End2
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選択肢分岐です。
選択肢2を選んだ方はそのまま読み勧めて。
1を選んだ方は次のページへ行ってください。
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2:……ごめん。とかぶりを振った。
「……ごめん。やっぱり出来ないや」
ふるふると首を横にふる。
ほんの一瞬、この子のためならまた弾いてもいいかなって思った。
でも……やっぱり思い出すんだ。
ギターを弾くってなると、離れていくお客さんの白けた顔を。散り散りになっていくさまを。
それに。
【神田】
「で、でも!わたしが聞きたくて──」
この子も、嘘をついてるじゃないか。
わたしが聞きたい?ウソつけ。
本心は違うんだろ。
「もういいよ」
【神田】
「……え?」
「嘘、つかないでよ。本当は内心馬鹿にしてるんでしょ。プロの最底辺はどんなレベルなんだろうってただ気になるだけなんでしょう」
湧き上がったヘドロのようなどす黒い感情が、喉元を通じて出てくる。
神田さんがそんな残酷なことを考えるか?
何度も疑問に思ったけど、吐き出す言葉は止まらない。
【神田】
「そ、そんなことは!」
神田さんが慌てて否定する。
しかし俺は。
「社交辞令はやめてくれ!」
無情にも一喝することで、彼女の弁明の機会を奪ってしまった。
ビクッとふるわせ、彼女が身体を硬直させる。
しかし、それでも勇気を振り絞るようにして、一歩を踏み出してきた。
その目には毅然と強い意志が宿っている。
【神田】
「…………でも、――さん。前に言ってませんでしたか?一人でも応援してくれた人がいるなら、その人のために俺は弾くって……」
最後の希望。
諭すように彼女はいってくる。
一人でも最後まで応援してくれた子……前に公園で話したあの内気な子か。
それ、君じゃないだろ。
それに、あの子だって俺のことなんてとうに忘れてるさ。
そんな思考の果てに。
「さあ、なんのこと?知らないな」
俺は冷たく言い放った。
本当は覚えてたくせに。
【神田】
「っ!!!」
神田さんが冷水を浴びせられたように目を見開く。
表情に現れた驚愕は、やがて失意に変わっていって。
【神田】
「…………そう、ですか。無理なお願いをして……すみませんでした」
わなわなと。
今にも泣き出しそうな声で、無理やり絞り出すように彼女は謝って。
直後、踵を返して走り去っていった。
刹那、しずくのようなものが飛び散る。
それがどういうものなのか、わかっていたけど言葉にするのは躊躇われた。
ああ、最悪だ。
あんなに尽くしてくれた子に、あんな罵声お浴びせるなんて。
俺はなんてひどいことをしたんだろう。
でも……ごめんよ。俺にとっての音楽って、そう簡単に踏み込んでほしくないトラウマなんだ。。
俺はもうギターを触りたくなんてない。
もう、あんなにつらい思いをするのはごめんなんだ。
真っ暗な空を見上げる。
掠れた街灯が力なく灯っている。
光の周りには小さな虫が群がっていた。
ごめん……ごめんよ。
星1つ見えない濃淡な空に何度も懺悔したけれど。
当然答えなんて帰ってくるはずもなくて。
俺はしばらくその場に立ち尽くしていた。
それから、神田さんが二度と俺の前に姿を見せることはなかった。
毎日公園のベンチに座っていても。
時間だけが虚しく過ぎていく。
ある日、ようやく声をかけられたと思ったら、職務質問に来た警察官だった。
話によると、公園によく来ていたマダムから通報が入ったらしい。
毎日公園に入り浸っている変な男がいると。
その日から俺は公園に足を運ぶのをやめ、音楽関係の物品もすべて処分した。
そしてスマホのデータも初期化した。
これで俺と音楽の接点はすべてなくなった。
神田さんとの接点も。
でも、いいんだ。
彼女は未来あるJKで、俺はろくでなしのフリーター。
もともと交わるはずのなかった人種だったんだ。
お互い本来の生活へ戻っただけ。
小説じゃないんだから、たまたま公園で出会った美少女と仲良くなれるなんてこと、あるわけないんだ。
そう自分に言い聞かせてみたけど。
心にポッカリと空いた穴は塞がりそうにない。
――――エンド2 自然消滅――――
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