第14話 再び恋人と再会
「千花!」
「うわ、びっくりした!健次くんじゃない」
俺が病室の扉を大きく開けると、彼女の千花が驚き、ベッドの上を飛び上がる。
息切れをする俺に対して、彼女は目を大きく見開いた。
その瞳には息切れしている男が一人写っていた。
「……本当にすまない。今日まで放置してしまって」
まず最初にしたのは、日本伝統的な謝罪、土下座だった。
千花を長く放置したことに対して、謝罪をする。
これ以上の謝罪する言動を見つからないから、こう頭を床に叩きつける。謝罪の意思を相手へと伝える。どれほど効果があるのかは、わからないが、これが最善な方法だと考えたのだ。
「ううん。大丈夫、大丈夫。どうせ、健次くんのことだから、私が死んだと思い込んで、今日までに気付いていなかったのでしょ?」
「ぐ!何で、わかるの?」
「健次くんの性格を考えたら、そうなっているんじゃないかなと思っていてね。どこか冴えているけど、実はばかな所もあるしね。それに、私も、自分が死んだと思ったよ」
「う。全部読まれていたのか……」
「健次くんのことなら、何でも知っているよ」
千花は得意げに胸を張って威張った。
いやいや、それを自慢に語るのはどうにかと思うぞ。俺のことなら全部知っているなんて、自慢するものじゃないぞ?
あれ?何だか、彼女今、すごく恥ずかしいことを言わなかったか?俺のことなら、何でも知っているなんて。それ、まるで伴侶じゃん?
そう考えていると俺は顔を真っ赤になった。
恥ずかしいことを払拭するために顔を左右に振ってから、顔を上げてから話題を変える。
「で、体の調子はどうだ。大丈夫なのか?」
「大丈夫……とまでは行かないけど、内臓がやられて、骨も幾つか骨折している。あちこち痛いところはあるけど、病院に二ヶ月間くらいリハビリをしたら、完治すると主治医が言っていた」
「よ、よかった。俺のばかな行為について来た所為で、こんなになった」
「もう、終わったことだからいいよ」
「よくない。もしも、一歩、間違っていたら、君は死んでいたんだ。俺のばかな行為に」
俺は頭をもう一度頭を地面に叩きつけた。二度目の謝罪をする。
自分がやったことに、彼女が赦されないと知っている。
「顔を上げて、健次くん。君は何一つ悪いことはしていないよ。ただ、人の前に怒鳴ったり、別れ際のカフェは女性に払わせるし、受験の約束を破るし」
「申し訳ございません!」
そう言われると、俺は頭が上がらなかった。自分の頭を地面に貫くように押し潰す。額を地面に穴を空けようとした。
そんな俺の謝罪に、千花はクスクスと笑う。その笑いで彼女の赦しを得たと思い、俺は顔を上げる。
すると、千花は今でも綺麗な笑みを浮かべていた。
ああ、俺は彼女に惚れたのは、そんな綺麗な顔と瞳だ。
「でも、あれだね、健次くんは天才なのに、初歩的なミスをするよね。天才も凡ミスするんだね」
「そ、その話はもう勘弁してくれ、俺が悪かったよ」
「ええ。可愛いところじゃない」
ニコッと、笑う彼女に、俺は顔をぽりぽりと頬を掻いた。
照れ隠しだと、自分にもわかりやすいほどの態度でもあった。情けない男だと、自分でも思うが、赦してほしい。
俺は最愛な人に再びで会いたのだからだ。死んだと思った彼女が目の前にいるのだからだ。
「そうだ。君に報告があるんだ。俺、今、坂本愛香に雇われて、彼女の家に移住している。もし何かあったら、彼女のところに声をかけてくれ」
「移住した?どういうこと?」
「まあ、色々あってだな、彼女の元に住むことになった」
自分が愛香のペットになった、となんて堂々と言えるわけがない。10億円の借金を背負わせた。その後、この首につけられている首輪はあの冷徹女の仕業だ。恥ずかしいことを彼女の前で言えるはずもないのだ。
このことは絶対に話さないぞ。黒歴史を語るわけには行かないのだ。
と、俺がそう考えていると千花は鋭い目つきになり、口を開く。
「……詳しく話しなさい」
「はい。すいません。実は……」
数秒で俺は折れたのだ!
俺は無意識に正座の体制になり、全ての経緯を話した。自殺しようとしたところ、から愛香に拾われて、10億円の借金を掛けられて、彼女のペットとして彼女の家に居候することになった。
「…………ちょっと、こっちに来なさい」
「はい……」
俺は彼女の言う通りに顔を近付くと、彼女は右手を使い、ビンタをする。
パチン!と、病室に大きな音が響き渡った。頬に痛みがじわじわとする。
「自殺なんて……もう二度としないで」
「すまない。俺も冷静じゃなかった」
「わかれば、よろしい」
千花はうんうんと顔を頷く。
自殺することは、よくないことだと、頭ではわかっているが、その時の感情が死を欲したのだ。絶望した俺は、彼女の後を追いたかった。
……今考えてみれば馬鹿馬鹿しくて、くだらないものだ。死後の世界なんてないのに、死んでも彼女を見つけることはできない。幽霊になられることもないのに、心中自殺なんて、ダサイ考えだ。
「それにしても、坂本家に10億の借金なんて……天才の人生を安く売ったね。私も坂本家に10億円売れるかな?」
「いやいやいや、千花は無理なんじゃないかな。俺みたいな天才じゃないと無理だと思うよ」
「ふふふ。言うようになったわね。私だって、頑張れば10億円は稼げる体よ?」
「どうやって」
「売春で」
「文字通りの体で稼げくことかよ!」
そんな冗談を交わしながら、談話を繰り広げていた。
うん。彼女こそ、俺が知っている千花だ。俺が愛した女だ。慈悲深い愛と全て冗談で許せる彼女に俺は惚れた。
あ、そうだ。関心なことを聞かなければいけない。
「それより、千花。君に一つだけ、聞きたいことがある」
「何かな?」
「東京美高等学校に「美」があるって言ったよね?それって、何のことだ?」
「そうだね。その学校に「美」はあるよ」
「それは?」
そう尋ねると、彼女は病室の窓の方へと見つめる。
窓の外は夕焼けがそろそろ落ちる時だ。病室に飾られている時計を見上げると、17時を過ぎだとわかった。
時間と何か関係しているのかがわからない。
そして、彼女は俺の方に振り向くとこう誘い出す。
「ねえ、健次くん。今日は満月の日だっけ?」
「ああ。満月の日だ。4月の満月だ」
「なら、健次くん。その「美」を見に行こうか」
「え……今からか?」
「うん。この病院を抜け出してね」
千花はそう言うと、ぺろと舌を出す。
その癖は、昔と変わらず、何かを悪用するときに出る癖だ。
何をしようとするのか、今はわからない。けど、それは期待していいことだ。千花がこう宣言すると、何かを企んでいる。
こう狡猾にニタリと笑う彼女は、何か凄いことを企んでいるに違いない。
だから、迷うことなく彼女に言う通りにする。
「よし、行こうか」
「ええ。行きましょう」
俺はそんな彼女の悪巧みに賛成し、この病院を抜け出すことに手伝う。
千花の手を取り、ベッドから彼女を下ろす。彼女は両足で立つ。だが、久々に大地に立ったせいか、ふらつく。俺はすぐに彼女の支えとなり、彼女を立たせた。
「ありがとう」
「どういたしまして。で、どこに行くんだ?」
「もちろん、東京美高等学校」
千花は迷うことなく、目的先を示す。その青い瞳は力強い何かを感じた。だから、俺は軽く「わかった」と、言い放ち。彼女を支えながら、この病室を去った。
彼女は病衣のままこの場をさる。
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