第10話 僕の従魔
「ミィ…」
どうしたの?どこか痛い?
「ミィ…」
どこか怪我したのかな?おいで、ミィ。
「ミィ…」
よしよし。大丈夫だよ、すぐに治してあげるからね。
「ミ……ィ……」
……え…、あ…っ…なんでこんな…
だめ…目を閉じちゃだめだ!!
ミィ!!ミィ!!!!!
「ミィっ!!!!!!っっ!!」
目を開くと、そこは見た事も無い場所だった。
両足に激痛が走り、思わず両手に力がこもる。
「ああ〜ダメですよぉ、動いたら傷が広がっちゃいますぅ」
「っわっ!?」
間近からいきなり声を掛けられて、驚きに身体が強張る。
「わたし〜、魔族なので人族の使う聖なる力は使えないのですよぉ。ごめんなさいぃ」
間延びした口調、柔らかな印象を与える垂れ目、ふんわりとした金の髪を肩の辺りで揺らす彼女の背中からは、細く黒い翼がはえていた。
「…ここは、どこですか?」
「ここは魔王様のお城にある診療部屋ですぅ。ボロボロだったあなたを、魔王様が連れて来られたのですよぉ」
柔らかな微笑みを浮かべながら、こちらを見つめる彼女からは特に敵意も感じない。
むしろ、親しみすら感じるくらいだ。
「私はフィオーレと言いますぅ。そうそう、あなたの従魔には外にある魔物小屋で専門の者に世話を頼んでありますので、心配ないですよぉ」
その言葉を聞いて安心した。
そっか、あの子も無事だったのか。
「…あの、少しだけ、顔を見るだけでも良いんです。あの子に会わせてもらえませんか?無事な姿を見て安心したいんです」
懇願する僕に、彼女は困ったように眉根を寄せた。
「両足共にひどい怪我をされていますし、今無理をしたら後遺症が残るかもしれません。医師としては許可しかねますぅ」
「あ、、じゃあその、あの子の怪我がひどくないなら、ここに連れてきてもらうことってできませんか?」
あの子なら僕に危害を加えなければ人懐っこいし、抱きかかえて連れてくることも出来るはず。
そんなことを考えていた。
「えっ?無理ですよぉ!翼竜なんて、とてもじゃありませんが連れてくる事は出来ません!お城が壊れちゃいますぅ」
あの時の光景が、絶望が、蘇った。
「うわああああああっ!!!!!」
ミィ!
ミィ!!
ミィ!!!
僕の従魔。
僕の大切な家族。
皇子が吹き飛ばされて、
剣士が庇って飛ばされて、
聖女が怯えて動けなくなり、
魔法使いに…
足を貫かれて囮にされた
ミィの契約を解除した
でも…ミィは、
僕を守ろうとして翼竜に殺された
ミィ…
君さえ生きてくれたら僕は
僕は
こんなにも憎悪に塗れる事はなかったのに。
怒りで目の前が真っ赤になる。
そうだ。
僕の従魔は
ミィを殺したあいつだ。
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