第9話 エレオラ
(皇子パーティサイド)
エレオラは生粋の貴族令嬢であり、未来の王子妃だ。
ミッドウェー家の一人娘であり、第二皇子ルーカスの婚約者。
相応の教育を受けており、文武に優れたルーカス皇子の隣に並び立つに相応しい実力を持っていると自負している。
だが、自身の力に慢心はしていない。
だからこそ今回の翼竜討伐に関して、いざというとき囮に使えるように、平民であり低ランクの、ギルドから疎ましく思われているような従魔術師をパーティに引き入れるよう手引きをしたのだ。
低階級を支援する為と言えばルーカス皇子もミナも納得した。
ラクスだけは怪しんでいる様子だったけれど、皇子が良いと言えば従った。
クエストに向かう道中、ミナもラクスも従魔術師を気にかけてくれたおかげで大したロスも無く順調に進むことができた。
エレオラ自身もルーカス皇子と2人で話したりと、とても有意義な時間を過ごせたと思っている。
心穏やかな時間は、最初の戦闘時に崩れた。
襲ってくる敵を迎え撃つ事も出来ず、連れの黒猫族共に完全なる役立たず。
エレオラの心がドス黒く染まっていく。
役立たずと詰る自分に言い返す事もせず、俯くだけのその姿にイライラが募る。
足手まといだとここで切り捨ててしまいたい。
けれど皇子達がそれを許すはずがない、彼らは本当に純粋で…穢れを知らない。
我慢して渓谷まで共に来た。
木陰になっている場所にある巣には悍ましいものが転がっていたのでフレアで焼き払う。
醜いものは見たくない。
巣を出て皆で話し合い、予定通り従魔術師を囮に使い賢しい翼竜をおびきよせる事になった。
ミィ、ミィ、と煩い猫は連れて行ってくれて清々した。
ミナに預けるなんて事にならなくてよかった。
従魔術師を囮に使って釣った翼竜を倒したら、それを更に凶悪にした翼竜が現れ皇子を吹き飛ばした。
恐ろしかった。震えが止まらなかった。
役立たずの従魔術師が耳障りな声を上げるから氷の矢をぶつけた。
エレオラの頭に名案が浮かんだ。
この役立たずを、自分達が逃げる為の囮にすれば良い。
最初からそのつもりだったのだから、何も問題はないはずだ。
動けなくなった役立たずを置いて、ラクスに向かって声を出す!
「ラクス!ルーカス様とミナを連れて逃げなさい!この従魔術師を見捨てた責任は私が取るわ!」
こう言えばあなたは動きやすいでしょう?
ラクスが2人を連れて走り出したのを見て、エレオラも同じ方向に走り出した。
だって、皇子も聖女も代わりがきかないものなの。
ただの平民で役立たず。生きていてもなんの生産性もない従魔術師なら、見捨てたって構わないでしょう?
エレオラはその口端に笑みを浮かべた。
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