End3
選択肢分岐です。
選択肢1を選んだ方はそのまま読み勧めて。
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1:妬ましいと思った。
──妬ましい。
刹那、湧き上がってきたのは綺麗だとかすごいとか、肯定的な感情ではなくて。
嫉妬のような負の感情だった。
「え?」
そんなことを思った自分に驚く。
直後、疑問に思った。
この子は……前になんて言ってた?
俺の演奏を聞きたいのは、自分がまだまだだって再確認したいからだって言ってたよな。
まだまだ?
どの口がそれを言ってるんだ。
こんなパフォーマンス、俺なんかよりはるか高みにいるじゃないか。
その自覚、ないのか?
……いや、ないわけない。
確固たる自信が無かったら、あんなアクシデントのあとに完璧に気持ちを切り替えるなんて無理な話だ。
刹那、俺の心にある予感がよぎる。
──もしかして。
「俺を……踏み台にしたかった?」
最悪な想像が言葉となって口をついて出る。
その音は音響でかき消されたけど。
俺の脳裏にはその言葉が何度も反芻していて。
やがて小さな灯火のようだった懸念は、燃え盛る業火のように膨れ上がっていった。
そして気づけば。
「もうやめてくれ!!!」
音源をかき消すような音量で叫んでいた。
【空美】
「え?」
驚き、神田さんが俺を見る。
やかましいBGMが耳の奥を不快に揺さぶる。
「もういい加減にしてくれよ!俺を馬鹿にするのもいい加減にしろよ!」
【空美】
「な、なんのことですか?わたしバカになんてしてません!」
「嘘つくんじゃねえ!ずっと……ずっと心の奥で見下してたんだろ?自分はこの人より上手い……こんな落ちこぼれに負けるはずがないって。それを確認したかったんだろ!?」
ここ一ヶ月の鬱憤をすべて晴らすように、俺は叫んだ。
【空美】
「ちがっ──」
「違くない!」
叫び、俺は振り返って走る。
そのまま楽屋へ突っ込んだ。
【山本さん】
「おい!――!?」
空気を読んだのか、隠れていたらしい山本さんが手を伸ばしてくる。
「どけえ!」
【山本さん】
「ぐあっ!!!」
【桜さん】
「お兄ちゃん!?」
山本さんを突き飛ばし、桜さんの悲鳴を聞きながら俺は駆け抜ける。
その場には先生もいたようだが、それでも構わず俺は走る。
ホールを出て、歩道のど真ん中を走り、幾度も人を突き飛ばしながら駅へ。
ちょうどやってきた電車に乗って家へ戻る。
その間、俺の頭の中はたった一つの言葉で埋め尽くされていた。。
絶許。
絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許
「絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許絶許」
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」
部屋に帰るやいなや、俺は部屋にあるものすべてをぐちゃぐちゃに壊した。
壁に立てかけてあったギターを鬼のように振り回す。
舞い散ったホコリが口に入ってむせたが、それすらも怒りの糧にしてギターを振るう。
遠心力と衝撃でネックが折れ、ギターが宙を舞う。
思い出が砕ける。
でも、心の中は満たされていた。
──ああ、暴れるって気持ちいいな。
暴走する身体とは別に、精神はなぜか冷静だった。
あまりの轟音に隣人から怒鳴られる。
ムカつくから壁を殴った。
ゴンッ!
鈍い音共に拳が砕ける感触がする。
「ハア…………ハア」
十分後。部屋はひどい惨状になっていた。
それを一瞥し、何も感じない空虚な自分に驚く。
「……いくか」
俺は小さくつぶやくと、家を出た。
行く宛はない。
ただ、どこかへぶらりぶらりと旅に出る。
俺は狂っていた。
――――エンド3 発狂――――
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