間、先生からの非情な宣告を受けてしまう。
「あら、鳴っちゃった。じゃあ‥‥眠るほど退屈していた藤宮ちゃんには今度の授業の前に今の問題の正しい回答を黒板に書いておいてもらいましょうか」
うぅ‥‥‥
「それでは今日の授業はここまでとします。じゃねー。あぁ、くれぐれも藤宮ちゃんは一人で問題を解くように。一人で。いつもみたいに叶ちゃんに頼っちゃいけないですよー!そんじゃ、また。」
うぅ‥‥‥‥‥‥‥‥‥
とまあこんな感じの(いつもだと困るんだけど)日常が始まる。わたしの名前は藤宮薺。得意なことは‥‥‥何かなあ。兎に角、そんなこんなで毎日を楽しく過ごしている、どこにでもいる15歳。
「大変だったねえ。なっちゃんが寝てたから先生に気付かれる前に起こしてあげようとしてたんだけどその前に気付かれちゃった。えへへ」
そんな可愛らしい声と共にやって来たのは、わたしの親友でさっき先生が言っていた叶ちゃん。
背はわたしより少し高く、容姿端麗で頭が良いうえにメガネのドジっ子という男子生徒の心を釘付けにしない要素はないスーパー少女だ。
そして胸がデカい。く~、羨ましいっ!
「しょうがないじゃんかよ~先生の言っていることの半分も理解できないんだから」
「え?またなの?しょうがないなぁ。かなちゃんの分かり易い解説授業が必要かな?」
と、少しはにかみながらも嬉しそうに応じる叶ちゃん。うん。可愛いぞっ
じゃあお願いしよっかな、と答えようとしたらそこに闖入者がやって来た。
「よっ。ねぼ助」
「こんにちは。なずなさん」
2人は、うちの学校の中でも特に仲のいい姉妹コンビで、わたし達のグループに欠かせない存在だ。元気いっぱいで運動神経抜群のクラスの人気者、千夏といつも本を読んでいる、寡黙な涼華。正反対の二人だがいつもべったりくっついている。
一人っ子のわたしには羨ましい限りだ。なんて思っていたら、後ろに小さなかわいらしい気配を感じたので振り返ってみると、
「なっちゃん、また寝てたね」
うるさいっ!かわいらしくない言い方だなぁ!
なんか生意気な言い方をする少女。彼女はわたしらの中で一番小さい、我々藤宮グループのアイドル、棗。ちょっと泣き虫だから、アイドルというよりも小動物かもしれない。
口数はすこしだけ少ないかも。
棗に気付いた千夏が口を開く。
「お、なつも来たか。そんじゃ全員そろったという事で」
続ける。
「今日あたしと涼華、暇だからさぁ。放課後にどっか行かねーか?」
今になって思ってみれば、あの時の言葉が全ての始まりだったのかもしれない。
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